| 今どきの上手なインターネット広告活用術 2005年の日本の総広告費は5兆9625億円、前年比101.8%と、2年連続の増加に。しかし、媒体別に見ると、テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマス4媒体は揃って減少する一方、インターネット広告は2808億円、同154.8%と相変わらずの大幅増を記録した(電通調べ)。電通総研によると、06年は約3500億円となり、いよいよ雑誌と肩を並べようという勢い。好調の背景や注目すべきトレンドとは。 バナー広告の“テレビ化”加速、検索連動型広告も大幅伸長 05年から06年かけて、Yahoo!JAPANのトップページのバナー広告に異変が起こった。自動車やパソコン、金融といった広告主が常連だった広告枠に“新参者”の商品やキャンペーン広告が、一時期ハードローテーションで表示されるようになったのだ。口火を切ったのはサントリー。トップページの広告枠を押さえ、週変わりで様々な種類の広告の固め打ちを展開した。その後、同業他社も追随し、飲料業界のバナー広告を中心としたインターネット広告出稿が急増。ヤフーの2005年度の広告収入を684億円、前年比175.7%に押し上げる一因となった。 実際にバナー広告のリッチ化は急速に進んでいる。ユーザーのブロードバンド環境の普及や技術の進歩と歩みを合わせるように、バナー広告の枠は大型化。従来のレギュラーバナーのサイズである468×60ピクセルが減少する一方で、ラージバナーといわれる728×90ピクセルの主流化が加速している。また、容量も1MBを超えるような「メガバナー」と言われるものも登場。バナー広告上で高精細な画像を音声付きで流せるなど、極めてテレビCMに近いクリエイティブが可能になったのだ。 さらに、インターネットならではのインタラクティブ性をバナー広告上で展開する高度な仕掛けを展開する例も出始めている。広告主はバナー広告を、クリックして自社サイト、キャンペーンサイトに誘導するという本来の役割に加えて、より深いブランド体験により“ファン化”を図ることができるツールとして活用するようになってきているのだ。 グーグルのGoogleアドワーズやオーバチュアのスポンサードサーチに代表される検索連動型広告も顕著な伸びを示す。検索エンジンマーケティング大手のアウンコンサルティングによると、05年の検索連動型広告市場は598億円、前年比87%増と、大幅拡大。同社では、今後も増加し続け、2010年には1758億円と5年間でほぼ3倍に膨れ上がると試算する。 こうした現状について、Webサイト制作を手がけるクリエイターズネット代表取締役の菅原裕氏は、「多くの中小企業が従来中心にしていたチラシ広告を検索連動型広告に切り替えたのが1つの要因。特にグーグルは『東京都港区の半径5キロ圏内』という具合に非常に細かく配信対象地域を絞り込めるなどまさにチラシの代用にできることが利用拡大につながっている。最低単価がワンクリック7円から1円に下がったことも功を奏した」と指摘する。 CGM台頭で広告モデル激変、口コミパワー活用は不可欠に そして、忘れてはならない大きなトレンドがCGM(Consumer Generated Media)の加速度的な普及である。CGMとは、ブログやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など個人が情報を発信する、いわゆるWeb2.0的なメディアの総称である。総務省によると、06年3月末時点でブログ人口は868万人、SNS人口は716万人。また現在ブログの記事数は2億に達したとも言われている。この巨大な波がインターネット広告にも少なからずインパクトを与えているのだ。 インターネット広告大手のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)取締役の横山隆治氏は、現状をこう分析する。「コンシューマーは購買意志を決定するときに、マス広告だけでなく、CGMで他の購入者の意見をいくらでも参考にできるようになった。従来の口コミがブログやSNSにより何十倍、何百倍のパワーを得ているわけである。 企業側にとって、大量の集客力を誇るポータルサイトへの広告出稿、自社サイトのコンテンツ強化に加えて、口コミで影響力のあるオピニオンとのコミュニケーションも重要な課題となった」。要するに、ユーザーに購買の「アクション」を起させるだけでなく、購買後のポジティブな感想を「シェア」させることも必要となってきているわけだ。 口コミパワーの活用は米国で先行している。「いわゆるBuzz(バズ)マーケティング、WOM(Word of Mouse)マーケティングであり、ブログやSNSで適切な投稿をして口コミを発生させる手法。米国では専門の代理店も出始めている」と、菅原氏は説明する。つまり、CGMで場の空気を読みつつ、任意の商材に有益な方向に会話をリードしていくわけである。もしそれが作為的なものだと暴露されてしまった場合のリスクは大きいが、その効果には注目が集まっており、日本にも将来的に上陸する可能性は高い。 複雑化するクロスメディア、購買に結びつける発想が重要 様々なメディアによる広告を展開する「クロスメディア」は大企業を中心に定着してきたが、その手法はより複雑化。テレビなどのマス媒体とインターネットを組み合わせるだけでなく、交通広告、屋外広告などのSP広告も絡めるケースが目立つ。さらに、どのメディアのどの広告でユーザーがどのように行動するかをネット上でトラッキングし、購買まで導くためのコンテクスト(文脈)を練り上げる、緻密なプランニングを導入する企業も出始めている。 「今は、こうしたインターネットに対応した新しいメディアプランニングを導入している企業と、旧態依然とした大雑把なマスマーケティング的な手法に甘んじている企業に二極化。後者はリモデルしない限り、差は開いていく一方」と、横山氏は断言。例えばカード会社がテレビやインターネットの広告を展開した結果としてカード会員を獲得するだけでは不十分。その後の高額な購買に結びつけるまでのコンテクストをいかに構築し実行するかが重要であり、ユーザーの行動をトラッキングできるインターネットではそれが不可欠なのだ。 インターネット広告の現状は、音楽業界にとっては追い風になるという見方もある。クリエイターズネットでプロデューサーを務めるかわちれい子氏は、「若い世代は検索と無料が好き。例えば、地方のコミュニティFMで楽曲が流された直後に、地域限定で検索連動型広告を打ち、楽曲名、番組名やパーソナリティなどの検索結果の上位に、誘導したいサイトが表示されるような広告出稿を展開する。 さらに、クリックして飛んできたユーザーには30秒の試聴ではなく、1曲丸々、CDショップの試聴機と同じように聴かせてあげる」と具体策を提示。そういったコンテクストの工夫により、若年層の購買の掘り起こしは十分に可能と説く。 また、「Web2.0やロングテールといったトレンドは、レコード会社が従来から取り組んできた、ごく普通の手法」と菅原氏は語る。口コミは元々音楽業界の得意な手法。ロングテールとは、ネット上では売上げの低い商品も合計すると無視できない割合になり、逆に売上げ上位の商品を足し上げても大したシェアにならないという特有の法則のことだが、レコード会社は売上げの低い商品も長期間保持し続ける、まさしくロングテールの商売を従来から展開している。「今のインターネット広告の状況と音楽業界の親和性は高い。マメに対策を打てば効果は出る」と、菅原は話す。 (取材・文/高橋 学) |
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2006/11/01