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ミュージシャンでコミックライター、ジェラルド・ウェイの多才ぶり

 15日よりNetflixで世界同時配信が開始されたオリジナルルシリーズ『アンブレラ・アカデミー』(全10話)。原作は、日本武道館でライブを実施した経験を持ち、2013年3月、惜しまれながらも解散した米ロックバンド「マイ・ケミカル・ロマンス」のボーカリスト、ジェラルド・ウェイが手掛けた同名コミックだ(作画はガブリエル・バー)。マイケミの頃とは見た目は変わったが、自身の才能の豊かさをどんどん引き出している。

Netflixオリジナルシリーズ『アンブレラ・アカデミー』(配信中)原作者のジェラルド・ウェイ(元マイ・ケミカル・ロマンスのボーカル)(C)Getty Images

Netflixオリジナルシリーズ『アンブレラ・アカデミー』(配信中)原作者のジェラルド・ウェイ(元マイ・ケミカル・ロマンスのボーカル)(C)Getty Images

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 ジェラルド、レイ・トロ(G)、マイキー・ウェイ(B)、フランク・レロ(G)、ボブ・ブライアー(Dr)ら、マイ・ケミカル・ロマンスのメンバーは、全員ニュージャージー出身。02年に地元でインディーズデビューし、04年7月に、アルバム『スウィート・リベンジ』でメジャーデビューを果たすと、いきなりブレイクし、全米で100万枚を突破するプラチナディスクを獲得した。同年8月には、『SUMMER SONIC 2004』に出演するため、初来日している。

 実は、マイケミを結成する前、ジェラルドは、ニューヨークでアニメーターとして働いていた。子どもの頃からコミックの脚本や絵を描き、アート全般に興味を持つようになった彼は、ニューヨークのスクール・オブ・ヴィジュアル・アーツで学んだ。そして、01年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が起きた際、崩壊する世界貿易センタービルを目の当たりにしたという。それをきっかけに悔いのない人生を送るべきだと考え、音楽活動を始めることを決意した、という話だ。

 それからわずか3年で、プラチナディスクという大成功を収めたジェラルドだったが、あまりの状況の変化についていけなかったのか、薬物やアルコール依存に苦しむことになる。薬物とアルコールをやめるため、更生施設には行かず、自ら生活習慣の改善に取り組んだジェラルドは、そこで再び、絵を描き始める。誰に見せるためのものでもなく、一種のセラピーのように。「そのうち、スケッチブックはいっぱいになってきた」とジェラルドは後述している。

 見事、薬物・アルコール依存を克服して、06年8月、『SUMMER SONIC 2006』に出演するため、再来日も実現した。同年10月にアルバム『ザ・ブラックパ・パレード』をリリースし、プラチナ認定される大ヒットを飛ばしている。

 その『ザ・ブラックパ・パレード』を録音している頃から、コミックを出すことを考え始め、アルバムリリース直後の06年12月には、『アンブレラ・アカデミー』の執筆に取り掛かっていた。「バットマン」などのアメコミ作家として知られるグラント・モリソンも、06年の終わり頃、ジェラルドからコミックの構想を聞いたことを明かしている。

 そして、ツアーで世界中を周りながら、執筆を続けることになる。07年1月に東名阪で来日公演した時も、同5月に再来日して武道館公演を行った時も、密かにコミックの出版準備を進めていたなんて。

 『アンブレラ・アカデミー』<組曲「黙示録」>の第1章は、07年9月19日に全米でマーベル・コミック、DCコミックスと肩を並べる出版社、ダークホースコミックスから出版された。ジェラルドは、08年6月、<組曲「黙示録」>全6章をまとめた単行本のあとがきを次のように締めくくっている。

 「インタビューでは毎回、ロックスターがどうやってコミックを作るんだと質問された。そして、予想はひとつ残らず、サイアクの場合は超駄作で、並程度なら上場だろうというものだった。いったい、どんなものを期待していたんだろう? 対して期待なんかしていなかったんだと思う。実際、失敗すりゃいいと思ってたんじゃないか。だけどぼくたちは失敗するわけがないとわかっていた」(出典:コミック『アンブレラ・アカデミー』日本語版イントロダクション/小学館集英社プロダクション)。

 事実、個性的なキャラクターたちが繰り広げる人間模様とバトルアクション、誰も予想ができないストーリーで、通常のヒーローものとは一味違う複雑な展開により、アメコミファンはもちろん、批評家からも絶賛され、米コミック界で権威のあるアイズナー賞も受賞した。

 Netflixが映像化に乗り出したことで、コミックライターとしてのジェラルド・ウェイの名声はさらに上がった。ドラマの出来も秀逸。コミックの設定をベースにしつつ、親・兄弟姉妹の確執、自分は何者なのか、という普遍的なテーマをより掘り下げながら、異能バトルを繰り広げ、地球の危機に立ち向かっていく、というエンターテインメント作品に仕上がっている。

 ドラマ版では、1989年、世界中で妊娠していない43人の女性が同日同時刻に突然出産するという事件が発生。億万長者の実業家であるレジナルド・ハーグリーヴズ卿が、特殊な能力を持つ7人の子どもを養子として引き取り、世界を救うスーパーヒーローに育てる“アンブレラ・アカデミー”を創設する。しかし計画通りには進まず、子どもたちが育ち、ティーンエイジャーになると家族は散り散りになり、アンブレラ・アカデミーは解散。さらに時は経ち、ある日父は謎の死を遂げてしまう。父の死を弔うため、大人に成長した兄弟姉妹は嫌々ながらも再集結、特殊能力により地球が8日後に滅亡することを知った彼らは、人類を救うため、そして父の死に隠された謎を解明しようと立ち上がることになる…。

 音楽活動も続けているジェラルドは、今月、タートルズの1967年発表の名曲「Happy Together」のカバーとなる同名シングルをリリース。この曲はドラマ『アンブレラ・アカデミー』第5話で印象的に使われている。

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  • Netflixオリジナルシリーズ『アンブレラ・アカデミー』(配信中)原作者のジェラルド・ウェイ(元マイ・ケミカル・ロマンスのボーカル)(C)Getty Images
  • Netflixオリジナルシリーズ『アンブレラ・アカデミー』(配信中)原作コミック(日本語版/小学館集英社プロダクション) (C)ORICON NewS inc.
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