アメリカ最大級の日本ポップカルチャーのショーケース「Anime NYC」が、2022年11月18〜20日の3日間にわたり、ニューヨークのジャビッツ・センターで開催された。連日盛況を博した本ショーケースには、日本からも大手出版社やアニメ制作会社、関連業界の企業など約200社が出展。その中の1つ、バンダイナムコミュージックライブとして初出展を企画した同社の丹羽竜太氏に、現地で感じた日本のファンとは異なる反応や、今後の海外展開における課題を聞いた。
■同じアニメファンでも日米の気質の違いを実感「MixBox meets AnimeList」ブース
日本のアニメ・マンガをテーマにしたイベントや展示会は、北米に数百規模が存在するという。その中で17年にスタートした「アニメNYC」は後発ながら、異例の成長を遂げており、22年度は全米および世界各国から約5万5000人が来場し、連日大盛況となった。
展示会の中で、ひと際存在感を放っていたのは、「機動戦士ガンダム」シリーズの巨大モニュメントだった。開場早々、一帯には長蛇の列ができ、開催期間中その列は途切れることなく続いたという。その近くにバンダイナムコグループの様々なコンテンツブースが出展され、その1つとして、バンダイナムコミュージックライブの音楽コンテンツの展示が行われた。
会場に足を踏み入れたバンダイナムコミュージックライブの丹羽竜太氏は、第一印象を次のように振り返る。
「新型コロナによる巣ごもり時間などによって北米でもガンプラの需要が上がっていたことは認識していましたが、現地の様子を見てそれを強く実感しました」
今回のバンダイナムコミュージックライブのブースでは、世界最大級の日本のアニメ・マンガのコミュニティ&データベースサイト「MyAnimeList」と合同で、「MixBox meets AnimeList」と題して3つのアクティビティが展開された。24時間誰かとつながることができる無料アニソンストリーミングサービス「MixBox」の世界に入り込み、そのナビゲーター天音蘭と写真撮影ができる「MixBox LEDパネル&フォトスポット」、ヒットアニソンの簡易オルゴール制作が行える「DIY Music Box Strips」、そしてランティス楽曲のイントロクイズ「Anime Music Quiz」がそれだ。
このうちもっとも盛り上がったのはイントロクイズ大会だったが、丹羽氏は簡易オルゴール制作の「DIY Music Box Strips」が好評であったことに驚きを隠せなかったという。
「これはかなり意外な結果でした。MyAnimeListさんとの事前の企画会議で提案されたとき、本当に来場者は参加するのか、と半信半疑だったからです。国内のアニメ関連イベントによく足を運んでいて、ファンの動向を理解していると思っていましたから。蓋を開けてみれば、僕が期待していたフォトスポットよりもオルゴール人気のほうが高く、しかも参加者はみんなノリノリ制作していました。同じアニメファンでも日本とではずいぶん気質が違うことを肌で感じましたね」
■クリエイターの生の声に聞き入る海外ファン「転スラ」スペシャルステージ
このほか会場では、バンダイナムコフィルムワークス配給の人気アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』(以下「転スラ」)のステージイベントも行われた。1700席のチケットは全て完売したが、VIP席(45ドル 500席/アクリルスマホスタンド、アーティストのサインなどの特典付)から売れていったという。イベントではまず、制作スタッフが登壇して制作時の苦労やエピソードが披露された。観客はクリエイターの生の声に熱心に聞き入っていた。
「クリエイター寄りの話は海外のファンにも訴求力があることがわかりました。また、北米初公開となる劇場版の冒頭シーンを特別上映したのですが、『会場に行ったから最初に観ることができた』と会場は大いに沸いていました」
その興奮は、劇場版主題歌「Make Me Feel Better」を担当したアニソンシンガーのMindaRyn(マイダリン)と、挿入歌「SPARKLES」を担当したSTEREO DIVE FOUNDATIONのR・O・Nの登場でさらにヒートアップ。2人はどのような想いで作曲・歌唱をしたかなどの制作裏話をし、生歌を披露してファンの熱い歓声に応えた。イベント後には、バンダイナムコミュージックライブ、ランティス、関連アーティストの各ブースで、前出の2人に加え、3人組クリエイターユニットNOILION のLIOの3名による、CD購入者との対面サイン会も行われた。
「ステージもサイン会も、ファンの盛り上がりは日本同様に熱かったです。出演したアーティストたちも、コロナ禍でライブを行うことができなかったこともあり、とても喜んでいましたし、サイン会は日本ではあまり行われていないので、新鮮だったようです。とてもリラックスして楽しんでいましたね」
■コンテンツを軸にした展示が海外ファンに深く訴求
会場で、ファンたちのリアルな反応を目にしたことで、丹羽氏は、海外でのショーケースにおける費用対効果のヒントが得られたと目を輝かせる。
「音楽レーベルとしてのブース出展は今回が初でしたが、やはり総花的な内容よりも、『転スラ』のように、あるコンテンツを軸にした展示のほうが深くファンに訴求すると確信しました。また、他ブースを覗いて、来場者はコンテンツを深掘りできる濃い企画を求めていることに気づきました。今回の反省点としては、例えば、「MixBox LEDパネル&フォトスポット」での写真撮影をさらに盛り上げるには、ランティスにまつわる『涼宮ハルヒの憂鬱』や『ラブライブ!』のキャラクターに扮したコスプレイヤーを配置するなどして、企画にファンを誘導できるような仕掛けを行うべきでした」
「プロモーションを目的とした展示会は、投資額に対して中長期的にどれだけの効果があったかという測定がしづらく、今後の出展はこれまで以上に戦略を考えないといけない」と語る丹羽氏は、今後、海外出展を行ううえで、これまでとは全く異なる切り口による新しい企画が必要であることを実感している。海外戦略に対して、4月より新たな部門を設置した同社。世界規模で人気を得ながらも、まだまだ日本からはその実力を十分発揮する発信が為されていない、と言われるアニメコンテンツ市場を、今後どのようにけん引していくのか、その取り組みに期待したい。
文・河上いつ子
■同じアニメファンでも日米の気質の違いを実感「MixBox meets AnimeList」ブース
日本のアニメ・マンガをテーマにしたイベントや展示会は、北米に数百規模が存在するという。その中で17年にスタートした「アニメNYC」は後発ながら、異例の成長を遂げており、22年度は全米および世界各国から約5万5000人が来場し、連日大盛況となった。
展示会の中で、ひと際存在感を放っていたのは、「機動戦士ガンダム」シリーズの巨大モニュメントだった。開場早々、一帯には長蛇の列ができ、開催期間中その列は途切れることなく続いたという。その近くにバンダイナムコグループの様々なコンテンツブースが出展され、その1つとして、バンダイナムコミュージックライブの音楽コンテンツの展示が行われた。
会場に足を踏み入れたバンダイナムコミュージックライブの丹羽竜太氏は、第一印象を次のように振り返る。
「新型コロナによる巣ごもり時間などによって北米でもガンプラの需要が上がっていたことは認識していましたが、現地の様子を見てそれを強く実感しました」
今回のバンダイナムコミュージックライブのブースでは、世界最大級の日本のアニメ・マンガのコミュニティ&データベースサイト「MyAnimeList」と合同で、「MixBox meets AnimeList」と題して3つのアクティビティが展開された。24時間誰かとつながることができる無料アニソンストリーミングサービス「MixBox」の世界に入り込み、そのナビゲーター天音蘭と写真撮影ができる「MixBox LEDパネル&フォトスポット」、ヒットアニソンの簡易オルゴール制作が行える「DIY Music Box Strips」、そしてランティス楽曲のイントロクイズ「Anime Music Quiz」がそれだ。
このうちもっとも盛り上がったのはイントロクイズ大会だったが、丹羽氏は簡易オルゴール制作の「DIY Music Box Strips」が好評であったことに驚きを隠せなかったという。
「これはかなり意外な結果でした。MyAnimeListさんとの事前の企画会議で提案されたとき、本当に来場者は参加するのか、と半信半疑だったからです。国内のアニメ関連イベントによく足を運んでいて、ファンの動向を理解していると思っていましたから。蓋を開けてみれば、僕が期待していたフォトスポットよりもオルゴール人気のほうが高く、しかも参加者はみんなノリノリ制作していました。同じアニメファンでも日本とではずいぶん気質が違うことを肌で感じましたね」
■クリエイターの生の声に聞き入る海外ファン「転スラ」スペシャルステージ
このほか会場では、バンダイナムコフィルムワークス配給の人気アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』(以下「転スラ」)のステージイベントも行われた。1700席のチケットは全て完売したが、VIP席(45ドル 500席/アクリルスマホスタンド、アーティストのサインなどの特典付)から売れていったという。イベントではまず、制作スタッフが登壇して制作時の苦労やエピソードが披露された。観客はクリエイターの生の声に熱心に聞き入っていた。
「クリエイター寄りの話は海外のファンにも訴求力があることがわかりました。また、北米初公開となる劇場版の冒頭シーンを特別上映したのですが、『会場に行ったから最初に観ることができた』と会場は大いに沸いていました」
その興奮は、劇場版主題歌「Make Me Feel Better」を担当したアニソンシンガーのMindaRyn(マイダリン)と、挿入歌「SPARKLES」を担当したSTEREO DIVE FOUNDATIONのR・O・Nの登場でさらにヒートアップ。2人はどのような想いで作曲・歌唱をしたかなどの制作裏話をし、生歌を披露してファンの熱い歓声に応えた。イベント後には、バンダイナムコミュージックライブ、ランティス、関連アーティストの各ブースで、前出の2人に加え、3人組クリエイターユニットNOILION のLIOの3名による、CD購入者との対面サイン会も行われた。
「ステージもサイン会も、ファンの盛り上がりは日本同様に熱かったです。出演したアーティストたちも、コロナ禍でライブを行うことができなかったこともあり、とても喜んでいましたし、サイン会は日本ではあまり行われていないので、新鮮だったようです。とてもリラックスして楽しんでいましたね」
■コンテンツを軸にした展示が海外ファンに深く訴求
会場で、ファンたちのリアルな反応を目にしたことで、丹羽氏は、海外でのショーケースにおける費用対効果のヒントが得られたと目を輝かせる。
「音楽レーベルとしてのブース出展は今回が初でしたが、やはり総花的な内容よりも、『転スラ』のように、あるコンテンツを軸にした展示のほうが深くファンに訴求すると確信しました。また、他ブースを覗いて、来場者はコンテンツを深掘りできる濃い企画を求めていることに気づきました。今回の反省点としては、例えば、「MixBox LEDパネル&フォトスポット」での写真撮影をさらに盛り上げるには、ランティスにまつわる『涼宮ハルヒの憂鬱』や『ラブライブ!』のキャラクターに扮したコスプレイヤーを配置するなどして、企画にファンを誘導できるような仕掛けを行うべきでした」
「プロモーションを目的とした展示会は、投資額に対して中長期的にどれだけの効果があったかという測定がしづらく、今後の出展はこれまで以上に戦略を考えないといけない」と語る丹羽氏は、今後、海外出展を行ううえで、これまでとは全く異なる切り口による新しい企画が必要であることを実感している。海外戦略に対して、4月より新たな部門を設置した同社。世界規模で人気を得ながらも、まだまだ日本からはその実力を十分発揮する発信が為されていない、と言われるアニメコンテンツ市場を、今後どのようにけん引していくのか、その取り組みに期待したい。
文・河上いつ子
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2023/05/19