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(更新: ORICON NEWS

【連載 2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」

稲垣が活動自粛から復帰、100万人を動員したライブで歌われた

 そして15年前、SMAP10周年ツアー、ナゴヤドームでのライブの前日、稲垣吾郎が道路交通法違反と公務執行妨害で現行犯逮捕され(のちに不起訴処分となる)、2001年は4人でのツアーを余儀なくされてしまう。

 1998年に「夜空ノムコウ」のミリオンヒット、2000年に木村拓哉結婚、01年に稲垣吾郎の活動自粛。20世紀から21世紀をまたいで、SMAPはいろいろな意味で世間の注目を浴びていた。とはいえたぶん20世紀までは、SMAPのことを“国民的アイドルグループ”と呼ぶ人はいなかったように思う。ヒット曲もあり、出演するドラマ、バラエティは軒並み高視聴率で、押しも押されもせぬスーパースターであることは間違いなかったが、まだ、“いつ消えるかもしれないアイドル”という危うさを消せないままでいた。

 SMAPが、ツアーで初めて100万人を動員したのは2002年。日韓ワールドカップが開催された年、全国のサッカー場でライブが開催されることでも話題となった。ツアー直前に発売されたアルバム『Drink! Smap!』は夏っぽさ全開で、予習段階では、「GO NOW!」「Over Flow」「Jive」あたりをヘビロテしながら、N.マッピーこと中居正広が作詞作曲を手がけたメンバー紹介曲「FIVE RESPECT」がどんな演出になるか、胸を躍らせていた。

 SMAPには屋外が似合う。映像と巧みにコラボしながら、ド派手な演出のライブは進み、本編の最後に、「世界に一つだけの花」が歌われた。歌の後、巨大な缶ジュースのオブジェから大量の空き缶が飛び出し、スクリーンにはその空き缶に挿された一輪の花が映し出された。ドラマティックな演出だな、と思った。稲垣復活のライブに相応しい、“君の代わりは誰もいないんだよ”というメッセージ。会場の雰囲気が、とてもピースフルだったことをよく覚えている。と同時に、“私のSMAP”から“みんなのSMAP”になってしまったような、妙な寂しさも感じていた。

ダブルミリオン達成、「世界に一つだけの花」とSMAPは“国民的”に

 翌年、「世界に一つだけの花」は『僕の生きる道』の主題歌となり大ヒットし、大人も子供も誰もが口ずさめる“国民的ソング”として認知された。私はそれからずっと、ライブで振りを合わせることができなかった。この曲のせいで、SMAPが“守り”に入ってしまったような気がしていた。今後もずっと、メッセージ性のある曲を求められるのではないかと危惧していた。とはいえ世間からは、徒競走でも順位をつけず手を繋いでゴールする世代を象徴する“ゆとりソング”などと揶揄されたり。「世界に一つだけの花」がダブルミリオンを記録し、音楽の教科書に載ったというニュースを耳にするたび、SMAPがこの曲とともに、国民全員が関心を持つ存在になったことを実感していた。

 あとになって、槇原敬之に楽曲を発注してはどうかとアイディアを出したのが、中居正広だったことを知った。1999年に覚せい剤取締法違反で逮捕されて以来、あまりメジャーな場に出てきていなかった、どん底を味わった彼だからこそ、伝えたい何かがあるはずだと思ったのだろうか。

オンリーワンの花束として――5人揃って歌った『明日へコンサート』

 その後も、ライブのたびに、「世界に一つだけの花」という曲の世界観に浸れなかったひねくれ者の私だけれど、今年初めてこの曲を心からいい曲だと感じた瞬間があった。3月の『震災から5年 明日へコンサート』(NHK総合)。SMAPは「オリジナル スマイル」と「この瞬間(とき)、きっと夢じゃない」と「世界に一つだけの花」の3曲を披露した。ずっとずっと思っていた。SMAPの歌にはいつも“心”がある。<悲しみすべて街の中から消してしまえ>と歌う時も、<どんなときも 諦めず ただ進むよ>と歌う時も、心からの思いが込められる。たぶんあのとき、5人は心を一つにして、オンリーワンの花束として咲き続けようとしていたはずだ。どん底の感情を味わってなお、笑顔で進もうと心に誓っていたはずだ。この曲を、5人で歌うことの尊さ。当たり前だと思っていたものが、実は当たり前じゃなかったことに、あの数分のパフォーマンスで、私は気づかされたのだった。

 先日の『SMAP×SMAP』で、リオ五輪柔道金メダリストのベイカー茉秋(1994年生まれ)が、初めて買ったCDが「世界に一つだけの花」だったことを告白していた。これがもし、5人バラバラの個性を主張したアイドルグループに歌われなかったとしたら、こんなにもストレートに子供の心を掴むことはなかったはずだ。とびきりゴージャスで、でも親しみやすくて、おもしろくて、純粋な気持ちを持った花が集まってできた“世界に一つだけの花束”SMAP。彼らが歌ったからこそ、歌がリアリティを持って、幅広い世代の聴き手の心に響いたのだ。

 歌は、人の心に生き続ける。SMAPの歌は、“うまくいかないこと”をたくさん抱えた人々の人生に寄り添う。彼らの歌は切実で、いつも日常の物語を喚起させ、そして励ます。だからこそ、50年先も、100年先まで「世界に一つだけの花」は誰かの心の中に響き続ける。
(文/菊地陽子)

【連載第3回】
『SMAP 9月9日デビュー25周年 記者が見た5人の真実 PART1』に続く
【連載第1回】
『SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?』
【連載番外編】
『記者が見たSMAPの真実 PART2〜中居正広と木村拓哉の素顔〜』
【連載番外編】
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