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柳楽優弥『鈍感にはなりたくない…しっかり本音を感じていたい』

柳楽優弥には闇があるから、深い闇を抱える人間に惹かれる? 読む者を作品世界へぐいぐいと引き込むミステリー性と、人間を深く見つめる純文学性を同在させた独自のスタイルで、海外でも注目を集める作家・中村文則の小説を、初めて映像化した映画『最後の命』。松本准平監督の熱烈なオファーで、主人公・赤瀬桂人を演じた柳楽に、作品の魅力を聞いた。

(自分に)闇があるんですかねぇ

――映画『許されざる者』(2013年)や『クローズEXPLODE』(2014年)『闇金ウシジマくんPart2』(2014年)ドラマ『アオイホノオ』(2014年)など、近年は輪郭のクッキリした、線の太い役どころの印象が強い一方で、初舞台となった『海辺のカフカ』(2012年)や『金閣寺』(2014年)といった、デビュー作『誰も知らない』(2004年)から続く、内面を探求していくナイーブな若者役も好演しています。本作の桂人は後者にあたりますが、深い闇を抱える人間に惹かれてしまう傾向が?
柳楽 (自分に)闇があるんですかねぇ。“闇がある”って、言葉の響きがいいですね(笑)。実際に闇があるって大変だけど、この映画の3人を見ていても、誰にでも闇はある。考え過ぎちゃうことってあるし、調子のいいことがずっと続くわけない。大変ななかにちょっと調子のいいことがあるとがんばれたりするもので。(本作は)そういう闇について迫った映画ですよね。“ハッピーなことを切り取って”というよりは、人生のなかの悩んでしまう部分を主に撮った映画だと思うので、ポップな展開じゃないし、ハッピーエンドにもならないけど、逆に生々しくて、観る人によっていろいろな感じ方がある気がしています。

――柳楽さんの演じた桂人は、小学生のときに友人の冴木裕一とともにある犯罪に巻き込まれます。そのダメージを抱えたまま成長したふたりが久々に再会した夜、桂人の部屋で殺人事件が起こって……。事件を契機に、それまで逃げていた過去と対峙し、現在と過去の間で意識が混沌としていくスリリングなストーリー展開で、繊細な心の変化をどのように造形していったのですか?
柳楽 冴木と(桂人の恋人でふたりの同級生にあたる)香里と桂人、この3人のなかではふたりに振り回される役どころなので、個性を掘り下げるというよりは、撮影現場に行って、そこで感じたものに素直に反応していった感じです。(高校生のときの)冴木との距離を感じるきっかけとなった場面に遭遇すれば、やっぱり耐えられない感じがしたし。作為的に何かやってやろうとは思ってなかったですね。文字だけで読むと、単純じゃないとっても難しい脚本だったので、現場で監督といろいろなことを話すなかで、一緒に探っていけたらいいなあと思っていました。監督がディスカッションする機会を積極的に作ってくださったので、自分のなかで出たアイデアなんかも言いやすくて、やりやすかったですね。

――ともに作品を作り上げていくなかで、印象に残っている松本監督の言葉は?
柳楽 撮影初日にけっこうヘビーなことを言われたんです……。「桂人は自殺に憧れているんだ」と。重いひと言をもらったなって。それからずっと、そういう気持ちになろうと必死になっていたら……つらくなりますよねぇ(苦笑)。この作品は1月に撮影したので、今年は年の頭からどぎつかったです。ただ決して自殺を肯定するわけではなくて、ストーリーをしっかりと見てもらえるとわかると思いますが、暗いトンネルの出口を探して模索していたキャラクターたちが、見つけた先に光が差し込んできた! という光みたいなものを感じてもらえたら、嬉しいです。

歳を重ねることで解釈が変わっていく

――柳楽さんは完成作をどうご覧になりましたか?
柳楽 重い、暗いとか、そういうカテゴリーじゃない、もっと濃い話をしている気がして、文学的で深いなって思いました。希望に向かって、光に向かって、走っているキャラクターたちの生々しいストーリーという印象を受けました。さっき出演したラジオ番組で、いい意見をもらえたんですよ。悩み過ぎたりする10代の人がこの作品を観ると、ちょっと気持ちが軽くなれるんじゃないかって。それってある意味、救われた感覚だと思うので、嬉しかったですね。理詰めで解釈されると少し難しいかも知れないけど、感覚的に観てもらえたら。

――柳楽さんご自身は、普段どんな映画をご覧になるのですか?
柳楽 昨日『ヴェニスの商人』(2004年)を久しぶりに観て、10代の頃とは違ったおもしろさを感じました。大好きな映画です。シェイクスピアの『マクベス』に「きれいは汚い、汚いはきれい」という台詞があって、ずいぶん前から自分のなかでずっと気になっている言葉なんです。歳を重ねることによって、少しずつ解釈が変わっていくなかで、この4、5年間、自分のなかでずっと好きであり続けるってすごいなって。人の記憶に存在し続ける言葉っていいですよね。……言葉の力を感じる反面“言葉なんて”って思っちゃう瞬間もあります。結局、態度や行動に全部現れてしまう、人間なんて見た目通りなんじゃないか。そう思いながらも、真実を伝えようとしている人を見ると、けっこう(心に)突き刺さったりとか(笑)。やっぱりその人のキャリアから反映された、滲み出る言葉って魅力を感じますね。普通に会話しているなかでも、ふと残る言葉ってある。そういうものの蓄積で、その人の人物像って出来上がっていく気がするんです。そうしたらやっぱり、みんなそれぞれのいい人たちに囲まれていて、僕は僕にとっての才能ある人に囲まれて、いい言葉をもらったりして、知識や知恵を得たりしているんだなって思うんです。

――映画のラストで、桂人は考え続けることで、過去の事件や自分自身を受け入れ、人生を生きていく決心をします。柳楽さんはいま、どんなことを大切にして日々を生きていますか?
柳楽 常に思うのは、いろいろ感じていたいってこと。馴れ馴れしくなりたくないなっていうのはあります。撮影現場でも、普段の会話でも“こう来たら、こう返すでしょ?”みたいなことはしたくない。鈍感にはなりたくないなって。建前ばかりに捕らわれずに、しっかり本音を感じていたいですね。もし僕が間違っていたら、周りの誰かが言ってくれるし、失敗できる年齢だとも思うので。形に囚われ過ぎて自分を失くしたら、せっかく俳優をやっているのにもったいないって思います。

――そういえば映画の冒頭に掲げられたマルティン・ルターの名言は、柳楽さんのアイデアだとか?
柳楽 監督の勇気の賜物です。提案するのは簡単じゃないですか。撮影の中盤、ちょうど香里とのシーンを撮っているときに、監督との会話のなかから生まれたアイデアです。「やりましょう!」って監督に言ってもらえて、嬉しかったですね。「おぉっ、OKをもらえた!」って(笑)。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

最後の命

 幼少期に凄惨な事件に巻き込まれ、その記憶に苦しみながら成長してきた桂人(柳楽優弥)と冴木(矢野聖人)。思わぬ再会をした夜、桂人の部屋で顔見知りの女が殺される。警察の取り調べを受けることになった桂人は、刑事から冴木の名前を告げられ、彼がある事件の容疑者として全国指名手配中であることを知らされる。一つの殺人事件によって彼らの過去の人生が炙り出され、ラストに明かされる衝撃の真実とは……。

監督:松本准平
出演:柳楽優弥、矢野聖人、比留川游 他
2014年11月8日(土)より新宿バルト9ほか全国公開? (C)2014 beachwalkers
公式サイト

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