お気に入りの映画の話から、気になるあの人の心の中を少しだけのぞき見る【かけがえのない1本】シリーズ。今回は、8年ぶりのドラマ出演(カンテレ・フジテレビ“月10”ドラマ『アバランチ』)で話題の俳優・田島亮さんに“かけがえのない1本”を聞きました。(※映画のネタバレ要素を含みます)
――かけがえのない1本は?
【田島】僕の“かけがえのない1本”は、『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』(2021年)です。1960年代頃に一番盛んだった、在日朝鮮人を朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に帰国させる“帰還事業”を扱ったドキュメンタリー映画です。在日朝鮮人の夫と北朝鮮に渡ったまま帰ってこられない日本人女性が多くいる事実を描いています。人生の残り時間が少なくなる中で、どうしても家族に会いたい――北朝鮮にいる姉のもとへ、妹が会いに行き58年ぶりに再会する、というのがメインストーリーなんですが、再会をエモーショナルに描くのではなく、その裏に何があるのか、なぜそういうことが起きてしまったのかをすごく丁寧に説明してくれる。観ていて飽きない1秒も見逃すことができない、とても興味深い映画でした。
――なぜこの作品を選んだのですか?
【田島】1960年代以降のアメリカにおける学生運動およびフェミニズム運動におけるスローガンに「パーソナル・イズ・ポリティカル」があります。「個人的なことは政治的なこと」、個人に起きたことをひも解いていった時に、それより大きな社会構造の問題と結びついてくるという意味で、自分が作品に参加する時に必ず真ん中に置いている言葉です。
この映画を観た時に、「逆は?」と思ったんです。「政治的なことは個人的なこと」という言葉はないのか? ないんです。でも、何でも自由に自分がやろうと思ったことはできる環境にいる僕が考えるべきなのは、「政治的なことは個人的なこと」なんじゃないのか。そうしなければ、社会はより良く変わっていかないんじゃないか、とこの映画を観て初めて思いました。自分に新たな気づきを与えてくれた映画だったので、選びました。
――社会派ドキュメンタリーは敷居が高いと思っている方も多い気がするのですが…。
【田島】姉と妹の再会のシーンで、会った瞬間は泣いたり、抱き合ったりするんですけど、1分後には「太ったわね」「うるさいわね」なんて言い合っている。それがリアルですよね。その裏側で58年間の空白が埋まっていく機微みたいなものを、当事者たちの息遣いから感じ取れるのがドキュメンタリー映画。リアルなものが見られるというのは、フィクションを観るのとはまた違った楽しさがある。人生を分けてくれるのがドキュメンタリー映画。創作物の中で一番尊敬しています。。
■映画『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』2021年、日本、島田陽磨監督
熊本県で訪問介護の仕事をしている林恵子、67歳。子どもたちはすでに独立。休日は友人らとカラオケや居酒屋に通い、一見平穏な日常を送っている。しかし恵子には、家族や親しい友人にも語ってこなかった、ある秘密があった。それは実の姉が北朝鮮にいるということ。
20歳上の姉、愛子は1960年に在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡っていった。渡航後、手紙で伝えられる姉の変貌ぶりに、恵子はやがて落胆し、反発。そして絶縁する。その後、日朝関係は悪化し、互いに音信不通の状態に。58年の歳月が流れていった。
そんなある時、姉の消息が知らされる。人生の残り時間が少なくなる中、姉への思いが再び頭をもたげ始めた恵子。「拉致されたらどうするんだ」という子どもたちの反対を押し切り、恵子は訪朝を決意。人生初めての海外旅行が北朝鮮となった。
“謎の隣国”で目にする未知の世界。それはその後の恵子の人生をも変えていく…。半世紀以上にわたり、政治や時代に翻弄されてきた家族たちの姿を描く異色のドキュメンタリー作品。
■上映中の劇場リスト
http://chottokitachosen.ndn-news.co.jp/#info
――かけがえのない1本は?
【田島】僕の“かけがえのない1本”は、『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』(2021年)です。1960年代頃に一番盛んだった、在日朝鮮人を朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に帰国させる“帰還事業”を扱ったドキュメンタリー映画です。在日朝鮮人の夫と北朝鮮に渡ったまま帰ってこられない日本人女性が多くいる事実を描いています。人生の残り時間が少なくなる中で、どうしても家族に会いたい――北朝鮮にいる姉のもとへ、妹が会いに行き58年ぶりに再会する、というのがメインストーリーなんですが、再会をエモーショナルに描くのではなく、その裏に何があるのか、なぜそういうことが起きてしまったのかをすごく丁寧に説明してくれる。観ていて飽きない1秒も見逃すことができない、とても興味深い映画でした。
【田島】1960年代以降のアメリカにおける学生運動およびフェミニズム運動におけるスローガンに「パーソナル・イズ・ポリティカル」があります。「個人的なことは政治的なこと」、個人に起きたことをひも解いていった時に、それより大きな社会構造の問題と結びついてくるという意味で、自分が作品に参加する時に必ず真ん中に置いている言葉です。
この映画を観た時に、「逆は?」と思ったんです。「政治的なことは個人的なこと」という言葉はないのか? ないんです。でも、何でも自由に自分がやろうと思ったことはできる環境にいる僕が考えるべきなのは、「政治的なことは個人的なこと」なんじゃないのか。そうしなければ、社会はより良く変わっていかないんじゃないか、とこの映画を観て初めて思いました。自分に新たな気づきを与えてくれた映画だったので、選びました。
――社会派ドキュメンタリーは敷居が高いと思っている方も多い気がするのですが…。
【田島】姉と妹の再会のシーンで、会った瞬間は泣いたり、抱き合ったりするんですけど、1分後には「太ったわね」「うるさいわね」なんて言い合っている。それがリアルですよね。その裏側で58年間の空白が埋まっていく機微みたいなものを、当事者たちの息遣いから感じ取れるのがドキュメンタリー映画。リアルなものが見られるというのは、フィクションを観るのとはまた違った楽しさがある。人生を分けてくれるのがドキュメンタリー映画。創作物の中で一番尊敬しています。。
■映画『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』2021年、日本、島田陽磨監督
熊本県で訪問介護の仕事をしている林恵子、67歳。子どもたちはすでに独立。休日は友人らとカラオケや居酒屋に通い、一見平穏な日常を送っている。しかし恵子には、家族や親しい友人にも語ってこなかった、ある秘密があった。それは実の姉が北朝鮮にいるということ。
20歳上の姉、愛子は1960年に在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡っていった。渡航後、手紙で伝えられる姉の変貌ぶりに、恵子はやがて落胆し、反発。そして絶縁する。その後、日朝関係は悪化し、互いに音信不通の状態に。58年の歳月が流れていった。
そんなある時、姉の消息が知らされる。人生の残り時間が少なくなる中、姉への思いが再び頭をもたげ始めた恵子。「拉致されたらどうするんだ」という子どもたちの反対を押し切り、恵子は訪朝を決意。人生初めての海外旅行が北朝鮮となった。
“謎の隣国”で目にする未知の世界。それはその後の恵子の人生をも変えていく…。半世紀以上にわたり、政治や時代に翻弄されてきた家族たちの姿を描く異色のドキュメンタリー作品。
■上映中の劇場リスト
http://chottokitachosen.ndn-news.co.jp/#info
2021/12/19