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hide没後20年、“半身”I.N.A.が語るミュージシャンとしての凄み 「hideみたいな未来人が音楽を進化させていく」

 1998年5月、X JAPANのギタリストHIDEであり、ソロアーティストhideさんが亡くなって今年で20年が経つ。今年は没後20年として、hideさん関連の書籍やドキュメンタリー映画が公開されるなど再注目されている。hide with Spread Beaverのメンバーで、その結成以前からhideさんの共同プロデューサーとして“半身”ともいえる存在だったI.N.A.に、hideさんとの音楽制作の日々や、20年経ってなおファンを拡大しているミュージシャンとしての真の姿を語ってもらった。

◆I.N.A. (hide with Spread Beaver)
Hideさんの共同プロデューサー&プログラマー。X JAPAN のサポートメンバーとして、日本のロック界を裏側から支えてきた音楽プロデューサー。

■これまで語られなかった“音楽と向き合うhide”のことを書きたかった

――hideさんが亡くなられて20年。hideさんのことを度々語ってきたI.N.A.さんが、この度『君のいない世界〜hideと過ごした2486日間の軌跡〜』の執筆に踏み切ったきっかけは?
【I.N.A.】昔、オフィシャルのサイトで「hide with I.N.A.」というタイトルで1998年にレコーディングした時の日記を公開していたんです。20年近く解放されていて、今も見に来てくれる人がいるのですが、そのブログをヤマハさんから本にしませんかとお話をいただきました。ですが、すでに20年解放しているものを本にするのはどうなんだろうと思い、自分で新しくhideとの音楽制作の話を書くことにしました。過去のhideのインタビューでは「アルバムができました」「こういう曲です」「酒飲んで暴れた」というような記事はわりとよくあったのですが、意外にも音楽制作に関わる話はなかった。そこで今回は、音楽と向き合っているhideの話を書きたかったんです。

■現代の3DCG技術を予見していたかのような先見性

――hideさんは、当時PCの音楽ソフトですら発達していなかった時代から「俺はいずれCGアーティストになって、hideをプロデュースしていく」と言っていたそうですね。
【I.N.A.】本を書いていて、彼のアイデアとか、先を見る目がすごかったと改めて思いました。僕がレコーディング中にフォトショップで写真を加工して遊んでいたんですが、それを発展させたことを当時から考えていたんでしょうね。それを、動画、立体でやろうとしていた先見性がすごいですよね。

――作曲、演奏、レコーディング、ライブ、カリスマ性、色々な要素がありますが、共同プロデューサーであるI.N.A.さんはミュージシャンとしてのhideさんをどのように見ていましたか?
【I.N.A.】素の松本秀人とミュージシャンのhideが分かれていた。“hideを表現する力、演出する力”に長けていましたね。彼を撮っていたフォトグラファーの方も「一流のモデルが備えているものを彼(hide)は持っている」といっていました。

――近くにいてhideさんが悩んだり、壁に当たったりしたような場面はありましたでしょうか。
【I.N.A.】壁に当たって悩むという感じではなかったですね。新しいことをどんどん取り入れていくことがすごい好きでした。“ビジュアル系”を作ったのがhideで、それを勝手に覆してしまったのもこの人。ビジュアル系が浸透して、みんな黒ずくめになったら、自分はカラフルなジャージを着てみたり…。hide本人がよく「俺はサメと一緒で、止まったら死んじゃう」と言っていました。悩むよりは、まず音を出してみようというタイプ。彼はアーティストである前にギターキッズだったと思います。バンドは4人5人集まらないと音楽にならない。hideの根底にあるものはやっぱりギターキッズでありバンドマンでした。ソロで活動しているのにhide with Spread Beaverというバンドを作っちゃった。やっぱりバンド活動をしたかったんだと思います。

■楽曲自体は“普遍的なもの”、それを時代に合わせて洋服のようにアレンジしていく

――没後20年にして、今年もたくさんのプロジェクトが立ち上がっています。hideさんが長く愛される理由はどこにあるのでしょうか。
【I.N.A.】色々実験を重ねていく中で、オリジナルのhideサウンドを作っていました。言葉にすると簡単ですが、流行のサウンドはみんな真似して(されて)広まっていくものです。hideの場合は流行とは違うベクトルで新しいものを作っていた。研究を重ねて自分だけのオリジナルサウンドに仕上げていたんです。

――例えば、著書にも描かれていたようにドラムの音色を鉄パイプなどで1音1音サンプリング合成したり、グルーブ感と無機質を融合したサイボーグロックであったり、従来の概念を覆す創造性の部分でしょうか
【I.N.A.】そうですね。とにかく創作の努力を惜しまない。当時は、コンピューター(音楽ソフト)でできないことのほうが多かった時代なんです。“こういうことがやりたい”と思っても、やり方がないんです。それを、どうにかしてやれる方法を探してみよう、って。そんな風に手作業でやってたことで“発想が優先していた”ことも大きかったと思います。hideが初期衝動を吐き出して、僕が形にする、というところから多くが始まっています。

――hideさんの楽曲は20年以上たった今も色褪せないクオリティーということもよく言われていますね。
【I.N.A.】とにかく新しいものが好きだし、音楽もファッションも新しいものを自分の中に取り入れてhideというフィルターを通して昇華させていった。「俺のものにしちゃえ」ってね。何かの要素を取り入れた時は得てして「これって〇〇っぽいね」と言われたりするものですが、hideのフィルターを通すとキャッチーになるんですよね。hideがよく言っていたのが、楽曲自体は“普遍的なもの”で、アレンジは洋服みたいに時代に合わせて変えていけばいい。自分の曲を色々なパターンで作っていく。場所と時代に合わせて服を1枚羽織るみたいな感覚を音楽にも使っていました。セルフカバー楽曲もたくさんありますが、それはhideの想いでもありますね。

■hideみたいなアーティストが音楽を進化させていく

――共同プロデューサーであるI.N.A.さんは、hideさんの“継ぐべき遺志”というものはありますか。
【I.N.A.】hideファンの人達に彼の音楽を届けて行きたい気持ちはもちろんあります。ですが、“遺志を継ぐ”気持ちにかられたことは一度もないです。僕はやっぱりこの人(hide)と音楽をやっているのがただ楽しかったんです。ライフワークじゃないですけれど、「子 ギャル」(※過去膨大なhideの音声データを基に、ヤマハの歌声生成ソフト「ボーカロイド」で生成した音声トラックをI.N.A.が肉付けして完成したシングル楽曲)を作った2014年頃、ふと、「多分俺はずっとhideのこと(音楽)をやって行くんだろうな」と思いました。

――「ただ楽しかった」…hideさんはクリエイターを刺激する存在だったんですね。
【I.N.A.】本当にその通りだと思います。周りのスタッフに対して、立場に関わらず面白いアイデアがあったら話してくれというスタンスでした。彼のために何かをやってあげたくなる、人を動かすプロデュース能力も長けていたと思います。実際に、亡くなった後にもいろいろなhideのプロジェクトが立ち上がっています。昨年もhideの3Dホログラフィックライブをやりましたが、ああいうのは全部hideの身内が考えたことではなくて、外部の方から「hideさんでこういうことをやってみたい」という話が来るんです。hideという素材で何か新しいことをやりたくなる、そういう存在かもしれません。

――まさに、hideさんが生前語られていた、「CGアーティストhide」としての3Dホログラフィックライブでしたね。
【I.N.A.】「子 ギャル」の CDもまさにそうじゃないですか。hideは発想が未来的で、彼が言っていたことが現実になっていくんです。“こういうことやりたい”とhideに言われて、当時はやり方が見つからず、アナログな手法でやってみるんですが、後に音楽ソフトで簡単にできるようになったり…。一緒に活動する中で何度もそういうことがあった。hideみたいな人が音楽を”進化”させていくのでしょう。

――hideさんの音楽を、今後もI.N.A.さんが手掛けていくのでしょうか?
【I.N.A.】そんな話があればその時考えますが、その際は、きっと僕がやることになるんでしょうね(笑)。X JAPANもhideもファンの年齢が幅広い。50代・60代のファンから、当時キッズだった30〜40代、さらにその子世代に差し掛かっています。3世代ファンがついたらその音楽は普遍的なものになっていくそうです。今まさに僕らの手を離れても続いていくというフェーズに差し掛かっています。月日が経って、色々な理由で音楽から離れた人がいるかもしれない。この本や来月公開されるhideのドキュメンタリー映画など、20年のプロジェクトがまた音楽を手に取ってもらうきっかけになったらいいですね。ファンの方の自分の青春の1ページに重ねて楽しんでもらえたら嬉しいです。



関連写真

  • 没後20年、今もさまざまなプロジェクトが立ち上がっているhideさん(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by HIDEO CANNO(CAPS)
  • 長年hideと共に音楽制作に携わってきた、共同プロデューサーのI.N.A. 撮影/近藤誠司
  • hide with Spread Beaver(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by YOSUKE KOMATSU(ODDJOB)

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