ドラマ&映画 カテゴリ
オリコンニュース

深田晃司監督、海外との合作映画の持つメリットと日本映画の可能性

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第13回 深田晃司監督
 2016年に公開された『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞受賞をはじめ、『ほとりの朔子』(2013年)はフランスのナント三大陸映画祭でグランプリを受賞するなど、その作家性は国内にとどまらず海外でも高い評価を受けている深田晃司監督。最新作『よこがお』(7月26日公開)では、実力派女優として唯一無二の存在感を示す筒井真理子とタッグを組み、ひとりの善良な女性の絶望と希望を描いたヒューマンサスペンスを誕生させた。本作は日仏の合作映画という形態をとっているが、こうして海外と映画を共同で作ることのメリットはどこにあるのだろうか――。

深田晃司監督 (C)ORICON NewS inc.

深田晃司監督 (C)ORICON NewS inc.

写真ページを見る

■筒井真理子という稀代の女優

 深田監督の最新作は、『淵に立つ』でもタッグを組んだ筒井を主演に迎え、一人の善良な市民が、ある事件をきっかけに「無実の加害者」として、転落していくさまを描く。そこには、現代社会における悪意や不条理が色濃く描かれると同時に、人間の強さやたくましさといった前に進む“希望”も内在している。

 「『淵に立つ』のときご一緒した筒井さんで映画を作りたいというのが企画の始まりでした。そこからシナリオを考えていったのですが、筒井さんが演じるのだからということで、かなり難易度も高く設定できる。シノプシスの段階で筒井さんにも読んでいただき、感想を聞きながらストーリーを構築していきました」。

 筒井が演じるのは、市子という訪問看護師の女性。温厚で優しく面倒見が良く誰からも愛される女性だったが、ある事件をきっかけに、その日常は大きく崩れていく。そこから“自由奔放”なリサという別人格として“復讐”に身を投じていく。

 「書くのは簡単ですが、演じるにはレイヤーも厚く、相当ハードルの高い役。でも『筒井さんならば』ということで、どんどんイマジネーションが膨らんでいきました。実際、経験値はもちろん、センスも素晴らしい女優さん。さらに役に取り組む姿勢も、本当に頭が下がる方で、天才であり努力もすごい」と賞賛の言葉は尽きない。

■海外との合作映画がもたらすもの

 本作は深田監督の完全オリジナル脚本だ。現在の日本映画界において、オリジナルストーリーで映画を製作するのは、なかなか難しい。そこで深田監督は、海外との合作という手法で活路を見いだしているという。

 「正直、オリジナル作品を企画し、商業映画に乗せるのは容易ではありません。でも海外からの出資を入れることによって、作家性の強いオリジナル作品も資金的な面で作りやすくなるという側面があります。僕の作品は、分かりやすいエンタメではないので、製作委員会を組んだとしても、資本規模は大きくありません。予算が少なければそれだけ作り手の自由が少なくなる。予算を膨らませるという意味では海外との合作というのは効果的なんです」。

 予算的な面以外に、作品の質という部分でも、合作映画は良い影響をもたらすことは多いという。

 「自分たちと違う文化圏で育ったスタッフやアーティストたちの意見というのは、作品を豊かにすることが往々にしてあります」と経験談を述べる。特にフランスとの合作で深田監督は日本とは大きな違いに気づいた。

 「フランスのスタッフの考え方は、まずなによりもクオリティ重視なんです。すべてではありませんが、日本では企画段階『キャストは誰か?』や『予算はどのぐらい?』という採算ベースに重点を置いた話が前面にでます。でもフランスではまず最初にはそういう話はでてこない。脚本に対する感想や、監督がどういう思いで作品を作っているのかという話がメイン。クリエイティブに向き合う姿勢がまったく違います」。

■クールジャパン政策とは言われているが……

 さらに、国としての映画文化への取り組み方も海外は日本を圧倒するという。日本では文化庁が映画のためにねん出している予算は約20億円、クールジャパン政策として経産省と総務省が計上している資金は、ゲームやテレビアニメ、音楽など、すべてを合わせて150億円程度だ。

「数字だけみれば日本も力を入れていると思われるかもしれませんが、フランスの映画文化のための独立行政法人である国立映画センター(CNC)は年間で約800億円、韓国の映画振興委員会(KOFIC)は年間400億円という数字です。映画文化に対する考え方は全然違うんです」。

 また、日本では海外との合作映画は、まだまだ珍しいことだというが、ヨーロッパなどでは、合作はスタンダードだという。「ジャンル映画ではなく、作家性の強い映画の場合、合作というのはほぼ自然の流れであり、合作じゃない作品を探す方が難しいんです」。

 合作映画のメリットは非常に多いことがわかるが、デメリットはないのだろうか――。

 「もちろん、クリエイティブの面で言えば、言葉の壁はあります。日本の技術者は優秀で、監督のやりたいことをどうやって実現すればいいのか、考えてくれる。しかし、海外では、監督の思いを実現するというよりは、スタッフが自身の考えをぶつけてくることが多い。こちらの意図と合わないこともあります。ただ、10のうち7合わなくてもて、2〜3は面白いアイデアが含まれている。効率は必ずしも良くはないですが、作品を豊かにしてくれることはあります」。

■これからの日本映画界のために

 深田監督は「自分がやっていることは特殊ではない」と断言する。日本では、監督が作家性の強い作品を作るためには、自主映画として自らお金を出して、作ることがスタンダードになっているという。

 しかし「いかにお金を集めながら、自分の作りたい作品を作るかが重要」だと力説する。「僕は平田オリザさんが主宰する『劇団青年団』の演出部にいるのですが、平田さんは『お金のことを考えられなければ、芸術家なんてできない』と話しています。まさにそうだと思います。日本の映画学校では、アートマネージメントということをあまり教えないんです」と問題点を指摘する。

 深田監督自身も、企画を翻訳し、海外にマーケットに出すことで、長い時間をかけてお金を集めていくことを実践しているという。

■主体性のある俳優は、作品をかさ上げしてくれる

 自らの描きたいものを、さまざまな方法で純度高く表現する――。だからこそ深田監督の作品は、多くの人の心を揺さぶるのだろう。そんな深田監督にとって、好きな俳優はどんなタイプの人なのだろうか。

 「主体的な俳優さんです。監督の言う通りにやるだけの俳優さんは物足りない。俳優も一人のアーティストだと思っているので、脚本を読んでどう演じたら面白くなるのだろうと、考えてアウトプットしてくれる人が好きです。そういう人とご一緒できれば、自分の小さな才能をかさ上げしてくれます。古舘寛治さんなどは主体性の塊のような人。とても頼もしいです」。

 最後に、深田監督に『よこがお』の次にどの作品を観ると「より深田監督のことを知ることができるのか」と投げかけると「『東京人間喜劇』と言いたいところですが、ソフト化すらされていないので……。『歓待』は僕のなかで最もコメディ寄りなのですが、こちらもレンタルされていないんです……。いますぐに観られるという意味では『ほとりの朔子』はどうでしょうか。『よこがお』とは違ったカラーの作品なので……。二階堂ふみさんの演技にも注目してほしいです」と語ってくれた。(取材・文・撮影:磯部正和)
オリコンニュースを優先ソースに追加してGoogle検索に頻繁に表示させよう

オリコントピックス

求人特集

求人検索

  • オリコンニュースを優先ソースに追加してGoogle検索に頻繁に表示させよう

メニューを閉じる

 を検索