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STARTO社、外部有識者のモニタリング報告書を公表 ジュニアにアンケート実施「ほぼすべてのジュニアが安心して活動」【報告書全文】

 STARTO ENTERTAINMENTは10日、公式サイト更新。第2回モニタリング報告書を公表した。ジュニアを対象にアンケートを実施したことなどを伝えている。

STARTO ENTERTAINMENT社

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 サイトでは「『2025年度外部有識者会議(第7回)』開催及び『第2回モニタリング報告書』受領のご報告」と題したページを掲載。「STARTO ENTERTAINMENTは、人権方針に定める人権デュー・デリジェンスならびにコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス体制の整備・強化のための取組の一環として、6月8日に『2025年度外部有識者会議(第7回)』を開催したことをご報告するとともに、6月9日付で外部有識者より「第2回モニタリング報告書」を受領したことをお知らせいたします」と伝えた。

 公開した第2回モニタリング報告書によると、有識者会議は2024年6月以降、STARTO社の依頼に基づき、過去に旧株式会社ジャニーズ事務所で発生したような性加害を防止し、事業に関わる子どもたちの人権を守る取組に関して、モニタリングを行ってきた。今回の報告書は昨年6月に公表したものに続き2回目となる。

 今回のモニタリング対象期間は、25年4月1日〜26年3月31日。モニタリングにあたっては、23年8月29日に旧ジャニーズ事務所が公表した外部専門家による再発防止特別チームによる調査報告書で示された再発防止策の対応状況も含めて確認している。

 この中では、有識者会議が25年11月19日と21日に大阪と東京で行われたジュニア向けコンプライアンス研修の際に、研修生の立場にあるすべてのジュニアを対象にアンケートを実施したことも伝えた。

 この結果について、同会議は「ほぼすべてのジュニアが安心して活動できており、いやな思いをした経験のあるジュニアはわずかであった」とした。相談できる人として、小学生はほぼ全員が保護者を挙げ、中高生以上でも保護者を挙げる者が最も多かったという。保護者以外としては、ホスピタリティ担当を挙げた者が60%前後と多く、他のジュニアを挙げた者も多かった(50%前後)とした。ホスピタリティ担当以外の会社従業員を挙げた人は、大阪より東京の方が多かったという。

 一方で「いやな思いをした経験のあるジュニアはわずかであったが、いわゆる『いじり』などを不快に感じる回答もあったため、留意が必要と思われた」とも指摘した。「ホスピタリティ担当についても、若干であるが、相談しにくいと感じているという回答や、相談すると今後のタレント活動に影響するのではないかと懸念する回答も見られた」という。

 有識者会議の磯谷文明委員は「多数の子どもたちが集まっている点でS社の事業は学校現場との類似性もあるから、今後は、いじめなどジュニア相互間のトラブルへの目配りも求められる」と指摘。「人権侵害の疑いが生じたときは、迅速に、毅然と、そして子どもたちの最善の利益を最優先にして対応するよう心がけていただきたい」とした。

 STARTO社は、今回の報告書の受領をもって2025年度の外部有識者会議は終了になるとした上で「外部有識者には、今後も人権方針に定めた『人権デュー・デリジェンス』の観点から当社の取組状況についてモニタリングしていただくことを予定しております。当社は、今後もコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス体制の整備・強化の取組を継続してまいります」と伝えている。

※以下全文

■第1 はじめに

当職らは、2024年6月以降、御社(第2以下において、S社)の依頼に基づき、過去に旧株式会社ジャニーズ事務所(以下、旧J社)で発生したような性加害を防止し、事業に関わる子どもたちの人権を守る取組に関して、モニタリングを行ってきた。
本報告書は、昨年6月に公表したものに続く2回目となる。今回のモニタリング対象期間は、2025年4月1日〜2026年3月31日である。モニタリングにあたっては、2023年8月29日に旧J社が公表した外部専門家による再発防止特別チームによる調査報告書で示された再発防止策の対応状況も含めて確認している。
本報告書の構成は、第2がモニタリングの結果であり、第3がそれぞれの委員による講評となっている。なお、前回の報告時に確認済みの事項についても、改めて今回確認をしたが、順調に実施されており、特段問題がないと思われるものについては、簡潔に触れる程度とする(取組の詳しい内容について省略しているところもあるため、前回の報告書も併せてご覧いただきたい)。

■第2 S社の取組

1 組織体制

(1)取締役会の設置及び開催

取締役会は引き続き月1回のペースで開催されており、コンプライアンスを含む議題が審議されていた。また、取締役会を補完する役割を果たしていると思われる本部長会議は、2025年7月から隔週の開催となった。

(2)監査役、内部監査室による業務監査

監査役の活動状況は、前回から変化がなかった。内部監査室は、特に人権デューデリジェンスを踏まえた再発防止策の取組について重点的に調査しているところ、2025年5月22日に初回の報告書をとりまとめ、2025年4月〜2026年3月期の内部監査結果についても、本年5月にとりまとめられている。

(3)チーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)の設置

前回の確認時と変わりなく、定期的なコンプライアンス委員会の主催や、コンプライアンスに関する研修の企画・実施、内部通報制度の窓口や対応等を担当していた。

(4)コンプライアンス委員会

コンプライアンス委員会も、前回の確認時と変わりなく月1回開催されており、充実した内容であったことも資料等で確認した。また、SMILE-UP.社との合同のコンプライアンス連携会議についても月1回開催され、CCOが出席していた。

(5)人権方針の策定

S社が2023年12月に策定した人権方針には変更がなく、昨年6月に新しく代表取締役CEOに就任した鈴木克明氏からのヒヤリングにより、S社として引き続き人権方針に沿った企業経営を行うとともに、社内に徹底するよう努めていることが確認された。

(6)社内規程の整備

前回確認した状況から大きな変更はなく、前回以降も引き続き新たな規程の制定や既存規程の改定が行われ、整備が進められていた。

(7)社内手続の明確化

前回確認した状況から大きな変更はなく、職務権限基準表に沿った決裁システムの運用が定着しているようであった。

2 組織の刷新

前回の調査において、S社から、旧J社において発生した一連の性加害事件に関与していた役員・従業員はS社に存在しない旨の説明を受けたが、今期も特段そのことに疑義を生じさせる情報に接することはなかった。
本年12月から「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)が施行される。S社としては、法施行後に民間教育保育等事業者としていつでも認定を受けられる状態にしておくため、社内の必要な体制整備を進めているとの説明があった。

3 ジュニアの育成

(1)施設面の安全点検

東京の施設については、前回確認した状況から変更はなかった。
大阪の施設については、従前使用してきた施設と、新たに使用開始した施設があるところ、前者については現地視察を実施した結果、前回口頭で説明を受けた内容を確認できた。後者については現地視察の機会がなかったが、育成本部からのヒヤリング及び間取り図によれば、死角となるような場所は見当たらず、また、ビデオカメラが設置されて状況を把握できる仕組みになっていることが確認できた。東京と異なり、ジュニアが長く滞在する場所はなく、ジュニアが利用する時間には複数の大人やジュニアなどがいることも併せ考えると、リスクは低いものと考えられた。

(2)複数人体制

前回確認した状況から変更はなかった。

(3)ジュニアとの接触

前回確認した状況から変更はなかった。
なお、2024年10月22日付で作成した『タレント・ジュニアとの接し方ガイドライン』については、前回以降、コンサート主催会社の役職員に共有し、その委託を受けた振付師などへの周知を図った。
また、東京の施設においては、2025年7月から、主に子どもたち相互間のトラブル防止のため、新たにスタッフが常駐するスペースを確保した。

(4)評価方法の見直し

前回確認した状況から変更はなかった。

(5)保護者によるレッスン見学会等

保護者によるレッスン見学会は、2025年度には実施されなかったが、2026年度には東京で複数回にわたって実施されている。大阪は、定期的なレッスンがなかった関係で、見学会を開催することはなかったが、2026年度から定期的なレッスンを再開したことから、今後、状況が調えば、見学会の開催に向けて検討を進めていく予定であるとの説明を受けた。
中学生以下のジュニアに対する契約説明会については、2026年2月〜3月の間に、保護者の参加も得て東京及び大阪で実施した。

(6)ジュニアへのアンケートの実施

当会議では、2025年11月19日及び21日に大阪及び東京で実施されたジュニア向けコンプライアンス研修の機会に、研修生の立場にあるすべてのジュニアを対象にアンケートを実施した(欠席者については、12月3日に実施)。従業員に気兼ねなく回答できるようにするため、子どもたちが記載した回答用紙は、従業員が内容を見ないで回収し、その場で封筒に封入して磯谷委員の事務所宛に郵送してもらうという方法をとった。
アンケートの内容は、下記のとおりであるが、小学生用と中高生以上用と分け、前者については、漢字を少なくするなどわかりやすい表記に努めた。
・ ジュニアとして活動しているとき、安心できているか。
・ 大人や先輩から、いやなことをされたことがあるか。
※ある場合は、自由記載。
・ 他のジュニアから、いやなことをされたことがあるか。
※ある場合は、自由記載。
・ 他のジュニアが、いやなことをされているのを見聞きしたことがあるか。
※ある場合は、自由記載。
・ いやなことをされたとき、相談できる人はいるか。
※いる場合は、どんな人か。
・ 安心して活動できるために会社に求めること。
まず、アンケート結果を見る限り、ほぼすべてのジュニアが安心して活動できており、いやな思いをした経験のあるジュニアはわずかであった。
相談できる人としては、小学生はほぼ全員が保護者を挙げ、中高生以上でも保護者を挙げる者が最も多かった。保護者以外としては、ホスピタリティ担当を挙げた者が60%前後と多く、他のジュニアを挙げた者も多かった(50%前後)。ホスピタリティ担当以外の会社従業員を挙げた者は、大阪より東京の方が多かった。
前記のとおり、いやな思いをした経験のあるジュニアはわずかであったが、いわゆる「いじり」などを不快に感じる回答もあったため、留意が必要と思われた。
また、ホスピタリティ担当についても、若干であるが、相談しにくいと感じているという回答や、相談すると今後のタレント活動に影響するのではないかと懸念する回答も見られた。

4 相談先の拡充

(1)内部通報社内窓口及び社外窓口(法律事務所)の設置

仕組み自体は、前回確認した状況から変更はなかった。
従業員のみならずジュニアも対象としている内部通報窓口(外部の法律事務
所による窓口)については、今回の対象期間中、ジュニアからの相談実績はな
かった。
ジュニアの活動に関してさまざまな質問等を受け付けるジュニア専用の相
談窓口には5件の相談が寄せられたが、人権侵害を疑わせるような相談はなか
った。

(2)ホスピタリティ体制

2025年4月からホスピタリティ担当を支える仕組みとして、スーパーバイザーとなる外部の公認心理師への委託や、スーパーバイザーの参加を得たケースカンファレンスの定期開催、ホスピタリティ体制全体ミーティングの定期開催によるホスピタリティ担当のバックアップなどを開始したが、これらの取組は順調に継続されていた。
当職らは、ホスピタリティ担当の日々の活動の実情を把握するため、東京と大阪の担当者1名ずつと個別のヒヤリングを実施した(忌憚のない意見を述べてもらうため、他の従業員には離席してもらった)。
ヒヤリングを通して、いずれのホスピタリティ担当も、ホスピタリティ担当を支える取組を心強く感じていることがわかった。また、いずれのホスピタリティ担当も、子どもたちが話しやすいように、積極的に声がけをしたり、レッスン等に立ち会ったりするなど工夫をしていた。現在のところ、相談があっても、ジュニアどうしの日常的なトラブル(悪ふざけの行き過ぎなど)や学校に関するものが多く、大人による加害を疑わせるようなことはなかった。

(3)ジュニア対象の個別心理カウンセリング

2025年度には、委託した外部の公認心理師により、中学生以下のジュニアに対し個別カウンセリングを実施することを企画し、ジュニアに対する事前アンケートを実施するなど着手した。カウンセリングの実施は諸事情により2026年度にずれ込むこととなったが、本報告書作成時点において、すでに多くのジュニアが個別カウンセリングを受けていた。もっとも個別カウンセリングは現在も継続中であるから、本報告書では、これについての評価は見送ることとした。

5 研修

(1)役員・従業員向け

今期は、2025年6月30日に『子どもたちを安全に育成していくために』、2026年1月20日に『誰もが自分らしく働ける職場づくり〜LGBTQ+と性の多様性、エンタテインメント業界における視点〜』を実施した(いずれも悉皆研修)。
1回目の研修では当会議委員である斉藤委員が講師を務め、身近にある性暴力の実態や性的グルーミングなどのトピックを通して、S社の事業において子どもたちが安全・安心に活動するための配慮等について学んでもらった。受講後アンケートにおいても、ほとんどの参加者が有益だったと回答した。自由記載においても、当事者意識を持つこと、なるべく1対1を避けて複数対応をすること、子どもとの間に適切な距離を維持すること、絶対的な権力者を作らないこと、風通しのよい組織づくりを心がけることなどの大切さを指摘する回答が目立った。
2回目の研修は、直接子どもたちの性被害防止を取り扱うものではなかったが、他人の性の尊重という点で、1回目の研修との共通性を含むものであった。
受講後アンケートによると、ほとんどの受講者が内容を理解できたと回答したが、自分自身に引きつけて気を付けたい点があったとする回答は7割程度にとどまった。もっとも、自由記載においては、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に対する気づきや、同様の研修を繰り返すことの大切さを指摘する回答が少なくなかった。これらの研修は基本的に全従業員を対象に行われており、社内全体の人権意識を向上させる点で有益だったことがうかがえる。

(2)タレント向け

2025年8月から同年11月にかけて合計9回のコンプライアンス研修を実施した。内容としては、性加害やハラスメント等を含めて近時のコンプライアンスリスクについて説明した上で、リスクが顕在化した際の対応、S社の取組(相談窓口など)を説明した。

(3)ジュニア(研修生の立場にあるジュニア)向け

すでに触れたとおり、2025年11月19日と21日に大阪と東京において実施した(欠席者のために12月3日にも実施した)。S社CCOを務める弁護士が、小学生向けと中高生以上向けの2つに分けて実施し、喫煙や飲酒、反社会的勢力との関わりなど回避すべき行動の説明のほか、性被害やストーカー被害、誹謗中傷など人権侵害の例を説明し、被害に遭ったり不安を感じたりしたときは、ホスピタリティ担当、心理カウンセラーをはじめ、S社が設けている各種相談窓口に相談するよう促した。ホスピタリティ担当や心理カウンセラー、相談窓口については資料も配付した。

■第3 講評

1 磯谷委員による講評

前期または今期の初めにスタートした子どもたちの安全・安心につながるさまざまな取組が、いよいよ軌道に乗ってきたという印象を受けた。人権方針の策定や内部監査システム、CCOの任命やコンプライアンス委員会の定期開催など、社内で人権を守る基礎的な仕組みが根付くとともに、諸規程の整備なども相俟って、組織の透明性や風通しのよさなどが感じられた。従業員のヒヤリングにおいても、組織運営がしっかりしてきたという感想に接したが、その規模と社会的役割にふさわしい組織づくりが、ある程度現場にも浸透してきているものと推測できる。
子どもたちの人権擁護の観点から、とりわけ研修とホスピタリティ体制に注目した。研修については、従業員に対する悉皆研修において性加害について取り上げ、受講後アンケートからも実施の意義が大きかったことが確認できた。ジュニア向けの研修も発達の程度に合わせて理解しやすいように配慮されていた。悉皆研修は、毎年全く同じものでは興味関心を引きにくいため、重要な部分は繰り返し伝えつつ、形は適宜変えていく工夫が求められる。一方、ホスピタリティ担当については、それを社としてバックアップする体制が整ったことを高く評価したい。現在のホスピタリティ担当はいわゆる専門職ではない。そのこと自体はマイナスではないが、その場合、専門職によるスーパーバイズはいっそう重要になる。その点、心理の専門職も参加するケースカンファレンスが開催されていることは心強い。なお、わずかながらホスピタリティ担当に相談すると仕事に支障が生じるのではないかと誤解しているジュニアもいるようであるから、そのようなことがない旨を繰り返し丁寧に説明することが求められる。
当会議は、今回、初めてジュニアに対するアンケートを実施した。その結果、ほとんどのジュニアたちが、人権侵害の不安を感じることなく、活動に専心できていることがわかった。もっとも、ジュニア相互間でのトラブルの存在を推測させる回答もわずかながらあった(もとより短い回答のみであるから、詳細はわからないが、当職らからS社に対し配慮を求めたものもあった)。多数の子どもたちが集まっている点でS社の事業は学校現場との類似性もあるから、今後は、いじめなどジュニア相互間のトラブルへの目配りも求められる。また、このようなアンケートは、定期的に実施されることが望ましい。
総合的に評価すれば、再発防止に向けたS社の取組は順調と考えられ、今後は何よりそれらの取組を継続することが期待される。ただ、大人も子どもも、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが集う場でもあるから、今後も人権侵害が生じる可能性は決して否定できない。しっかりとアンテナを張って、人権侵害の疑いが生じたときは、迅速に、毅然と、そして子どもたちの最善の利益を最優先にして対応するよう心がけていただきたい。

2 斉藤委員による講評

今回のモニタリング報告書では、過去の重大な性加害事件という構造的な問題を乗り越え、とりわけ心理的・社会的に脆弱な立場にあるジュニアの安全と人権を守るための枠組みが、具体性をもって組織内に仕組みとして確立しつつある点を評価
しつつ、以下の3点について重点的に述べたいと思う。

1.ジュニアへのアンケート調査の実施
当会議では今回初めてジュニアへのアンケート調査を実施した。被害当事者になりやすい立場にあるジュニアは、最も潜在的当事者性を有している存在である。また、多くが未成年でありかつ選考される側にあるジュニアは、圧倒的な非対称性(権力勾配)の中に置かれている。その中で、匿名性の担保と声を上げてもつぶされない関係性の構築を考慮してアンケートを実施できた点は、リスクの早期発見や再発防止において極めて有効なアプローチであると考えている。
このアンケートが重要なのは、彼らが「本当のことを書いても、自分のキャリアに不利益が生じない」と信じられる心理的安全性が担保されているかという点にある。結果をみればわかるように、ほとんどのジュニアたちが不安を感じることなく活動に専念しており、有意義なレッスンになっているということが伝わってきた。
このアンケートを継続的に行うことは、ジュニアたちに「このアンケートは形骸化しておらず、大人が動いてくれる」という期待や信頼感を与えると考えている。このPDCAを止めないことが、性加害やハラスメントの温床となる秘匿性の高い空間を解体する第一歩となる。

2.ホスピタリティ体制の強化

S社におけるホスピタリティの制度は、非常にユニークかつメンタルヘルス相談窓口としてもマネージャーや親権者を介さずに直接話ができる母性的な存在として、臨床的にも非常に理にかなっていると考えている。子どもであっても一人の人間であり、大人に対する「適切なバウンダリー(境界)」とプライバシーを持つ権利がある。時に親や担当マネージャー自身がプレッシャーの源泉(依存関係や過度な期待)になり得るケースを想定すると、この独立した相談ラインの確保は必要不可欠である。また、ジュニアを「消費される商品」としてではなく、一人の発達過程にある子どもとしてリスペクトする姿勢の現れがこの役割であるといえる。
そして、この重要なポストであるホスピタリティ担当を社としてバックアップする体制が整ったことは、ホスピタリティ担当の心理的安全性にも大きく貢献している。外部の心理職によるスーパーバイズや、その心理職にいつでも相談できる安心感は、このホスピタリティ担当というS社の強みを一層強化する。今後も、継続的に専門職を交えたケース会議を開催する中で、ホスピタリティ担当自身も特に発達段階も含めた個々の特性に応じたジュニアへの関りなどのスキルを磨いていってほしい。

3.従業員研修の実施について

従業員研修については、私自身が担当していたこともあり、S社スタッフに「他人事から自分事へ」という問題意識を獲得してもらうための視点を盛り込んだ内容になるよう工夫した。受講後のアンケート結果を見てもわかるように、実施した意義は非常に大きく、過去の重大な性加害事件の歴史と現在が地続きであるという当事者意識を持ってもらうための研修にできたのではないかと思っている。
最後に、本報告書は「形だけのコンプライアンス」ではなく、現場の人間関係のダイナミクスを変えていこうとする試みが読み取れる内容になっていると評価している。今後の課題としては、再発防止を基盤としたこの仕組みを機能させ継続することにある。研修やアンケートがルーティン化すると、人間の心理としてどうしても慣れが生じる。特にエンタテインメント業界のような“情熱”や“夢”が原動力となる現場では、成長のためには多少の無理や理不尽さも必要だという旧来の思想が形を変えて復活しがちである。今後も、外部の第三者の視点を定期的に入れながら、風通しの良さを維持し、「ジュニアを傷つけない指導・育成こそが、結果として最高峰のエンタテインメントを生む」という新しいスタンダードを、S社が先頭に立って証明し続けていくことを期待している。
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