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ORICON NEWS
『笑ってコラえて!』20周年、“素人いじり”の元祖が愛される理由
「どんなものが撮れてくるか不安だった」という『ダーツの旅』
柳川剛いつの間にか20年経ってしまった感じですね。僕は最初、本編ディレクター(スタジオ撮影でのディレクター)として担当していて。ロケをお手伝いしたこともありましたし、番組の海外支局長としてスペイン、バルセロナにも1年間行っていました。その後プロデューサーとなり、いろいろありましたがあっという間でした。ただコンセプトは、当初から“1億人の大質問”ということにすごくこだわっていた。一般の方の素晴らしいところを掘り下げるというベースは、今も変わっていません。
――“笑コラ”といえば、初回から続くコーナー『日本列島 ダーツの旅』が看板企画でもありますが、当初から“イケる!”と確信はあったんですか?
柳川剛いえいえ。そもそも「これ、企画なの?」という感じでした。事前連絡もせず、家庭用ビデオカメラだけを持ってディレクターがぷらっと行って、その町のいいところを聞いてくるというだけの企画でしたから(笑)。ロケに行くディレクターにも、「何を撮ってくればいいんですか?」と相談されたくらい。まずは町の人と話して「テレビの撮影です」ときちんと説明するようにとは言いました。だから我々もどんなものが撮れてくるか不安だったんです。でも、初めてVTRを見たとき、そんな不安が吹っ飛ぶほど面白くて。その瞬間、やっと“これはイケるな”って思いました。
――ご自身も実際に『日本列島 ダーツの旅』のディレクターとして取材したことがあるんですよね?
柳川剛はい。ものすごく面白かったです。『ダーツの旅』だけに“旅感”も大事にしていて。だから町から離れたホテルなどには泊まらず、必ず村にある民宿に泊まっています。「泊まっていけば?」と誘われて取材した方の家に泊まらせていただいたこともありました。実際にあの取材は、ディレクター2人か、もしくはディレクターとAD(アシスタントディレクター)の2人で行くんです。基本はADがカメラで撮っているんですけど、最初の頃は家庭用ビデオカメラで撮っていたため、テレビだと信じてくれない方もいましたね(笑)。だんだん“笑コラ”が浸透してくるにつれて、歓迎されることが多くなりました。でも、MCの所(ジョージ)さんが初めて『ダーツの旅』へ行ったときは大変で(笑)。北海道だったんですが、ちょうど台風の時期で誰も街を歩く人がいなかったんです。所さんと相談して、トラメガ(トランジスタメガホン=拡声器)で「ご町内のみなさま、お騒がせしております。笑ってコラえて所ジョージがダーツの旅で来ています。表へ出てきてください」と宣伝してまわりました。
「所さんがまとめることによって、一般の方が光り輝く」
柳川剛スタジオでも所さんがまとめることによって、一般の方が光り輝くんですよ。幅広い世代に人気があるのも、所さんのおかげだと思います。同じ“素人いじり”でも、面白くすることだけを目的とするならば、もっと突っ込んだ方がいい場合もあると思います。例えば、取材した素人の方のズボンのチャックが開いたら、テレビ的にはキツい突っ込みを入れた方が面白いかもしれない。でも、“笑コラ”ではすぐには言いません。普通の人同士だったら、やっぱり遠慮があって言い出しにくいと思うんですよ。“笑コラ”はそれと同じスタンス。アプローチの仕方、踏み込み方には、スタート当初から特に配慮しています
――MCといえば、アシスタントは初代の山岡三子(1996年)さんにはじまり、夏目三久さん(2008年)、関根麻里さん(2011年)、そして現在の佐藤栞里(2015年)さんと、様々な方が担当しております。
柳川剛最初は、所さんが自由な方なので、山岡さんに進行役をお願いしました。でも山岡さんもかなり天然な方(笑)。初回には、所さんにマヨネーズをかけるという事件が起こりました。そして夏目さん、関根さんを経て、“笑コラ”で育った栞里ちゃんになったんです。
――佐藤栞里さんといえば、やっぱり『朝までハシゴの旅』ですね。
柳川剛『朝までハシゴの旅』は、決して酔っ払い企画ではないというこだわりがあります。お酒を飲む番組も最近は増えましたが、我々はあくまで、お酒を飲んでいる人と楽しく一緒にお話をするというコンセプトで始まりました。この企画は、もともとはスタッフでロケに行っていたんですよ。でも、たまには女の子で!という話になり、ラブリさん、栞里ちゃんを起用したんです。大騒ぎになることもありつつ、意外とみなさんジェントルマンで、楽しくお話をすることができました。
「スポットの当たりにくいところを探し始まった企画」がギャラクシー賞
柳川剛やはり、2004年に放送した『笑ってコラえて!文化祭 吹奏楽の旅 完結編 一音入魂スペシャル』が、ギャラクシー賞で大賞をとったことですね。スポットの当たりにくいところを探して始まった企画だったので、本当に驚きました(笑)。ほかにも、ディレクターがアマゾンを旅する企画なども面白かった。昔はテープだったから、これはインターネットが発達したからこそ叶った企画。“笑コラ”は非常にアナログチックな番組ですが、結構デジタルも駆使しているんですよ。
――今の時代、同じ企画で20年も続く番組はほんのわずか。長寿番組の秘訣はどこにあると思いますか?
柳川剛所さんもおっしゃってるんですが、やはり一般の方にスポットを当ててるからこそだと思います。その方たちには、1人1人違ったドラマがあって、それをご覧になった方が、嬉しくなったり、頑張ろうと思ったり、単純に笑えたり。みなさんが温かい気持ちになれるからこそ、続いてきたんじゃないでしょうか。僕らも企画を立ち上げるときは、どれだけ“いい人”にスポットをあてられるかを前提にしています。例えば、新企画『いま幸せですかの旅』も、公園のボートに乗っているカップルや家族はきっと幸せに違いない、と思って立ち上げたコーナーですから。
いよいよ20周年を迎えて 「きっといつまでも続けられる番組」
柳川剛これは、二階堂ふみさんが金色のスワンボートで近づいていって、ボートに乗っているカップルや家族に「いま幸せですか?」とインタビューするという企画。毎回、インタビューする人は変わりますが、SPでは二階堂節が炸裂し、かなり面白いことになっています。
――他にもおすすめのコーナーはありますか?
柳川剛この日の『朝までハシゴの旅』は、所さんが初参戦します。「頭がちぎれる」というほど強いお酒を飲まされた所さんですが、所さんの言葉に栞里ちゃんが号泣するところも見どころ。あと同じ企画で、EXILEのAKIRAさんと田村淳(ロンドンブーツ1号2号)さんの旅も、朝まで盛り上がりましたね。
――最後に、今後の番組作りに向けてのお考えを聞かせてください。
柳川剛日本には、僕らがまだ取材をしてない方たちがたくさんいいますので、きっといつまでも続けられる番組だと思っています。これからもどんどん面白くて楽しい人、幸せな人、すばらしい人を紹介し続けていくので、ぜひ応援してください。
(文/今 泉)
『笑ってコラえて!20周年記念4時間スペシャル!』
<内容>所ジョージ&佐藤栞里が行く『朝までハシゴの旅』ほか、珍獣ハンター・イモトが参戦する『幼稚園の旅』、北野武監督が映画界の知られざる地味〜な人を紹介する『スゴ〜イ地味な人なくしてはスゴ〜イ派手な事なしの旅』など、豪華な企画が続々。ほか、『名物企画の15年後』『ダーツの旅のあの曲を歌っているのは誰?』『ダーツの旅最強村人傑作選!』など、20周年ならではの内容に。
<ゲスト>二階堂ふみ、篠原信一、ピース、山里亮太、吉岡里帆 ほか