俳優の古田新太が、緊急事態宣言解除後、初となる観客を入れた舞台『PRE AFTER CORONA SHOW』の公開ゲネプロを11日に行う。いまだ新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、安全面を徹底的に考慮したゲネプロには、どんな思惑があったのだろうか――。話を聞いていると古田なりの危機感と反骨心が見えてきた。
現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』(月〜土 前8:00 総合ほか)の廿日市誉役をはじめ、7月19日からいよいよ放送がスタートするTBS系日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜 後9:00)の三笠洋一郎役など、テレビドラマや映画でも出演作が続く古田だが、一方で『劇団☆新感線』の看板役者として演劇界に数々の伝説を残してきた舞台俳優であり、自身も「一生演劇をやっていればいいやという考え方からスタートしている」と舞台への思い入れは強い。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で演劇界が大きなピンチに陥っている。6月から公演が予定されていた自身の舞台『欲望のみ』は全て中止。3密を避けるために、劇場にはお客さんを入れられず、舞台上でもソーシャルディスタンスが求められる。そのため、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と古田がタッグを組んだ舞台『PRE AFTER CORONA SHOW』(12日配信開始)は“新しい生活様式”を逆手にとった内容、そして『PIA LIVE STREAM』にてライブ配信という形をとっている。
古田は「本来、演劇はお客さんが前にいてやるもの。しかもオイラたちがやっている演劇は“面白”なので、お客さんの反応を見ながらやるお芝居。劇場にお客さんがいなければやる意味がないんです」と言い切る。続けて「今は音楽ライブも配信していますが、それは疑似体験にはなっても体験にはならない。部屋で観るとのと劇場で観るのではまったく違うものなんです」と定義づける。
それでも「なにかしらの可能性は見出したいという思いはあります」と語った古田。そんななか、ゲネプロを一般のお客に公開するというのは苦肉の策だという。「ゲネプロというのは、テクニカルな部分の確認ためにやるものであり、オイラたちのような“面白”演劇をやっている人間にとって、内容を知っている関係者に見せるのは辛い以外のなにものでもないんです。本来、お客さんに見せるものではないのですが、少しでも反応が分かれば、舞台をやっていると感じられるかも」と思いを吐露する。
舞台の内容も攻めている。劇場でのリーディングアクト『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』では、動きはありつつも、俳優同士が常に距離を保ちながら進行する。「芝居でも、ソーシャルディスタンスと言って、2メートル以上近づいてはいけないと言われている。ある意味でバカバカしいですよね。マスクとフェイスシールドを付けてどうやって表現するんだって……。そんな馬鹿げていることを逆手にとっている内容でもあります」と語った。
■儲けは求めないが「やればやるだけ赤字はキツイ」
俳優にとって、新しい生活様式のもと芝居をすることは困難を極めるという。すでにドラマの撮影も再開されているというが「リハーサルまでマスクとフェイスシールドをしています。正直、相手の表情は分からない。どうやっていろいろな感情を表現するんだ……難しいですよね。ラブシーンだってできないし」と苦笑い。
さらに「お客さんに観てもらうために作り手は一生懸命やっている。映画なら映画館に、演劇なら劇場に入り切れないぐらいの人が来てくれることを想像するから、やりがいもあるのに、お客さんを入れられないというのはあまりにも寂しい」と本音を吐露。「そもそもオイラは『一生演劇をやっていられたらいいや』みたいな気持ちで、売れたいとか儲けたいとか頭になかった人間。それでも、やればやるだけ赤字になると分かっているのはキツイ。絶対優勝できない『鳥人間コンテスト』みたいなもんですよね」と自嘲気味に笑う。
そんな状況にも関わらず表現活動を続けているのは、やりたいことがあるから。「オイラって下品なことを言って挑発して、お客さんがゲラゲラ笑うようなものを作りたくてこの業界に入ってきた人間。それが自粛や新しい生活様式などで、行儀よくしなくてはならなくなってしまったことは複雑な思いです」と明かす。「本当ならマスクも外してフェイスシールドも叩き割りたい。でもそれが今はできないので、ギリギリのところをいこうと思っています。今の状態を『普通だとは思わないでね』ということは言いたい。すぐに元通りにはならないと思いますが、少なくても『コロナと共存したかねーよ』とは発信したいです」。
お客さんを入れず、舞台上で距離をとって表現し、配信でファンに届ける――。しかしその内容は、現状を茶化し、シニカルに満ちあふれている……。「KERAも古田も50代半ばになっても、まだまだふざける気があるんだなと思ってもらえたら、観てほしいです。でも怒るかもしれない人は観ないでください」と語った古田。
現状、新型コロナウイルスへのワクチンや特効薬がない以上、厳しい状況は続いていくことが想像される。「演劇の火を消してはいけないという使命感で、やりたくないことをやらなければいけないというのは本意ではない」と前置きしつつも「ガキのころ、ライブハウスや映画館、劇場で作品を観て、『自分もやってみたいな』と始めるのが普通じゃないですか。そういう機会が減ってしまうのは非常に残念だし、特に下北沢なんて場所は劇場がいっぱいあって、安く借りられる。そういう文化の火は消しちゃいけないなとは思います」と胸の内を明かしてくれた。
取材・文:磯部正和
現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』(月〜土 前8:00 総合ほか)の廿日市誉役をはじめ、7月19日からいよいよ放送がスタートするTBS系日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜 後9:00)の三笠洋一郎役など、テレビドラマや映画でも出演作が続く古田だが、一方で『劇団☆新感線』の看板役者として演劇界に数々の伝説を残してきた舞台俳優であり、自身も「一生演劇をやっていればいいやという考え方からスタートしている」と舞台への思い入れは強い。
古田は「本来、演劇はお客さんが前にいてやるもの。しかもオイラたちがやっている演劇は“面白”なので、お客さんの反応を見ながらやるお芝居。劇場にお客さんがいなければやる意味がないんです」と言い切る。続けて「今は音楽ライブも配信していますが、それは疑似体験にはなっても体験にはならない。部屋で観るとのと劇場で観るのではまったく違うものなんです」と定義づける。
それでも「なにかしらの可能性は見出したいという思いはあります」と語った古田。そんななか、ゲネプロを一般のお客に公開するというのは苦肉の策だという。「ゲネプロというのは、テクニカルな部分の確認ためにやるものであり、オイラたちのような“面白”演劇をやっている人間にとって、内容を知っている関係者に見せるのは辛い以外のなにものでもないんです。本来、お客さんに見せるものではないのですが、少しでも反応が分かれば、舞台をやっていると感じられるかも」と思いを吐露する。
舞台の内容も攻めている。劇場でのリーディングアクト『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』では、動きはありつつも、俳優同士が常に距離を保ちながら進行する。「芝居でも、ソーシャルディスタンスと言って、2メートル以上近づいてはいけないと言われている。ある意味でバカバカしいですよね。マスクとフェイスシールドを付けてどうやって表現するんだって……。そんな馬鹿げていることを逆手にとっている内容でもあります」と語った。
■儲けは求めないが「やればやるだけ赤字はキツイ」
俳優にとって、新しい生活様式のもと芝居をすることは困難を極めるという。すでにドラマの撮影も再開されているというが「リハーサルまでマスクとフェイスシールドをしています。正直、相手の表情は分からない。どうやっていろいろな感情を表現するんだ……難しいですよね。ラブシーンだってできないし」と苦笑い。
さらに「お客さんに観てもらうために作り手は一生懸命やっている。映画なら映画館に、演劇なら劇場に入り切れないぐらいの人が来てくれることを想像するから、やりがいもあるのに、お客さんを入れられないというのはあまりにも寂しい」と本音を吐露。「そもそもオイラは『一生演劇をやっていられたらいいや』みたいな気持ちで、売れたいとか儲けたいとか頭になかった人間。それでも、やればやるだけ赤字になると分かっているのはキツイ。絶対優勝できない『鳥人間コンテスト』みたいなもんですよね」と自嘲気味に笑う。
そんな状況にも関わらず表現活動を続けているのは、やりたいことがあるから。「オイラって下品なことを言って挑発して、お客さんがゲラゲラ笑うようなものを作りたくてこの業界に入ってきた人間。それが自粛や新しい生活様式などで、行儀よくしなくてはならなくなってしまったことは複雑な思いです」と明かす。「本当ならマスクも外してフェイスシールドも叩き割りたい。でもそれが今はできないので、ギリギリのところをいこうと思っています。今の状態を『普通だとは思わないでね』ということは言いたい。すぐに元通りにはならないと思いますが、少なくても『コロナと共存したかねーよ』とは発信したいです」。
お客さんを入れず、舞台上で距離をとって表現し、配信でファンに届ける――。しかしその内容は、現状を茶化し、シニカルに満ちあふれている……。「KERAも古田も50代半ばになっても、まだまだふざける気があるんだなと思ってもらえたら、観てほしいです。でも怒るかもしれない人は観ないでください」と語った古田。
現状、新型コロナウイルスへのワクチンや特効薬がない以上、厳しい状況は続いていくことが想像される。「演劇の火を消してはいけないという使命感で、やりたくないことをやらなければいけないというのは本意ではない」と前置きしつつも「ガキのころ、ライブハウスや映画館、劇場で作品を観て、『自分もやってみたいな』と始めるのが普通じゃないですか。そういう機会が減ってしまうのは非常に残念だし、特に下北沢なんて場所は劇場がいっぱいあって、安く借りられる。そういう文化の火は消しちゃいけないなとは思います」と胸の内を明かしてくれた。
取材・文:磯部正和
2020/07/10