ChatGPTをはじめとする生成AIの躍進で、私たちの仕事や生活は大きく変わると予想される。ホワイトカラーや、クリエイター、プログラマーの仕事がAIに代替されるといわれる今後、私たちは何をして、どこを目指せばいいのか。堀江貴文氏の新刊『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』の第2章「ChatGPT後の社会と生き方について教えてください――Voicy 緒方憲太郎さんと考える」より一部抜粋、再構成して掲載する。
■結局、AIとどう付き合っていくのがよいでしょうか?
・AIをパートナーに、自分を進化させよう
・AIとは戦わない。うまく仕事に取り入れる
・人間界最強を目指そう
堀江:AIを使いこなすことで、ある領域のスキルが飛躍的に伸びるのは明白だ。
藤井聡太さんがあの若さで名人位を獲得できたのは、彼が小さい頃からAIを相手に壁打ちをし続けてきたからに他ならない。一時は不調に陥っていた羽生善治さんが再び強くなったのもAIを使った研究を取り入れたからではないだろうか。
つまり、AIの助けを借りることで人間側の機能も進化するのだ。
当然のことながらAIは弱音を吐くことなどなく、何百局であろうが練習に付き合ってくれる。そのうえ、持っている知識も膨大である。
将棋以外にも、私たちの生活のあらゆるところでAIは有効性を発揮していくだろう。たとえば、認知症の人の耳にAirPodsのようなデバイスをつけ、AIスピーカーが語りかけ続ければ認知症の改善に効果を発揮するかもしれない。
私たち自身も、仕事にAIを取り入れることで、自分自身ができることを増やしていこう。
今後、幼少期からAIに触れて育った若者が、私たちとはまったく異なる思考回路を持つ可能性は大いにある。そうなれば、これまで脚光を浴びずに活躍できていなかった知性が活躍できるようになるかもしれない。
緒方:AI進化の波は不可逆です。では、私たちは今後どうAIと付き合っていけばいいのでしょうか。次の3つのパターンしかないと思っています。
(1)AIをうまく使う
(2)AIと戦う
(3)AIから逃げる
(1)は、AIを利用してビジネスを始めたり、仕事の中にAIを取り入れる、といった道です。
私見ですが、(2)の真正面からAIに対抗するのが最悪だと思います。なぜなら、クリエイティブな活動や知的生産において、自分にしか出せない価値なんて、もはやほとんどあり得ないからです。たとえば、自分にしかできないデザインや自分なりの翻訳をどれだけ突き詰めても、AIの進化スピードにはついていけません。それだったらAIをうまく仕事に取り入れたほうがいい。
圧倒的に便利な道具があるのであれば、捨てるよりうまく使う方法を考えたほうが得策です。
さらにいえば、新しいアイデアを出したところでネットに上げれば、それはすぐにAIが学習してしまう。ドラゴンボールでいえば「セル」と似ています。セルは、ライバルの技やエネルギーを取り入れて強くなることができる敵キャラです。そんなものを相手に戦うのはそもそも難しいのです。
(3)のようにAIがタッチしない領域にいくというのもあり得るでしょう。たとえば、飲食業や介護サービス、また、手作業が必要なものは残りやすいでしょう。
堀江:緒方さんが言うように、AIの影響はほとんどすべての職種に及ぶ。勝負を挑もうとしても無謀なのは言うまでもない。
しかし、そもそもAIと競う必要があるだろうか?
知識量において人間がAIに勝てないように、自動車を使えば、どんな人間も速さで敵うわけがない。人類最速の男であるウサイン・ボルトでも自動車には速さで敵わない。ボルトはあくまで「人間カテゴリー」の中で最速なだけだ。
それでもウサイン・ボルトは世界記録を追い求める。
囲碁や将棋といった知的スポーツだって同じことだ。誰もAIに敵わないのは自明である。AbemaTVの将棋の番組などは、AIがリアルタイムでどちらが優勢かを数値で表示するまでになっていたりする。
それでも、人間の将棋や囲碁の大会は相変わらず実施されている。もう誰もAIに勝てないのをわかっているのに、将棋の対局をありがたく観戦している。ボクシングだって、一発殴られたら死んでしまうのでロボットには勝てないが、人間のボクシングはなくならないだろう。つまり、生身の人間というカテゴリーの中で「人間界最強」を決めるだけで盛り上がれるのだ。
結局、人間がテクノロジーと競うことに意味はないのだ。
AIと競っている暇があるなら、それぞれがウサイン・ボルトになれるジャンルを探したほうがいい。たとえば水泳大会は年齢別にカテゴリーが分かれている。70代のマスターズの部でメダルを獲ることだってできる。今後はトランスジェンダーの部門なんかも出てくるかもしれない。
近い将来、あらゆるジャンルが細分化され、いくつもの部門が作られる。私たちは、その中で自分が得意そうなものを見つけ、自分の価値を発揮すればいいのだ。
緒方:AIの使い勝手がよくなることで、人はますます自分勝手になる可能性があると思っています。周囲がAIだらけになると、自分の言うことを聞いてくれるのが当たり前になっていくからです。
現状でも、人の気持ちが汲みとれず、人間関係が苦手になっている人が増えていると感じます。「私らしく生きる」ことを突き詰め、自分を肯定する情報だけを取り入れて、自分勝手に生きていける環境ができつつあるのです。ペット産業が伸びている(※)背景には、このような状況があるのではないでしょうか。
※矢野経済研究所『2022年版 ペットビジネスマーケティング総覧』(2022年7月29日)
だとすると、今後磨いておくべきは、人間対応能力でしょう。
誰とでも穏やかに接することができるようになって、自分の周りに100人友達を作ること。ビジネス書っぽくいえば営業力や折衝力、そして、複数人で何かを進めていく時に必要なマネジメント力やリーダーシップを磨くことが、今必要なのだと思います。
■面倒くさい“人間”と付き合える人の価値が高まる
私はこのまま進むと、多くの職種が方向転換を余儀なくされると思っています。学校で習ったことではうまくいかず、学校が本当に必要なのか、という議論も出てくるかもしれません。
それでも、人間だけがどんどん面倒くさい社会になっていくので、その人間をちゃんとマネジメントしたり、調整したりできる人であれば、生き残っていく価値を持っていると思います。すべて技術化してしまうからこそ、人間性に最大限張れるかが、生き残る術になるのではないでしょうか。
■各プロフィール
【堀江貴文】
1972年10月29日、福岡県生まれ。 現在はロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、さまざまな分野で活動する。会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では、1000人近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。ビジネス系に特化した起業家向け会員制コミュニケーションサロン『neoHIU』でも会員とともにさまざまな事業を展開している。著書『不老不死の研究』(予防医療普及協会と共著。幻冬舎)、『信用2.0』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)など。
【緒方憲太郎】
大阪大学基礎工学部卒業後、大阪大学経済学部を卒業。公認会計士の経験を積んだ後、世界一周の旅に出る。その後、アメリカの会計事務所Ernst&Youngに就職。帰国後は、ベンチャー企業の経営者支援を経て、2015年に医療ゲノム検査事業のテーラーメッド株式会社を創業、3年後事業売却。2016年に株式会社Voicyを創業。近著は『ボイステック革命』(日本経済新聞出版)、『新時代の話す力』(ダイヤモンド社)。
実業家・堀江貴文氏の著作
『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』
■結局、AIとどう付き合っていくのがよいでしょうか?
・AIをパートナーに、自分を進化させよう
・AIとは戦わない。うまく仕事に取り入れる
・人間界最強を目指そう
堀江:AIを使いこなすことで、ある領域のスキルが飛躍的に伸びるのは明白だ。
藤井聡太さんがあの若さで名人位を獲得できたのは、彼が小さい頃からAIを相手に壁打ちをし続けてきたからに他ならない。一時は不調に陥っていた羽生善治さんが再び強くなったのもAIを使った研究を取り入れたからではないだろうか。
つまり、AIの助けを借りることで人間側の機能も進化するのだ。
当然のことながらAIは弱音を吐くことなどなく、何百局であろうが練習に付き合ってくれる。そのうえ、持っている知識も膨大である。
将棋以外にも、私たちの生活のあらゆるところでAIは有効性を発揮していくだろう。たとえば、認知症の人の耳にAirPodsのようなデバイスをつけ、AIスピーカーが語りかけ続ければ認知症の改善に効果を発揮するかもしれない。
私たち自身も、仕事にAIを取り入れることで、自分自身ができることを増やしていこう。
今後、幼少期からAIに触れて育った若者が、私たちとはまったく異なる思考回路を持つ可能性は大いにある。そうなれば、これまで脚光を浴びずに活躍できていなかった知性が活躍できるようになるかもしれない。
緒方:AI進化の波は不可逆です。では、私たちは今後どうAIと付き合っていけばいいのでしょうか。次の3つのパターンしかないと思っています。
(1)AIをうまく使う
(2)AIと戦う
(3)AIから逃げる
(1)は、AIを利用してビジネスを始めたり、仕事の中にAIを取り入れる、といった道です。
私見ですが、(2)の真正面からAIに対抗するのが最悪だと思います。なぜなら、クリエイティブな活動や知的生産において、自分にしか出せない価値なんて、もはやほとんどあり得ないからです。たとえば、自分にしかできないデザインや自分なりの翻訳をどれだけ突き詰めても、AIの進化スピードにはついていけません。それだったらAIをうまく仕事に取り入れたほうがいい。
圧倒的に便利な道具があるのであれば、捨てるよりうまく使う方法を考えたほうが得策です。
さらにいえば、新しいアイデアを出したところでネットに上げれば、それはすぐにAIが学習してしまう。ドラゴンボールでいえば「セル」と似ています。セルは、ライバルの技やエネルギーを取り入れて強くなることができる敵キャラです。そんなものを相手に戦うのはそもそも難しいのです。
(3)のようにAIがタッチしない領域にいくというのもあり得るでしょう。たとえば、飲食業や介護サービス、また、手作業が必要なものは残りやすいでしょう。
しかし、そもそもAIと競う必要があるだろうか?
知識量において人間がAIに勝てないように、自動車を使えば、どんな人間も速さで敵うわけがない。人類最速の男であるウサイン・ボルトでも自動車には速さで敵わない。ボルトはあくまで「人間カテゴリー」の中で最速なだけだ。
それでもウサイン・ボルトは世界記録を追い求める。
囲碁や将棋といった知的スポーツだって同じことだ。誰もAIに敵わないのは自明である。AbemaTVの将棋の番組などは、AIがリアルタイムでどちらが優勢かを数値で表示するまでになっていたりする。
それでも、人間の将棋や囲碁の大会は相変わらず実施されている。もう誰もAIに勝てないのをわかっているのに、将棋の対局をありがたく観戦している。ボクシングだって、一発殴られたら死んでしまうのでロボットには勝てないが、人間のボクシングはなくならないだろう。つまり、生身の人間というカテゴリーの中で「人間界最強」を決めるだけで盛り上がれるのだ。
結局、人間がテクノロジーと競うことに意味はないのだ。
AIと競っている暇があるなら、それぞれがウサイン・ボルトになれるジャンルを探したほうがいい。たとえば水泳大会は年齢別にカテゴリーが分かれている。70代のマスターズの部でメダルを獲ることだってできる。今後はトランスジェンダーの部門なんかも出てくるかもしれない。
近い将来、あらゆるジャンルが細分化され、いくつもの部門が作られる。私たちは、その中で自分が得意そうなものを見つけ、自分の価値を発揮すればいいのだ。
緒方:AIの使い勝手がよくなることで、人はますます自分勝手になる可能性があると思っています。周囲がAIだらけになると、自分の言うことを聞いてくれるのが当たり前になっていくからです。
現状でも、人の気持ちが汲みとれず、人間関係が苦手になっている人が増えていると感じます。「私らしく生きる」ことを突き詰め、自分を肯定する情報だけを取り入れて、自分勝手に生きていける環境ができつつあるのです。ペット産業が伸びている(※)背景には、このような状況があるのではないでしょうか。
※矢野経済研究所『2022年版 ペットビジネスマーケティング総覧』(2022年7月29日)
だとすると、今後磨いておくべきは、人間対応能力でしょう。
誰とでも穏やかに接することができるようになって、自分の周りに100人友達を作ること。ビジネス書っぽくいえば営業力や折衝力、そして、複数人で何かを進めていく時に必要なマネジメント力やリーダーシップを磨くことが、今必要なのだと思います。
■面倒くさい“人間”と付き合える人の価値が高まる
私はこのまま進むと、多くの職種が方向転換を余儀なくされると思っています。学校で習ったことではうまくいかず、学校が本当に必要なのか、という議論も出てくるかもしれません。
それでも、人間だけがどんどん面倒くさい社会になっていくので、その人間をちゃんとマネジメントしたり、調整したりできる人であれば、生き残っていく価値を持っていると思います。すべて技術化してしまうからこそ、人間性に最大限張れるかが、生き残る術になるのではないでしょうか。
■各プロフィール
【堀江貴文】
1972年10月29日、福岡県生まれ。 現在はロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、さまざまな分野で活動する。会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では、1000人近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。ビジネス系に特化した起業家向け会員制コミュニケーションサロン『neoHIU』でも会員とともにさまざまな事業を展開している。著書『不老不死の研究』(予防医療普及協会と共著。幻冬舎)、『信用2.0』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)など。
【緒方憲太郎】
大阪大学基礎工学部卒業後、大阪大学経済学部を卒業。公認会計士の経験を積んだ後、世界一周の旅に出る。その後、アメリカの会計事務所Ernst&Youngに就職。帰国後は、ベンチャー企業の経営者支援を経て、2015年に医療ゲノム検査事業のテーラーメッド株式会社を創業、3年後事業売却。2016年に株式会社Voicyを創業。近著は『ボイステック革命』(日本経済新聞出版)、『新時代の話す力』(ダイヤモンド社)。
実業家・堀江貴文氏の著作
『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』
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2023/11/11