ランジャタイ・国崎和也の暴走をいつもマンキンでツッコみ、真空ジェシカと大学時代から苦楽をともにし、ゆにばーすの単独ライブではコントの台本を制作。今年の『M-1』ファイナリストと常に密接し、東京のライブシーンで厚い信頼を置かれている芸人がいる。トンツカタン・森本晋太郎だ。
コントが軸のトリオで活動し今年の『キングオブコント』で準決勝に進出する傍ら、持ち味の的確かつ迅速である賢明なツッコミで「何事も成立させる人」と頼られ、ハチャメチャになりやすいライブやイベントなどのMCを一任されることも多い芸人だ。
さらに、今年は漫才を作り『M-1』にも挑戦し、初出場にもかかわらず準々決勝まで進出した。芸人仲間からの信頼だけでなく、世間からのネタ人気もしっかりとあり、界隈ではブレイクまっしぐらと期待されている優秀な森本に「2つの賞レースの違い」や、距離が近いからこそわかる「『M-1』前の芸人の楽屋の様子」を迫った。東京の若手芸人最強の「ツッコミ人」としても名高い森本に『M-1』についてツッコんだ話を聞いたら、芸人仲間を想う、やさしい気持ちが垣間見えた。
■漫才師は『M-1』前に武士となる
──各所でつぶやかれていますが、今年の『M-1』、ガラリと色が変わりましたね。
森本晋太郎 そうですねー、すごいですよね? いつも身近なコンビが決勝にひと組いったら万々歳なんですけど、今年は何組もいきました。
──『M-1』の時期になると、楽屋での雰囲気は変わりますか?
森本 最近、東京の劇場でウエストランド(タイタン所属)の井口浩之さんが「とにかく浮かれるなよ」って言って歩いてるんです。ネットで褒められてるコメント見て浮き足立つと、そこで終わるって言うのを口酸っぱく言ってて、今みんな劇場でウケても喜ばなくなっちゃってます(笑)。
『M-1』準々決勝でのストレッチーズ(太田プロダクション所属)なんかも、ネタ終了後に楽屋で「とんでもなくウケてたぞ!」って周りが盛り上がってたにもかかわらず、2人とも早々に着替えて「このあとネットラジオの仕事あるんで。お疲れさまでした」って、心を律するようになってました。吉本の劇場以外の東京の劇場に出ている漫才師は、武士みたいになるんです。侍でしたね。
一方、『M-1』の時期の吉本興業所属の芸人さんを見ると、ゆにばーすさんはウケたネタ終わり、楽屋ではらさんは「イエーイ!!」って言っていて。吉本と他事務所勢、楽屋でのたたずまいがだいぶ違うなぁと実感しました。でもまあ、本来はウケたらこうだよなぁとも思いつつ(笑)。
今では楽屋の芸人仲間の顔を見て、近くに井口さんがいるかいないかと判断できます。『M-1』準々決勝の楽屋にも、井口さんはネタが終わってもずっといました……。芸人って大体、ウケたらいい気分になって楽屋に残っちゃうんですよ。だから、井口さんに「ウケたんですね?」って聞いたら「いやいや、スベったからいるんだよ」ってふてくされていて……怖いです。
──お笑いの賞レースは、いわば芸人さん同士の「勝負」でもありますが、芸人間でピリつくことはあまりないんでしょうか?
森本 芸人同士のバチバチ、そういえばあんまりないですね。内心多少はあるけど、みんながそこまで強く思わないのは「売れるきっかけが『M-1』だけじゃなくなった」っていうのが大きいと思うんですよね。もちろん、年に一度の大チャンスではあるんですけど、そのほかにもチャンスの種が増えてきてる分、リスクヘッジができるというか。『M-1』しかない初期の時代は、確かに結構バチバチなイメージがありましたね。今だと、準決勝まで行けばテレビで漫才ができるから、そこも一個ある気がする……。
自分が決勝に行けないくやしさはもちろんあるけど、それよりも仲間が世に出るっていうめでたさのほうが勝っちゃうのかもしれないです。自分も、メインバトルフィールドである『キングオブコント』で、同じ事務所の後輩であるザ・マミィが決勝に行って、自分たちは準決勝止まりだったけど、正直「くやしさ3.5:おめでとう6.5」の割合でした。
■『M-1』とキングオブコントの違い
──今年、どちらの予選も経験した森本さんですが、2つの大会に出場して感じた違いを教えてください。
森本 『M-1』は、3回戦以降どん兵衛がもらえます(笑)。『キングオブコント』は、今回カーネクストさんがスポンサーで、準決勝から必勝祈願で2021円分のQUOカードがもらえました。
──だいぶ物理的な違いが(笑)。予選の舞台裏の雰囲気はどうですか?
森本 いろんな格好をした人がいる『キングオブコント』のほうが異様な雰囲気です。白塗りだったり、そもそもなんの格好をしているのかわからない人がいますからね。身ひとつで戦う『M-1』の方が、競技感があります。
『M-1』って、「ドラマ」だと思うんですよね。『キングオブコント』は“当日のコントの出来のみ!”みたいなところがあると思うんですけど、『M-1』はその人のバックボーンを理解した上で見るお客さんが多いと思うんですよね。「去年惜しくも準決勝で敗退したコンビが……!」っていうのがあったりすると、より応援したくなると言いますか。やっぱり漫才は「人(ヒト)」ですからね。仁(ニン)がにじみ出ると有利な気がします。
■決勝の舞台で「ヤッチマイナー!」
森本が公私ともに特に仲の良いコンビ、ランジャタイ・真空ジェシカ・ゆにばーすについて詳しく話を聞いた。
1:ランジャタイ
森本 今ネットとかで「ランジャタイはスベってもよし」みたいなことを言われてるじゃないですか。僕もその感覚があって、この前たまたまご一緒したぺこぱさんに「ランジャタイさんはどう転んでもいいですよね〜」って話をしたんです。そしたら松陰寺太勇さんに「僕たちも決勝が決まった時、周りからそう言われていた。でも今思うと、スベってたら今みたいになっていなかったと思う」と言われて。
それを聞いて、その時いた芸人5人くらいが全員ハッと我に返って「あ、確かに。スベんないほうがいいのか」って(笑)。ウケを取るのに越したことはないから「スベってもいいよ」じゃなくて「ウケてほしいな」って、ちゃんとした感覚に戻りました。今、全員麻痺(まひ)してるんですけど、実はお笑いの大会って、ウケたほうがいいみたいです(真剣)。
──(笑)。
森本 太字にしておいてください。「お笑いの大会って、ウケたほうがいい」。うっすいインタビューなんだろうなってバレますね(笑)。国崎(和也)さん本人も決勝でスベること目標にしているんですけど、ダメですよ(笑)。ウケなさい。「スベったわ〜」ってニヤニヤ話す姿も想像できますけど、いち友達、いちファンとしては、やっぱり爆ウケしてほしい。
2:真空ジェシカ
森本 真空ジェシカは大学からの仲です。世間的に、芸風だけを見ると違って見えるかもしれないけど、根は本当に心やさしい青年。川北(茂澄)とか、平場で小道具使ってなんかやるのかなぁ? 隙あらばやってほしいですけど、まずはネタに集中を(笑)。なんか……歳とったなって思いますね。昔なら「いろいろやっちゃえよ!」って言ってたかもしれないけど、もう全員大人ですからね(笑)。3回戦で川北がネタを飛ばしちゃったけど、逆に言うと、「飛ばし」は3回戦で終えたから、決勝は大丈夫だと信じています。
3:ゆにばーす
ゆにばーすさんの何がすごいって、彼らが決勝に行っても、誰も驚かないことですよね。優勝を目標にしていることを皆が知ってるから、周りも含めて全員次のステップを向いてる。
川瀬名人は、誰よりも純粋なんだろうなと思います。「皆、話せばわかってくれる」と思っている人なんです。ツイッターでアンチに立ち向かうのも、人と向き合おうとしてることの表れなのかな。目を背けない性格で、主人公みたいな人だなって思います。
まわりの芸人が借金で困っているときに、まとまった額を貸したりもしてたんですよ。でも、それを自分で美談にしたりしないで、周りに聞かれてサラッと話したり。僕はずっと、あったかい人だと思っています。世間が思ってるかもしれない感じとは、まったく違うんです。
今年の『M-1』ファイナリストは、仁のある人が多いです。ランジャタイさん、真空ジェシカなんかは、東京以外では見たことがない人がまだまだたくさんいると思うので、これから日本全国にみなさんの面白さが知れ渡ると思うと「ヤッチマイナー!」と、キル・ビルのルーシーリューみたいな気持ちになってしまいますね。
(取材・文 佐々木笑)
◆2022年1月7日、トンツカタンの新ネタライブ「新年のトンツカタン」が開催される。年末年始を返上し制作する新ネタを存分に楽しむことができる本ライブ。現在、劇場チケット、配信チケット共に販売中(http://www.p-jinriki.com/sp/news/2021/12/005621.php)
コントが軸のトリオで活動し今年の『キングオブコント』で準決勝に進出する傍ら、持ち味の的確かつ迅速である賢明なツッコミで「何事も成立させる人」と頼られ、ハチャメチャになりやすいライブやイベントなどのMCを一任されることも多い芸人だ。
さらに、今年は漫才を作り『M-1』にも挑戦し、初出場にもかかわらず準々決勝まで進出した。芸人仲間からの信頼だけでなく、世間からのネタ人気もしっかりとあり、界隈ではブレイクまっしぐらと期待されている優秀な森本に「2つの賞レースの違い」や、距離が近いからこそわかる「『M-1』前の芸人の楽屋の様子」を迫った。東京の若手芸人最強の「ツッコミ人」としても名高い森本に『M-1』についてツッコんだ話を聞いたら、芸人仲間を想う、やさしい気持ちが垣間見えた。
■漫才師は『M-1』前に武士となる
──各所でつぶやかれていますが、今年の『M-1』、ガラリと色が変わりましたね。
森本晋太郎 そうですねー、すごいですよね? いつも身近なコンビが決勝にひと組いったら万々歳なんですけど、今年は何組もいきました。
──『M-1』の時期になると、楽屋での雰囲気は変わりますか?
森本 最近、東京の劇場でウエストランド(タイタン所属)の井口浩之さんが「とにかく浮かれるなよ」って言って歩いてるんです。ネットで褒められてるコメント見て浮き足立つと、そこで終わるって言うのを口酸っぱく言ってて、今みんな劇場でウケても喜ばなくなっちゃってます(笑)。
『M-1』準々決勝でのストレッチーズ(太田プロダクション所属)なんかも、ネタ終了後に楽屋で「とんでもなくウケてたぞ!」って周りが盛り上がってたにもかかわらず、2人とも早々に着替えて「このあとネットラジオの仕事あるんで。お疲れさまでした」って、心を律するようになってました。吉本の劇場以外の東京の劇場に出ている漫才師は、武士みたいになるんです。侍でしたね。
一方、『M-1』の時期の吉本興業所属の芸人さんを見ると、ゆにばーすさんはウケたネタ終わり、楽屋ではらさんは「イエーイ!!」って言っていて。吉本と他事務所勢、楽屋でのたたずまいがだいぶ違うなぁと実感しました。でもまあ、本来はウケたらこうだよなぁとも思いつつ(笑)。
今では楽屋の芸人仲間の顔を見て、近くに井口さんがいるかいないかと判断できます。『M-1』準々決勝の楽屋にも、井口さんはネタが終わってもずっといました……。芸人って大体、ウケたらいい気分になって楽屋に残っちゃうんですよ。だから、井口さんに「ウケたんですね?」って聞いたら「いやいや、スベったからいるんだよ」ってふてくされていて……怖いです。
──お笑いの賞レースは、いわば芸人さん同士の「勝負」でもありますが、芸人間でピリつくことはあまりないんでしょうか?
森本 芸人同士のバチバチ、そういえばあんまりないですね。内心多少はあるけど、みんながそこまで強く思わないのは「売れるきっかけが『M-1』だけじゃなくなった」っていうのが大きいと思うんですよね。もちろん、年に一度の大チャンスではあるんですけど、そのほかにもチャンスの種が増えてきてる分、リスクヘッジができるというか。『M-1』しかない初期の時代は、確かに結構バチバチなイメージがありましたね。今だと、準決勝まで行けばテレビで漫才ができるから、そこも一個ある気がする……。
自分が決勝に行けないくやしさはもちろんあるけど、それよりも仲間が世に出るっていうめでたさのほうが勝っちゃうのかもしれないです。自分も、メインバトルフィールドである『キングオブコント』で、同じ事務所の後輩であるザ・マミィが決勝に行って、自分たちは準決勝止まりだったけど、正直「くやしさ3.5:おめでとう6.5」の割合でした。
──今年、どちらの予選も経験した森本さんですが、2つの大会に出場して感じた違いを教えてください。
森本 『M-1』は、3回戦以降どん兵衛がもらえます(笑)。『キングオブコント』は、今回カーネクストさんがスポンサーで、準決勝から必勝祈願で2021円分のQUOカードがもらえました。
──だいぶ物理的な違いが(笑)。予選の舞台裏の雰囲気はどうですか?
森本 いろんな格好をした人がいる『キングオブコント』のほうが異様な雰囲気です。白塗りだったり、そもそもなんの格好をしているのかわからない人がいますからね。身ひとつで戦う『M-1』の方が、競技感があります。
『M-1』って、「ドラマ」だと思うんですよね。『キングオブコント』は“当日のコントの出来のみ!”みたいなところがあると思うんですけど、『M-1』はその人のバックボーンを理解した上で見るお客さんが多いと思うんですよね。「去年惜しくも準決勝で敗退したコンビが……!」っていうのがあったりすると、より応援したくなると言いますか。やっぱり漫才は「人(ヒト)」ですからね。仁(ニン)がにじみ出ると有利な気がします。
■決勝の舞台で「ヤッチマイナー!」
森本が公私ともに特に仲の良いコンビ、ランジャタイ・真空ジェシカ・ゆにばーすについて詳しく話を聞いた。
1:ランジャタイ
森本 今ネットとかで「ランジャタイはスベってもよし」みたいなことを言われてるじゃないですか。僕もその感覚があって、この前たまたまご一緒したぺこぱさんに「ランジャタイさんはどう転んでもいいですよね〜」って話をしたんです。そしたら松陰寺太勇さんに「僕たちも決勝が決まった時、周りからそう言われていた。でも今思うと、スベってたら今みたいになっていなかったと思う」と言われて。
それを聞いて、その時いた芸人5人くらいが全員ハッと我に返って「あ、確かに。スベんないほうがいいのか」って(笑)。ウケを取るのに越したことはないから「スベってもいいよ」じゃなくて「ウケてほしいな」って、ちゃんとした感覚に戻りました。今、全員麻痺(まひ)してるんですけど、実はお笑いの大会って、ウケたほうがいいみたいです(真剣)。
──(笑)。
森本 太字にしておいてください。「お笑いの大会って、ウケたほうがいい」。うっすいインタビューなんだろうなってバレますね(笑)。国崎(和也)さん本人も決勝でスベること目標にしているんですけど、ダメですよ(笑)。ウケなさい。「スベったわ〜」ってニヤニヤ話す姿も想像できますけど、いち友達、いちファンとしては、やっぱり爆ウケしてほしい。
2:真空ジェシカ
森本 真空ジェシカは大学からの仲です。世間的に、芸風だけを見ると違って見えるかもしれないけど、根は本当に心やさしい青年。川北(茂澄)とか、平場で小道具使ってなんかやるのかなぁ? 隙あらばやってほしいですけど、まずはネタに集中を(笑)。なんか……歳とったなって思いますね。昔なら「いろいろやっちゃえよ!」って言ってたかもしれないけど、もう全員大人ですからね(笑)。3回戦で川北がネタを飛ばしちゃったけど、逆に言うと、「飛ばし」は3回戦で終えたから、決勝は大丈夫だと信じています。
3:ゆにばーす
ゆにばーすさんの何がすごいって、彼らが決勝に行っても、誰も驚かないことですよね。優勝を目標にしていることを皆が知ってるから、周りも含めて全員次のステップを向いてる。
川瀬名人は、誰よりも純粋なんだろうなと思います。「皆、話せばわかってくれる」と思っている人なんです。ツイッターでアンチに立ち向かうのも、人と向き合おうとしてることの表れなのかな。目を背けない性格で、主人公みたいな人だなって思います。
まわりの芸人が借金で困っているときに、まとまった額を貸したりもしてたんですよ。でも、それを自分で美談にしたりしないで、周りに聞かれてサラッと話したり。僕はずっと、あったかい人だと思っています。世間が思ってるかもしれない感じとは、まったく違うんです。
今年の『M-1』ファイナリストは、仁のある人が多いです。ランジャタイさん、真空ジェシカなんかは、東京以外では見たことがない人がまだまだたくさんいると思うので、これから日本全国にみなさんの面白さが知れ渡ると思うと「ヤッチマイナー!」と、キル・ビルのルーシーリューみたいな気持ちになってしまいますね。
(取材・文 佐々木笑)
◆2022年1月7日、トンツカタンの新ネタライブ「新年のトンツカタン」が開催される。年末年始を返上し制作する新ネタを存分に楽しむことができる本ライブ。現在、劇場チケット、配信チケット共に販売中(http://www.p-jinriki.com/sp/news/2021/12/005621.php)
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2021/12/18
