『空中庭園』の豊田利晃監督が4年ぶりにメガホンをとった最新作『蘇りの血』が19日より公開され、このほど豊田監督、キャストの中村達也、草刈麻有、渋川清彦が揃って、ORICON STYLEの取材に答えた。
◆“人間が蘇る”というテーマ――豊田利晃監督
| 豊田利晃監督(C)ORICON DD inc. | |
同作は、熊野(和歌山県)発祥の伝説『小栗判官』の愛と自然治癒力で、一度は零落した人生から蘇りを果たすという物語をヒントに、豊田監督が脚本を手がけたオリジナルストーリー。人間が世界を支配するずっと以前、大王が君臨する時代を舞台に、主人公の按摩・オグリ(中村)を中心に、死と再生の寓話を描く。
「人間が蘇るってどういうことなのかに興味があった」と豊田監督。前作から4年の間に、豊田監督自身も“零落”を味わった。さらに、私たちの「社会が変わった」とも感じていた。「本当にダメになったと思った」のは2008年の暮れ。国の借金834兆3786億円、自殺者は10年連続年間3万人を越え「日比谷公園に仕事も住まいも失くした人が並んでいるのを見て奮い立った」という。
撮影はわずか12日間で一気に行った。そのうち2日間は移動日で、7日間は本州の最北端、青森県下北半島でロケを敢行。「1回目にロケハンに行った時は朝旅館で目覚めると足が動かなくなったことがあって病院に行ったんですが異常はなし。その後、2回目のロケハンに行った時には、晴天だったのにいきなりスコールがあって転んで足が動かなくなり病院へ行きました。帰京後、東京でおはらいしました。そんな奇妙なことはありましたが、下北半島は素晴らしいところです」。
◆体当たり演技で完成作に感動――草刈麻有
| 草刈麻有(C)ORICON DD inc. | |
| 映画『蘇りの血』のワンシーン (C)「蘇りの血」製作委員会 | |
“不思議体験”はさて置き、下北半島の自然の美しさを写し撮った映像は、同作の魅力であることは間違いない。撮影時は15歳だった草刈も「音楽も、素敵なラブストーリーも見どころなんですけど、とても自然がキレイなので、注目してほしい」とアピールする。同作のヒロイン・テルテ姫にオーディションを経て抜擢された草刈は、スケジュール的にも体力的にハードな撮影に体当たりで挑んだ。
「一番好きなシーンは、オグリを思いながらイザリ車を引いているシーン」。同作の見せ場の一つでもある、湖上での撮影は「一発勝負と言われて、よしやるぞって気合が入りました」となかなか頼もしい。しかし、「撮影が終わった直後に熱が出てしまって。歯も痛くなってきて…親知らずが腫れてしまったんです」というのも無理はない。
映画の撮影は、2007年に父親で俳優の草刈正雄主演映画『0093女王陛下の草刈正雄』に娘・麻有役として出演したデビュー作以来、まだ2作目。「完成した映画を観た時はとても感動しました。大勢のスタッフやキャストの思いが詰まっているような気がして感動しました」話した。
◆役者じゃないというコンプレックス――中村達也
| 中村達也(C)ORICON DD inc. | |
主演の中村は、過去に何度か映画出演をしているが本業は元BLANKEY JET CITYとしても知られるドラマー。「演技の勉強なんてしていないし、役者じゃないってことにコンプレックスを持っていて『どういう気持ちでカメラの前に立てばいいのか?』と毎日考えていました。でも、カメラの前に立つと、それまで考えていたことが頭の中からなくなって、セリフは追いかけているんだけど、演技はしていないというか、自分のままでしたね」と撮影時を振り返った。
中村を主人公のオグリ役に抜擢した理由について豊田監督は「エコロジーじゃない自然…まがまがしく神々しい自然の力と人間の生命力を描こうと思った時、中村さんの即興演奏が思い浮かんだ。劇中の“蘇り”のシーンは、中村さんが即興でドラムを叩いているように見える」と演技力よりも中村の存在感そのものを絶賛。中村も「ライブで即興演奏をしている時、何も仕組まれていない時間の流れの中で必ず到達できる気分がありまして…、それをこの映画でも感じることができるかもしれないな」と満足そうな表情を見せた。
◆「“なんとかTHE MOVIE”とは違う」――渋川清彦
| 映画『蘇りの血』のワンシーン (C)「蘇りの血」製作委員会 | |
| 渋川清彦(C)ORICON DD inc. | |
豊田監督作品の常連俳優・渋川は、4年ぶりに豊田監督が映画界に復帰したことが何より嬉しい様子で、「監督のヨーイハイ!には魂が入ってる! だからこっちもピリッとするんです。そこも変わらず以前のままでしたね」。渋川が演じた闇の世界を司る大王は「悪役というより、2代目なんです。この国の党首って、みんな2代目じゃないですか」と豊田監督。
その深意を聞かされた渋川は「よく考えれば、そこに行き着くはずなのに、行き着かなかったですね。もっと考えないといけない」と目からうろこが落ちたという。渋川は「“なんとかTHE MOVIE”みたいな感じではない、映画らしい映画を劇場で観てほしい」と作品への思いを募らせた。
物語では、一度、“あの世”へ葬られた男が、身体も心も動かない姿で現世に戻り、テルテ姫の献身的な愛で徐々に心身の自由を取り戻し、本当の意味で“蘇る”。「閉塞感に押しつぶされそうな今の時代に、考えてもらうより、感じてもらいたい」(豊田監督)。
| 『蘇りの血』 闇の世界を司る大王(渋川清彦)の砦に招かれた天才按摩オグリ(中村達也)。砦の中で囚われの身となりながらも健気に生きるテルテ姫(草刈麻有)と出会い、脱出を促すも、オグリ自身が大王の逆鱗に触れ、殺されてしまう。しかし、ある奇妙な男(板尾創路)の計らいで、オグリは身体と心の自由を奪われた姿で再び現世に戻ることになる。一方、テルテ姫は砦からの脱出に成功し、偶然にも森の中でオグリに再会する。オグリを元の姿に戻すため、テルテ姫は伝説の「蘇生の湯」を目指すのだが、その背後には逃げ出したテルテ姫を探す大王の追っ手が迫っていた。 脚本・監督:豊田利晃 音楽:TWIN TAIL (中村達也・勝井祐二・照井利幸×豊田利晃) 出演:中村達也 草刈麻有 渋川清彦 新井浩文 板尾創路ほか 配給:ファントム・フィルム 12月19日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開 (C)「蘇りの血」製作委員会 公式サイト |
2009/12/25