日本の“サスペンスドラマの帝王”船越英一郎がイベントでぼやいていたように、「新作の2時間ドラマが少なくなってきた」とさみしく思っている人にぜひ観てほしいのが、映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(公開中)。イギリスの“ミステリーの女王”アガサ・クリスティが生涯を通して書き続け、今もなお全世界で愛される“名探偵ポアロ”シリーズの「ハロウィーン・パーティ」を基に、亡霊の仕業としか説明のできない“人間には不可能”な殺人事件に世界一の名探偵ポアロが挑む。上映時間も103分と、CMのない2時間ドラマと同じ感覚で楽しめる。
本作の監督・製作・主演を兼務したのは、アカデミー賞脚本賞受賞歴を誇るケネス・ブラナー。アガサ・クリスティの原作を映画化するのは、『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』に続いて3作目となる。ケネス・ブラナーによるアガサ・クリスティ作品の映画化をどう感じているのか?世界中におけるクリスティ作品の文芸及びメディア関係の権利を管理するアガサ・クリスティ社(ACL)の会長兼CEOのジェームズ・プリチャード氏に聞いた。
ジェームズ・プリチャード氏は、アガサ・クリスティのひ孫。2009年よりACLのディレクターを務め、15年に会長兼CEOに就任し、映画、テレビ、出版、舞台、デジタル・プラットフォームと組んでアガサ・クリスティ作品を新しい観客に届けている。
「私が父(マシュー・プリチャード)からこの仕事を引き継いだ時、パートナーを慎重に選び、選んだ相手を信頼する、それがこのビジネスをやっていく上でカギになると教わりました。曾祖母アガサの作品を『映像化したい』と、日本をはじめ異なる言語・文化を持つ人たちからオファーがくるわけです。この取材と同じように、私たちの間に通訳がいて、通訳がちゃんと訳してくれていることを信頼するしかない。脚本もきちんと訳されていると信頼するしかない。だからこそ、パートナーを慎重に選ぶことが重要になるんです」
アガサ・クリスティの小説は世界中で親しまれており、日本でもほぼ全ての作品が翻訳・刊行されている。映像化されることも多く、近年ではフジテレビの三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』(2015年)、『黒井戸殺し』(18年)、『死との約束』(21年)や、テレビ朝日の『そして誰もいなくなった』(17年)、『パディントン発4時50分〜寝台特急殺人事件〜』(18年)、『大女優殺人事件〜鏡は横にひび割れて〜』(18年)、『予告殺人』(19年)が放送された。今年は、舞台『ホロー荘の殺人』が上演され、イギリスで制作されたドラマシリーズ『名探偵ポワロ』のハイビジョンリマスター版がNHK・BSプレミアムで放送中だ。
「日本は小説の出版においても世界屈指のマーケットですし、皆さんがものすごく情熱的に曾祖母の作品を愛してくださっていることを私はよく知っています。それに、日本には探偵(推理)小説の伝統があって、盛んに出版され、映像化されている。それゆえにアガサの作品も好まれているのかな、と思います」
さて、本題のケネス・ブラナーによるクリスティ作品の映画化についてだが、「私たちはケネス・ブラナー(監督・製作・主演)とマイケル・グリーン(脚本)をとても信頼しています。映像化にあたって、私たちがチェックするのは脚本です。マイケルは毎回、初校の段階ですでに完成度の高い脚本を書き上げてくるのです。本当に秀でた才能の持ち主です。そして、ケンのポアロ役は最高の演技だと思います」と、プリチャード氏は全幅の信頼を寄せる。
『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』と、アガサ作品の中でも人気の高いタイトルの映画化を経て、『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の基になった物語は、アガサにとって60作目で、ポアロ作品全33作のうち31番目に書かれた長編「ハロウィーン・パーティ」。ロンドン近郊の町を舞台に、子どもたちが集まったハロウィーンのパーティで、「殺人を見た」と告白した13歳の少女が殺される物語だ。事件そのものはもちろん、人間心理の描写が高く評価されるこの原作が、映画化されるのは今回が初めて。しかも、前2作と異なり、原作が大胆に改変されている。
「前2作とは趣向を変え、ホラー要素を入れて観客を驚かせようと思ったんじゃないかと理解しました。舞台をロンドン近郊の町からイタリアのベネチアに移し、『亡霊』という超常現象を絡めるなど、原作とはかなり違うのですが、うまくいっていると思います」と、プリチャード氏も改変に肯定的だ。
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』のあらすじは――“水上の迷宮都市”と称されるイタリアのベネチアで、一線を退き、静かな日々を過ごしていた名探偵エルキュール・ポアロ。「死者の声が話せる」と断言する霊能者のトリックを暴くことを友人に依頼された彼は、ハロウィーンの日に子どもの霊が現れるという屋敷でのパーティと降霊会に参加する。集まったのは、それぞれ悩みや秘密を抱えたような面々。やがて天候が悪化し、屋敷から身動きができなくなる中、招待客のひとりが殺される。しかも人間には不可能な方法で…。百戦錬磨のポアロにとっても、ここまで不可解な殺人事件は初めてだった。これは人間の仕業なのか? それとも亡霊による怪奇現象なのか?やがてポアロ自身の命も狙われ、事件は信じがたい末路へと導かれる。
「ケネス・ブラナーは、当代随一の俳優です。彼がポアロを演じてくれること自体が、アガサ作品の素晴らしさの証明になる、そう思っています。それだけではありません。私の曾祖母は、ポアロという名探偵を生み出しながらも、彼の心理状態には触れなかった。でも、ケネスとマイケルは、ポアロの生い立ちや、何が彼をこうさせたのかを掘り下げ、深みを持たせました。そして、ケネスのポアロは、作品を重ねるたびに進化していますね。今回は、“亡霊は存在しない”と言うポアロが、“超常現象”の存在を認めざるを得ない状況に直面して、どう変化していくのか。ケネスの最高の演技を楽しんでいただけると思います」
本作の監督・製作・主演を兼務したのは、アカデミー賞脚本賞受賞歴を誇るケネス・ブラナー。アガサ・クリスティの原作を映画化するのは、『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』に続いて3作目となる。ケネス・ブラナーによるアガサ・クリスティ作品の映画化をどう感じているのか?世界中におけるクリスティ作品の文芸及びメディア関係の権利を管理するアガサ・クリスティ社(ACL)の会長兼CEOのジェームズ・プリチャード氏に聞いた。
ジェームズ・プリチャード氏は、アガサ・クリスティのひ孫。2009年よりACLのディレクターを務め、15年に会長兼CEOに就任し、映画、テレビ、出版、舞台、デジタル・プラットフォームと組んでアガサ・クリスティ作品を新しい観客に届けている。
「私が父(マシュー・プリチャード)からこの仕事を引き継いだ時、パートナーを慎重に選び、選んだ相手を信頼する、それがこのビジネスをやっていく上でカギになると教わりました。曾祖母アガサの作品を『映像化したい』と、日本をはじめ異なる言語・文化を持つ人たちからオファーがくるわけです。この取材と同じように、私たちの間に通訳がいて、通訳がちゃんと訳してくれていることを信頼するしかない。脚本もきちんと訳されていると信頼するしかない。だからこそ、パートナーを慎重に選ぶことが重要になるんです」
アガサ・クリスティの小説は世界中で親しまれており、日本でもほぼ全ての作品が翻訳・刊行されている。映像化されることも多く、近年ではフジテレビの三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』(2015年)、『黒井戸殺し』(18年)、『死との約束』(21年)や、テレビ朝日の『そして誰もいなくなった』(17年)、『パディントン発4時50分〜寝台特急殺人事件〜』(18年)、『大女優殺人事件〜鏡は横にひび割れて〜』(18年)、『予告殺人』(19年)が放送された。今年は、舞台『ホロー荘の殺人』が上演され、イギリスで制作されたドラマシリーズ『名探偵ポワロ』のハイビジョンリマスター版がNHK・BSプレミアムで放送中だ。
「日本は小説の出版においても世界屈指のマーケットですし、皆さんがものすごく情熱的に曾祖母の作品を愛してくださっていることを私はよく知っています。それに、日本には探偵(推理)小説の伝統があって、盛んに出版され、映像化されている。それゆえにアガサの作品も好まれているのかな、と思います」
さて、本題のケネス・ブラナーによるクリスティ作品の映画化についてだが、「私たちはケネス・ブラナー(監督・製作・主演)とマイケル・グリーン(脚本)をとても信頼しています。映像化にあたって、私たちがチェックするのは脚本です。マイケルは毎回、初校の段階ですでに完成度の高い脚本を書き上げてくるのです。本当に秀でた才能の持ち主です。そして、ケンのポアロ役は最高の演技だと思います」と、プリチャード氏は全幅の信頼を寄せる。
『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』と、アガサ作品の中でも人気の高いタイトルの映画化を経て、『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の基になった物語は、アガサにとって60作目で、ポアロ作品全33作のうち31番目に書かれた長編「ハロウィーン・パーティ」。ロンドン近郊の町を舞台に、子どもたちが集まったハロウィーンのパーティで、「殺人を見た」と告白した13歳の少女が殺される物語だ。事件そのものはもちろん、人間心理の描写が高く評価されるこの原作が、映画化されるのは今回が初めて。しかも、前2作と異なり、原作が大胆に改変されている。
「前2作とは趣向を変え、ホラー要素を入れて観客を驚かせようと思ったんじゃないかと理解しました。舞台をロンドン近郊の町からイタリアのベネチアに移し、『亡霊』という超常現象を絡めるなど、原作とはかなり違うのですが、うまくいっていると思います」と、プリチャード氏も改変に肯定的だ。
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』のあらすじは――“水上の迷宮都市”と称されるイタリアのベネチアで、一線を退き、静かな日々を過ごしていた名探偵エルキュール・ポアロ。「死者の声が話せる」と断言する霊能者のトリックを暴くことを友人に依頼された彼は、ハロウィーンの日に子どもの霊が現れるという屋敷でのパーティと降霊会に参加する。集まったのは、それぞれ悩みや秘密を抱えたような面々。やがて天候が悪化し、屋敷から身動きができなくなる中、招待客のひとりが殺される。しかも人間には不可能な方法で…。百戦錬磨のポアロにとっても、ここまで不可解な殺人事件は初めてだった。これは人間の仕業なのか? それとも亡霊による怪奇現象なのか?やがてポアロ自身の命も狙われ、事件は信じがたい末路へと導かれる。
「ケネス・ブラナーは、当代随一の俳優です。彼がポアロを演じてくれること自体が、アガサ作品の素晴らしさの証明になる、そう思っています。それだけではありません。私の曾祖母は、ポアロという名探偵を生み出しながらも、彼の心理状態には触れなかった。でも、ケネスとマイケルは、ポアロの生い立ちや、何が彼をこうさせたのかを掘り下げ、深みを持たせました。そして、ケネスのポアロは、作品を重ねるたびに進化していますね。今回は、“亡霊は存在しない”と言うポアロが、“超常現象”の存在を認めざるを得ない状況に直面して、どう変化していくのか。ケネスの最高の演技を楽しんでいただけると思います」
このニュースの流れをチェック
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2023/09/17