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金子ノブアキ、アーティストと俳優どちらも不義理を……辛い時期もあった

 一流ドラマーを目指す主人公と鬼教師の壮絶なバトルが話題になっている、映画『セッション』の試写会イベントに金子ノブアキが登場した。映画を通して同じドラマーとしての気持ちを語ってもらうと共に、RIZEやAA=のバンド活動やソロワーク、さらに俳優業についてもインタビュー。ミュージシャンとしても役者としても成功している希有な存在・金子ノブアキはどのように今の地位を築いたのか。その秘密に迫ってみた。

人生において、ここまでのめり込めるもの(ドラム)に出会えて良かった

――映画『セッション』は一流ドラマーを目指す音大生と、伝説の鬼教師の壮絶な師弟関係を描く衝撃作。同じドラマーとして、どうご覧になりましたか?
金子 観て、その足でドラムを叩きに行きました(笑)。

――叩きたい衝動が沸き起こった?
金子 でも「ドラムが好きだ!」って明るい感じじゃないんですよ。練習しないと「怒られる!」みたいな強迫観念で、動揺と混乱でやられちゃったっていう(笑)。この映画のラストは人によって感想が違っていて、感動する人もいるけど、ミュージシャンは俺みたいに動揺する人も多いじゃないかな。

――主人公の狂気に近いのめり込み方はわかります?
金子 俺も神経質なほうだから、すごくわかる。でもそれって一種の快楽であり、恍惚感なんですよ。よく「ストイックだね」って言われるけど、俺自身は、ただ気持ちいいだけ。やり過ぎて手をケガしたり炎症を起こしても、ドラムを叩いているときは痛みに全然気づかないんです。

――映画の主人公も、手を血まみれにして叩いてました。
金子 血とか目に見えるものがないと、自分ではストップをかけられない。血を見て初めて「イタタタタッ」みたいな(笑)。でも人生において、ここまでのめり込めるものに出会えて良かったと思います。しかも俺の場合はミュージシャンの家に生まれているから(父親はドラマーのジョニー吉長、母親は歌手の金子マリ)、ラッキーだなと。
――金子さんの場合、バンド(RIZEやAA=)ほかにソロ活動もされていますが。ドラムを叩くときの気持ちやスタンスは違うんですか?
金子 バンドはチームスポーツみたいなもんだから、ドラムは基本、裏方。俺は全体のバランスを取っているというか、空間を作っているようなイメージかな。いろんなタイプのドラマーがいるけど、俺は全体のバランスを取ることがすごく得意で、それはこの5年間ぐらいでわかった。

――それまではわからなかった?
金子 模索してましたね。でも、父が亡くなったりといろんなことが重なって、ドラマーとしてどういうスタイルでやっていくのか、自分のパーソナリティーと徹底的に向かい合った。ただ、ソロとなるとまた違ってきて、自分でボーカルもとるから、バンドより自由度が上がるんですよ。ソロはすべてを自分でやるから、描き方がより文学的だと思う。でも奏者として全体の“バランスを取る”って部分や音楽との向かい方はバンドもソロも同じですね。というか、それが自分のスタイルだって明確になったから、何をやろうとそこを臆さず出していけるって感じ。だからいま、すごく楽しいし、清々しくやれていますよ。

――4月1日には1年ぶりのソロシングル「The Sun」がリリースされ、いよいよソロ初ライブも決まりましたしね。
金子 それはこの時代、本当に幸せなことだと思います。6、7年前にソロ音源を作ってみたときから、出逢いも別れもあり、時間をかけてやっとここに辿り着けたなと。やっぱり人生は限られているから、何にどれだけ時間を割いてきたかっていうのはすごく大事じゃないですか。俺の場合、時間をかけたぶん、心も体も筋肉がついているわけで、その状態でいまこうしてソロライブをやれるっていうのは最高のタイミングだと思います。

俳優に再挑戦して、最初の2年は精神的にも肉体的にも大変だった

――どんなステージになりそうですか?
金子 新曲の「The Sun」は、死生観を意識して作っていて、俺の曲は他も内側に向かっていくものが多いんだけど、ステージではこれを外に向かって爆発させていくつもり。そういう意味で俺にとってソロライブは、演劇とか歌舞伎と似ている部分があるかもしれない。

――そこにストーリーがあると。
金子 それもあるし、ソロってバンドと違って自分自身が屋号になるわけでしょ。そういうところは俳優業と共通していて、俺は役者をここ数年やらせてもらっているけど、その経験がなかったらソロは確実にやってない。

――俳優業がソロワークへとフィードバックされたと。その前はソロはまったく考えなかったんですか?
金子 ソロ、やれば?って言われたこともあったけど、ダメに決まってるって。自信がなくて、踏み込めなかった。俺は裏方でいいって思っていたし、ドラムの人間がソロをやることにも批判的だったんですよ。でも俳優をやることですっかり欲張りになり、どんどん強欲になってしまった。あの世にいったら地獄に落とされるかもしれないけど、しょうがないよ、やりたくなっちゃったんだもん(笑)。
――でも金子さんは元々、子役=俳優からのスタートしているんですよね。それをやめて音楽の世界に入り、また俳優業を再開したのはなぜですか?
金子 6年ぐらい前、音楽業界に冬がくるって言われていて。とにかく何かアクションを起こそうって。そうしたら、いいタイミングで映画『クローズZEROII』のキャスティングの方が俺らのライブを観に来て、声を掛けてくれたんです。その後、あっという間に話が進んじゃったっていう(笑)。で、メンバーにも「映画に出るから」って話したんだけど、これはある種、的になって指名手配されたようなもんだなと思いました。

――指名手配?(笑)。
金子 だって、メジャー映画っていう、音楽とは違うジャンルに足を踏み入れるのは、ミュージシャンとしてはすごい挑戦だし、失敗したらダメージが大きい。しかもそれをちょっとやって、すぐに辞めたりしたら、いちばんカッコ悪いでしょ。だったら最低でも5年はそこに身を置いて、認識してもらうってことにチャレンジしていくしかないなって。だからね、コテンパンになって粉々にされて終るかもしれないって覚悟でしたよ、当初は。でもここが人生において飛び乗らなきゃ行けないタイミングなら、乗らなきゃダメだろうなと。で、そこからスタートして今に至るんだけど、最初の2年ぐらいは大変でしたね、精神的にも肉体的にも。

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