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『しくじり先生』から再評価タレント続々 人気者に問われる自虐センス
タレント以外にも話題の面々が出演
そこには、芸能人でありながら自身をカッコよく見せたいというような見栄や下心は一切なく、自分を貶める懐の深さや、人間の大きさ、ある種の確固としたプライドを感じさせるからこそ、話を聞く側は気持ちよく笑えるのだろう。逆に、そこに少しでも恥ずかしさや照れがあったり、完全に開き直る覚悟がなかったり、恥部をさらけ出すことをプライドが許さなかったりすると、受け取る側はどうとっていいかわからなくなる。
同番組でパンクブーブーは、『R−1グランプリ』で優勝したやまもとまさみが地方営業よりも全国ネットのテレビ番組出演に固執することに対し「もう無理だから!」と断言。その言葉に食い下がるやまもとを見て「その態度がダメなの!」と一蹴した。たしかに、見ている側からも、ここまでくるとやまもとに同情さえしてしまう。しかし、同情は芸人として一番されたくはないものだろう。一方、「売れるチャンスを逃した」と開き直ったパンクブーブーのほうは抜群にキレが良く、輝いていた。「俺たち、華がない!」と笑顔で話す姿は完全に吹っ切れていて、見ている側も気持ちがいい。そんな姿を見せられると、同情からではなく、純粋におもしろいから応援したくなるのだ。きっと、あの番組を見て同じ感覚になった人も多いはずだ。
開き直り、自虐ネタで失敗を笑い飛ばすこの生き方は、私たち一般人にも重ねることができる。もちろん、仕事などの社会的なことではちゃんと反省も必要だが、その話を仲間や家族に話さずに、失敗を一生の恥として抱えて生きるよりも、“こんなことしちゃったんだけど!”と笑い飛ばすことで、その経験がいい思い出にすり替えられる。そして、また同じ失敗をしないようにしようと思えたりもして、しっかりとその先の教訓にもなる。
コンプレックスも逆手にとればその人の武器になったりもするものだ。何事も考え方ひとつで見方は変わる。そんなことを教えてくれる彼らの自虐センスに脱帽し、さらにその強さを尊敬する。きっと、このステージに至った人こそ、さらに多くの人を楽しませることができるのだろう。
(文:吉田可奈)