世情不安もあってか、近年、占いが活況を呈している。テレビ番組からスター占い師が登場したほか、コロナ禍の影響で占う場はオンラインへ移行。「占いなんて胡散臭い」「信じない」といった声は根強いものの、占い市場は約1兆円規模と言われるほど成長。「人に相談できない悩み」を持つ人の半数は、カウンセラーや弁護士でなく「占い師」に相談する、という調査結果もある。人々は今、占いに何を求めているのか。国内最大規模のオンライン占いを運営するLINEに、市場の実情と最新の“占いトレンド”を聞いた。
■「人に相談できない悩み」持つ人の半数が占い師に相談、日米で大きな違い
『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)最強運ランキングを筆頭に、近年一気に増えた占い番組。約1兆円規模といわれる現在の占い市場の活況について、オンライン占いアプリ『LINE占い』事業に携わるLINE株式会社・川野辺傑氏はこう解説する。
「LINEの調査(全国の15〜59歳の男女1054人対象)によると、コロナ禍で悩みを抱えている人は増え、中でも『気軽に人に相談できない悩み』を持つ人が約40%。さらにその人たちが誰に有料で相談したかというと、50%以上の人から『占い師』という回答が得られました。アメリカでは、同様の調査では『カウンセラー』という回答が最も多くなります。古くから占いという手段を用いて、人に言えない悩みの解消に役立ててきた日本ならではといえるかもしれません」(川野辺傑氏、以下同)
神社に行けばおみくじを引き、星占いに血液型占い、手相、姓名判断から果ては動物占いまで、実にさまざまな占いがブームになってきた日本。「占い経験を問わない、20歳〜61歳までの男女440人」への調査(株式会社リーチゼム)では、何かしら対面で占いをした経験があると答えた人は、実に80%にも及んだという。
とはいえ、「占いなんて胡散臭い」「スピリチュアル系は怖い」と、批判的に見る向きは根強い。2000年代初頭は美輪明宏・江原啓之らによる『オーラの泉』(テレビ朝日系)、故・細木数子さんの『ズバリ言うわよ!』(TBS系)などがブームになったが、それ以降「占い番組がタブー化した時期もあった」(川野辺氏)。さらに、ガラケー時代は加入当初から<今日の運勢占い>などのデジタル占いが付いてきて人気を得たものの、スマホへの転換でうまくサービスを移行することができず、一時は業界全体が低迷していたという。
そんな中で、業界にとっての追い風となったのが、前述の占い番組とコロナ禍だ。番組からは星ひとみのような人気占い師が登場。またコロナ禍では、占い上場企業の売上規模は一定の伸びを見せ、3年(2018〜2021年)で1.4倍に伸長したという。とくに、巣ごもり需要を見込んで、自動で占い結果が出てくるデジタルコンテンツから、チャットやリモートを利用した占いへとビジネスモデルを変容させることで、各社売り上げを上げていった。
■コロナ禍や長期休暇には〈不倫〉が相談事の上位に、当たる・当たらないより大事なのは?
では、このように占いを利用する人たちは、一体どんなことを占っているのか。
「『LINE占い』のユーザーの94%は女性。その相談カテゴリーの第1位は、意中の相手がどう思っているか知りたいという〈あの人の気持ち〉、男性の第1位は〈2人の未来〉。男女ともに恋愛の悩みが1位となっています」
この順位や相談事のトレンドは、世情や大きな災害などによっても変化するという。たとえば、現在のトップ5には入っていないが、コロナ禍の2021年の女性の相談事では〈不倫〉が上位にランクイン。〈不倫〉は毎年、長期休暇の際にも上位に入るそうで、職場など外で会えなくなることにより、悩みを抱える人が多いことの表れといえるだろう。
また、占いには「霊視・オーラ」「スピリチュアル・リーディング」「タロット」「数秘術」「透視」などの占術があるが、同サービスでは開始以来、「霊視・オーラ」が不動の1位。
「ロジック系の占いは、一定のルールに沿って結果が出るので、占い師によって結果が大きく変わることはありませんが、霊視・オーラは占い師ごとで結果が異なります。霊視と聞くと怪しく思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、要するに、ユーザーは自分の話した悩みを聞いてもらって、前向きな方向に行けるように後押ししてほしい。その根本的なニーズを持っているのだと思います」
実際、レビューでも「言い方が優しかった」「親身に話を聞いてくれた」など、当たる・当たらないよりも、コミュニケーション面での評価の声が大多数。博報堂調べによると、「占い・おみくじを信じる」と答えた人は、この20年間、25〜32%とほぼ横ばいの状態だが、実は占いに当たること“だけ”を求めている人は少ないということだ。
「ゲッターズ飯田さんがよく『所詮占いですから』とおっしゃいますが、占いはその人の何かを決めるものというより、ひとつの指針であり、手段。悩み事を占う中で、結果が最適なアドバイスになることが大事なのだと感じています。ですから、当たるかどうかだけでなく、コミュニケーションが上手な占い師が人気なのかもしれません」(川野辺氏)
ちなみに、男性はロジック系を好む傾向があり、霊視・オーラと同様にタロットカードの人気が高いという。
このように、オンラインで占い師に直接相談できるのが、自社ツールであるチャットや電話、ビデオ通話を活用した『LINE占い』の特徴。ビデオ通話機能を使った対面占いのサービスは、まさに2021年、コロナ禍真っただ中にローンチされた。
「スマホでできる対面占いの利点は、コロナ禍の中わざわざ占い師のもとに出向かなくても、自宅で相談できたことです。同時期に、テレビ番組が仕掛けたブームで占いに対する心理的距離感が縮まったことも加わって、占いがカジュアルなものとなり、需要が高まったと感じています」(川野辺氏)
一方、チャットやビデオ通話を利用した占いは、占い師にとってもメリットが大きかった。人と会うことを制限されたコロナ禍、“占いの館”などの閉店や収入減に追い込まれていた占い師にとって、オンラインは時間や場所にとらわれずに効率的に営業ができるメリットがある。これを可能にしたことで、ユーザーに比較的に安価でサービスを提供できるようになった。
「ユーザーと占い師、双方にとってメリットがないとなかなかこのビジネスは成立しない」と川野辺氏。その言葉どおり、デジタルコンテンツの占いの需要は下がるなか、チャットやビデオ通話による対面占いの有償ユーザーは2017年から2022年までで5.5倍に増加。仕掛けた川野辺氏も、「まさかこんなに広がるとは」と驚きを隠せない。
現在、『LINE占い』には1600人の占い師が所属しているが、ユーザーはこの中から「まず相談したいカテゴリーを選び、その中で価格と評価、レビューを見て、自分にマッチする人を探すケースが多い」とか。そして、大きな選択のポイントが「占い師のランキング」だ。
「ネットで商品や店舗を選ぶ際、ユーザー数や評価を反映したランキングは欠かせない情報ですが、この業界においては占い師を順位付けするという行為はタブーでした。なので、ランキング実現のためには、実は苦労がありましたね。IT化が進む中で、ユーザーが選びやすく、可視化されたプラットフォームを提供していきたいことを説明し、納得してもらいました」
■ChatGPTで占いの精度も上がる? でも「システムが進化する分『生の人を求める』」
システムやデジタルの進化によって、生まれたオンライン占い。時代によって占い方、占う場所は変わっても、悩みや迷いを占い師に聞いてもらいたい、結果を通してアドバイスをもらいたい、というユーザーの心理は変わらない。
「今後、自動で結果が出るデジタルコンテンツの占いは、ChatGPTなどを使うことでより精度が上がることが予想されます。ただ、今の傾向を見るに、それだけでユーザーは満足しない。システム面が年々進化していく分、『生の人を求める』という気持ちはより高まっていくのではないでしょうか」
スマホがあれば、いつでもどこでも占えるようになった現在。誰にも言えない悩みを占い師に相談する人も、より増えていくだろう。ただ、川野辺氏の言うとおり、占いとは「ひとつの指針であり、手段」。悩みを抱えたときのアドバイスとして、選択肢のひとつとして活用できれば、さらにカジュアルに楽しめるのではないだろうか。
(文:河上いつ子)
■「人に相談できない悩み」持つ人の半数が占い師に相談、日米で大きな違い
『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)最強運ランキングを筆頭に、近年一気に増えた占い番組。約1兆円規模といわれる現在の占い市場の活況について、オンライン占いアプリ『LINE占い』事業に携わるLINE株式会社・川野辺傑氏はこう解説する。
「LINEの調査(全国の15〜59歳の男女1054人対象)によると、コロナ禍で悩みを抱えている人は増え、中でも『気軽に人に相談できない悩み』を持つ人が約40%。さらにその人たちが誰に有料で相談したかというと、50%以上の人から『占い師』という回答が得られました。アメリカでは、同様の調査では『カウンセラー』という回答が最も多くなります。古くから占いという手段を用いて、人に言えない悩みの解消に役立ててきた日本ならではといえるかもしれません」(川野辺傑氏、以下同)
神社に行けばおみくじを引き、星占いに血液型占い、手相、姓名判断から果ては動物占いまで、実にさまざまな占いがブームになってきた日本。「占い経験を問わない、20歳〜61歳までの男女440人」への調査(株式会社リーチゼム)では、何かしら対面で占いをした経験があると答えた人は、実に80%にも及んだという。
そんな中で、業界にとっての追い風となったのが、前述の占い番組とコロナ禍だ。番組からは星ひとみのような人気占い師が登場。またコロナ禍では、占い上場企業の売上規模は一定の伸びを見せ、3年(2018〜2021年)で1.4倍に伸長したという。とくに、巣ごもり需要を見込んで、自動で占い結果が出てくるデジタルコンテンツから、チャットやリモートを利用した占いへとビジネスモデルを変容させることで、各社売り上げを上げていった。
■コロナ禍や長期休暇には〈不倫〉が相談事の上位に、当たる・当たらないより大事なのは?
では、このように占いを利用する人たちは、一体どんなことを占っているのか。
「『LINE占い』のユーザーの94%は女性。その相談カテゴリーの第1位は、意中の相手がどう思っているか知りたいという〈あの人の気持ち〉、男性の第1位は〈2人の未来〉。男女ともに恋愛の悩みが1位となっています」
この順位や相談事のトレンドは、世情や大きな災害などによっても変化するという。たとえば、現在のトップ5には入っていないが、コロナ禍の2021年の女性の相談事では〈不倫〉が上位にランクイン。〈不倫〉は毎年、長期休暇の際にも上位に入るそうで、職場など外で会えなくなることにより、悩みを抱える人が多いことの表れといえるだろう。
また、占いには「霊視・オーラ」「スピリチュアル・リーディング」「タロット」「数秘術」「透視」などの占術があるが、同サービスでは開始以来、「霊視・オーラ」が不動の1位。
「ロジック系の占いは、一定のルールに沿って結果が出るので、占い師によって結果が大きく変わることはありませんが、霊視・オーラは占い師ごとで結果が異なります。霊視と聞くと怪しく思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、要するに、ユーザーは自分の話した悩みを聞いてもらって、前向きな方向に行けるように後押ししてほしい。その根本的なニーズを持っているのだと思います」
実際、レビューでも「言い方が優しかった」「親身に話を聞いてくれた」など、当たる・当たらないよりも、コミュニケーション面での評価の声が大多数。博報堂調べによると、「占い・おみくじを信じる」と答えた人は、この20年間、25〜32%とほぼ横ばいの状態だが、実は占いに当たること“だけ”を求めている人は少ないということだ。
「ゲッターズ飯田さんがよく『所詮占いですから』とおっしゃいますが、占いはその人の何かを決めるものというより、ひとつの指針であり、手段。悩み事を占う中で、結果が最適なアドバイスになることが大事なのだと感じています。ですから、当たるかどうかだけでなく、コミュニケーションが上手な占い師が人気なのかもしれません」(川野辺氏)
ちなみに、男性はロジック系を好む傾向があり、霊視・オーラと同様にタロットカードの人気が高いという。
このように、オンラインで占い師に直接相談できるのが、自社ツールであるチャットや電話、ビデオ通話を活用した『LINE占い』の特徴。ビデオ通話機能を使った対面占いのサービスは、まさに2021年、コロナ禍真っただ中にローンチされた。
「スマホでできる対面占いの利点は、コロナ禍の中わざわざ占い師のもとに出向かなくても、自宅で相談できたことです。同時期に、テレビ番組が仕掛けたブームで占いに対する心理的距離感が縮まったことも加わって、占いがカジュアルなものとなり、需要が高まったと感じています」(川野辺氏)
一方、チャットやビデオ通話を利用した占いは、占い師にとってもメリットが大きかった。人と会うことを制限されたコロナ禍、“占いの館”などの閉店や収入減に追い込まれていた占い師にとって、オンラインは時間や場所にとらわれずに効率的に営業ができるメリットがある。これを可能にしたことで、ユーザーに比較的に安価でサービスを提供できるようになった。
「ユーザーと占い師、双方にとってメリットがないとなかなかこのビジネスは成立しない」と川野辺氏。その言葉どおり、デジタルコンテンツの占いの需要は下がるなか、チャットやビデオ通話による対面占いの有償ユーザーは2017年から2022年までで5.5倍に増加。仕掛けた川野辺氏も、「まさかこんなに広がるとは」と驚きを隠せない。
現在、『LINE占い』には1600人の占い師が所属しているが、ユーザーはこの中から「まず相談したいカテゴリーを選び、その中で価格と評価、レビューを見て、自分にマッチする人を探すケースが多い」とか。そして、大きな選択のポイントが「占い師のランキング」だ。
「ネットで商品や店舗を選ぶ際、ユーザー数や評価を反映したランキングは欠かせない情報ですが、この業界においては占い師を順位付けするという行為はタブーでした。なので、ランキング実現のためには、実は苦労がありましたね。IT化が進む中で、ユーザーが選びやすく、可視化されたプラットフォームを提供していきたいことを説明し、納得してもらいました」
■ChatGPTで占いの精度も上がる? でも「システムが進化する分『生の人を求める』」
システムやデジタルの進化によって、生まれたオンライン占い。時代によって占い方、占う場所は変わっても、悩みや迷いを占い師に聞いてもらいたい、結果を通してアドバイスをもらいたい、というユーザーの心理は変わらない。
「今後、自動で結果が出るデジタルコンテンツの占いは、ChatGPTなどを使うことでより精度が上がることが予想されます。ただ、今の傾向を見るに、それだけでユーザーは満足しない。システム面が年々進化していく分、『生の人を求める』という気持ちはより高まっていくのではないでしょうか」
スマホがあれば、いつでもどこでも占えるようになった現在。誰にも言えない悩みを占い師に相談する人も、より増えていくだろう。ただ、川野辺氏の言うとおり、占いとは「ひとつの指針であり、手段」。悩みを抱えたときのアドバイスとして、選択肢のひとつとして活用できれば、さらにカジュアルに楽しめるのではないだろうか。
(文:河上いつ子)
2023/06/20