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古沢良太インタビュー『できなかったことにいま挑戦している』
常に書きたいテーマがあるわけじゃない
古沢昨年の2月(撮影の4ヶ月前)です。「とりあえず1ヶ月くれ!」みたいな感じで、1ヶ月間で作れるだけ作ってみようと書き始めて、なんだかんだで書き上げるのに2ヶ月間くらいはかかったと思います。
――錚々たる顔ぶれが、強烈なキャラクターを嬉々として演じていますが、配役は脚本を書く前から決まっていたのでしょうか?
古沢誰一人、あて書きはないですね。その時点では、キャストは誰も決まっていなかったんじゃないかな? 里見浩太朗さんと富司純子さんのお名前が上がっていたくらいだったと思います。
――ある1日の出来事を描く群像劇を、いつか作りたいと思っていたそうですが、群像劇のおもしろさはどんなところに?
古沢やっぱり、主役も脇役もないってことでしょうね。実際、現実には主役と脇役がいるわけじゃなくて、自分の人生においては全員が主役なわけで。できるだけ、そういう感じに書きたかったというのはあります。
――登場人物たちのふとついた7つの小さな嘘が、ウソのない笑いにまみれて交錯するうちに、不思議な化学反応が起きて……!? 謎、事件、感動etcエンタテインメントの滋味がたっぷり詰まった超大作のテーマは“ラブ”である、と?
古沢常に書きたいテーマがあるわけじゃなくて、僕はおもしろい作品が作りたいだけです。むしろテーマって、作品を作っていくなかで見えてくることが多いんです。そういう意味で『エイプリルフールズ』は、たくさんの愛がつまった、いろいろなかたちの愛の物語だと思っています。
――恋愛力ゼロの男女が主人公という月9ドラマの異色作『デート〜恋とはどんなものかしら〜』、そして本作と、恋愛ものが続いているのは偶然でしょうか?
古沢えーっとですね……。この仕事を始めた頃は、本当に自分に技術がなくて、書けるものが限られていたんですけど、生活していくためにオファーされる仕事をほとんど断らずに受けていて。例えば『相棒』(テレビ朝日系)に参加した当初、僕は刑事ドラマなんて全然書けなかったんです。サスペンスも書けなかったけど、一生懸命勉強して、一つひとつ仕事をこなしていくうちに、技術が上がり、書けるものが増えていった。昔は書けないと思っていたタイプのものでも、だんだん書けるかもしれないというふうになってきたなかで、いまラブストーリーを書いているんだと思うんですよね。自分のなかでそういうテーマに興味があるということではなくて、これまでできなかったことにいま挑戦している感じです。
全てのキャラクターを自分で演じながら脚本を書く
古沢それはいろいろありますね。小さい頃から何か人とは違うことを考えて、人を笑わせる、喜ばせることがすごく好きだったので、いまでもそのこと自体が好きっていうのが根本にあります。それと、圧倒的におもしろいものを作りたいとずっと思っています。何か思いついたときは“ものすごくおもしろいものができるんじゃないか!?”って期待するんだけど、やっぱり自分の力が及ばなくて、今回もこの程度だったなっていつも思う。それでも前よりはうまくできるようになったところもあるので、続けていけば、いつかすごいものを作れるかもしれない、というところを目指してやっていますね。
子どもの頃から、ひとりで絵を描いたり、工作をするのが好きでした。いまでもこうやって脚本を書いて、ドラマや映画を作っているとき、ちょっと不謹慎だけど、時限爆弾を作っているような感覚があって。“これが世に出たら、すげーことが起こるぞ!”って思いながらコツコツと作っているんだけど、意外と大したことなくて。でもそうやってニタニタしながら、爆弾を作っているのが好きな、やさしいテロリストなんです(笑)。
――斬新! かつ絶妙なたとえをありがとうございます。そんな古沢さんにとって、石川淳一監督率いる『リーガルハイ』チームのスタッフには、おもしろい作品を作る“同志”のような信頼感があるのでしょうか?
古沢もちろんそうです。完成作を観たとき、これは石川作品だなって思いました。一人ひとりの人物造形にしても、僕が踏んだアクセルを、より上から踏んでくる感じなんです。石川監督は「それは踏み過ぎだから、ブレーキをかけましょう」って人じゃない。僕が踏んでいるところは、もっと踏み込んでくる(笑)。そうすることで、棘みたいなものをすごく感じさせて、スルッと呑み込めないようにする。いちいち喉に引っ掛かってくる作品に完成させるところが、すごくいいなあと思います。たくさんの人に観てはもらえたけどすぐに忘れ去られるのではなくて、爪で引っ掻いたような傷跡を残していく感じが、石川監督の好きなところです。
――演出へのご興味はないのですか?
古沢よく訊かれるんですけどねぇ。なんかね、めんどくさい(笑)。脚本を書き上げた時点で、自分のなかでは終わるんです。もう一回それに向かう情熱は……けっこう難しいなあ。あと僕は、全てのキャラクターを自分で演じながら、脚本を書くんですよ。登場人物は全員、自分だと思って書いているので。だから書き上げた時点で、自分のなかではもう完成しているので、俳優さんに対して「その言い方は違う!」とか、すごく細かく演出をつけるイヤな監督になると思います(笑)。脚本はパーツのひとつと割り切れるけど、全てを自分でやるハメになったら……とても憂鬱な気持ちになりますね。
――夏にはTEAM NACSの舞台『悪童』の脚本も手がけられますね。お仕事はいまどのように決めているのですか?
古沢何となくです。とくに明確な理由があるわけじゃなくて、タイミングですね。次に何をやろうかな? と思っているときに声をかけてもらえると“じゃあやろうかな”って気持ちになる。それ以外のときに声をかけられると「いや、いいです」ってなる。それくらいです(笑)。
――さすがはヒットメイカー、引きが強いんですね!
古沢そんなことないと思います。いつも後悔しながらやっていますから。『デート』もすごく自信なかったですし……“今回こそ大失敗するんじゃないか”って、毎回不安のなかでやっているんです。
(文:石村加奈)
エイプリルフールズ
監督:石川淳一
出演:戸田恵梨香 松坂桃李 ユースケ・サンタマリア 小澤征悦 菜々緒 戸次重幸?宍戸美和公 大和田伸也
2015年4月1日(水)全国東宝系にてロードショー
(C) 2015 フジテレビジョン
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