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映画『HOKUSAI』美術スタッフならではのイチ推し見どころ解説

 九十年の生涯で描いた作品三万点以上。江戸時代に活躍した天才絵師・葛飾北斎の人生を題材にした映画『HOKUSAI』(公開中)を監督した橋本一、美術監督の相馬直樹、浮世絵指導の向井大祐氏と松原亜実氏らスタッフが出席したオンライントークイベントが開催された。そこで語られた、葛飾北斎に挑んだ美術スタッフならではの見どころシーンとエピソードを紹介する。

映画『HOKUSAI』(公開中)(C)2020 HOKUSAI MOVIE

映画『HOKUSAI』(公開中)(C)2020 HOKUSAI MOVIE

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 同イベントのホストは、日本文化の入り口マガジン「和樂web」、そして葛飾北斎に特化したポータルサイト「HOKUSAI PORTAL」の編集長を努めるセバスチャン高木氏が務めた。

■メモリアルな重要シーン:北斎が蔦屋重三郎に認めてもらう場面

 北斎が歌麿と写楽という2人の絵師の才能に打ち負かされ、阿部寛演じる版元の蔦屋重三郎に自らの絵を否定され、絵を描くことの本質を捉えきれないままもがき苦しみ生死を彷徨ったのちに自分らしさを見出し、重三郎に自分の絵を見せに行き、ついに認められるシーン。これはなんと、ちょうど丸2年前の2019年6月10日に撮影されたシーンで、蔦屋の店に並ぶ浮世絵は、実際に本当に刷られた浮世絵を使ったもの(アダチ版画提供)だと浮世絵指導の松原氏が明かした。

■浮世絵指導の松原氏イチ推し:写楽の役者絵「鬼次」のシーン

 蔦屋重三郎(阿部)のもとに、独特なスタイルで描かれた役者絵が。それを見た蔦屋の表情が一瞬にして変わり、「誰の絵だ?」と飛びつくと、「写楽」という名前が出てくる。その後、重三郎は写楽を招待し、実際に絵を描かせる一連のシーン。松原氏は、「写楽の版画はあまり残ってはいませんが、日本人が浮世絵師と言われて出てくるのは、その絵がとてもインパクトが強いからです。制作風景はこんな感じだったんじゃないかなと思い浮かべながら指導していきました」と明かす。本編映像では、写楽を演じる浦上晟周の絵を描くときの、まるで写楽の絵の中の役者のような目力の強さも収められており、印象的なワンシーンとなっている。

■浮世絵指導の向井氏イチ推し:若北斎と老北斎が描く怒涛図(男浪女浪)のシーン

 青年期の北斎(柳楽優弥)と、老年期の北斎(田中泯)が、肉筆画「怒濤図」の「男浪」「女浪」を描くシーン。浮世絵指導にあたった向井氏は「下絵を描く制作工程から描かれていて映画を観た人、観ていない人でも楽しめると思います」と太鼓判を押すシーンで「浮世絵には版画と肉筆画があります。版画も素晴らしいですが肉筆画も登場するのでそこも注目して観て欲しいです。また、実際に日本画はこのような所作で書くのか。今の日本画とは違う描き方をしているのもポイント」と教えてくれた。

■美術監督の相馬さんイチ推し:歌麿と蔦重の部屋のシーン

 まだ“葛飾北斎”という名を持たず勝川春朗という名で絵師をしていた北斎(柳楽)が、江戸中に名を馳せた美人画の大家・喜多川歌麿(玉木宏)と初対面を果たしたシーン。数々の名絵師を世に送り出した希代の版元、蔦屋重三郎(阿部)を尋ね吉原遊郭へ向かうと、遊郭一の花魁・麻雪(芋生悠)を描く喜多川歌麿の姿が。

 「上手い魚があるぜ、お前さんも食っていけや!」と迎え入れる歌麿に、北斎は「贅沢な物は口に合わん」と反発すると、「まるで坊さんみてえな野郎だな!だから女に色気がねえんだよ」と歌麿に切り捨てられてしまい、北斎のプライドはズタズタにされてしまう。

 美人画で有名な歌麿の遊郭の部屋は大人の色気漂う空間で、色合いは日本ではない異国を思わる。実は、ピンクの壁はなんと、相馬氏が本作の撮影に入る前に訪れたチェコとスウェーデンで入ったカフェの壁の色にインスピレーションを受けて決めたそう。また、本シーンで玉木演じる歌麿が遊女に鏡を持たせるシーンは監督が「歌麿の切り札となる絵は鏡が使われているのでここぞという時に鏡を使って見せつけたかった」というこだわりのシーンでもあるとのことだ。

■橋本監督のイチ推し:才能あふれる絵師たちが全員集合する蔦屋主催の宴会シーン

 北斎、歌麿、写楽らが重三郎が催した遊郭での宴会で一堂に会するシーン。歌麿は写楽の絵を褒めるが、北斎は自分よりも年下の写楽に絵師として追い越されてしまったことでプライドを傷つけられ宴会を後にする場面。監督は人数が多く暑い夏に撮ったので撮影が大変だったと振り返った。衣装も着こんでいるので大変だったそうで、演者の衣装はキャラクターのイメージ設定をして反物から作ったと明かしている。

 映像内で収められている柳楽演じる北斎が、写楽に腹を立てて今にも取っ組み合いの喧嘩をするのではないかとハラハラするシーンについて、「柳楽さんがノリノリで怒りを爆発してくれた。障子も外れてしまい、うまく辻本君がキャッチしてくれたおかげで完璧なシーンになった」と語り、ハプニングがありながらも1発でOKとなった奇跡のシーンだったという。


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