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“月9ブランド”必要? 識者が忖度なしで語るフジテレビの今後

 80〜90年代を沸点とし、さまざまな名作を世に送り続けてきたフジテレビの月9枠だが、今はその“ブランド”自体が足かせになっているとの意見も多い。現在放送中の『海月姫』でも「月9だから見ない」「フジテレビだから見ない」などの厳しい声も。ORICON NEWSでは、テレビ事情に詳しいコラムニストの木村隆志氏、NHK朝ドラにも造詣が深いライターの田幸和歌子氏、ライターでイラストレーターの吉田潮氏の3人を招き座談会を開催。月9ブランドという呪縛から解放されたその先に見えるものは?

■月9は、誰もまだ見てないのにスタート前からやられたい放題(木村)

 『海月姫』は「女の子は誰だってお姫様になれる」をテーマにした東村アキコの人気同名コミックが原作の実写ドラマ。イラストレーターを志して上京したクラゲオタクの月海(芳根京子)と、彼女が住むレトロなアパート「天水館」の住人のオタク女子4人=“尼〜ず”との交流を通し、月海が成長していく姿を描くシンデレララブストーリーだ。

 「当初から、“なぜ今『海月姫』か”との違和感があった」と語るのは吉田潮氏。原作が登場したのは10年前の2008年。2014年には能年玲奈(現・のん)主演で映画化もされており、「現在のオタク女子たちはすでに市民権を得ていて、オタクであることを寧ろ楽しんでいる。時代錯誤感があった」と印象を語る。

 田幸和歌子氏も「あのオタク女子のわちゃわちゃの中で、繊細でリアリティのあるお芝居をする芳根さんがヒロインとして本当に必要だったのか疑問に思った」と当初を述懐。

 ネット上でも放送前から「月9だから見ない」「フジテレビだから見ない」という厳しい声が挙がる。結果、初回の平均視聴率は8.6%で同枠史上ワースト2位を記録した。

 木村隆志氏は「他局では「とりあえず第1話を見て判断しよう」という正しい流れになってきています。でも月9に関しては、まだ始まってもない、誰もまだ見てないのに、スタート前からやられたい放題」と分析する。

■前評判から一転、「芳根京子さんの演技力で周囲の本気が引き出されている」(田幸)

 ところがSNSでは意外な展開が起こっていた。F1層の女性を中心に『海月姫』を「面白い」「最近の月9ではナンバー1」とする声が続出。同ドラマ演出の石川淳一監督が主演の芳根京子のコメディエンヌぶりを絶賛する報道がされたほか、SNS上では瀬戸康史の女装の美しさが話題に。さらに木南晴夏松井玲奈内田理央富山えり子ら“尼〜ず”4人の東村アキコワールド全開の好演を称える声も挙がった。第7話ではワースト1位の4.6%に接近する4.9%という数字を見せたものの、最終回直前の第9話では6.0%と微増した。

 この変化について木村氏は「三角関係のラブストーリーと“尼〜ず”のシンデレラストーリーという2軸の悲喜こもごもを、時系列を追いながら丁寧にスローに描いている。これが若い視聴者に受けたのではないか」と分析。「『99.9-刑事専門弁護士-SEASON II』(TBS系)など一話完結の問題解決ドラマが増える中、敢えて視聴率を獲りにくい“連続ドラマ”という形で挑戦している部分も評価したい」(木村氏)。

 また吉田潮氏は「途中から安井順平要潤など、“脇”を見守るという“別次元”に入ってからは楽しくなった」、田幸氏も「芳根さんの演技力で周囲の本気が引き出されている。当初は兄から弟に設定が変わった修を演じる工藤阿須加さんにも違和感を覚えたが、今はまったく気にならなくなった」とそれぞれに変化が生じたようだ。

■メディアを含め、みんな月9の“幻想”に取り憑かれているのでは?(吉田)

 そうした中で、「月9は月9という“呪い”にかけられているみたいだ」と話す吉田氏。「みんな月9の“幻想”に取り憑かれているのではないか。例えば『家政婦のミタ』(日本テレビ系)にしても『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)にしても、放送枠の話は誰もしてなかった。だけど月9だけは、なぜか“月9”と枠して見られているのです」。木村氏も「いっそのこと“月9、やめました”ぐらい思い切りの良いキャッチフレーズはどうでしょう」と提案する。

 われわれメディアもそうだが、“月9”や視聴率にこだわりすぎるきらいがある。これこそ“月9”の“呪い”だ。さらに「今のフジテレビは何をやっても叩かれる」と識者3人ともが声を揃える。それもひとつの“呪い”だろう。

 田幸氏は「フジテレビへの“敵視”も多く見られる。フジテレビ=月9のイメージもあるから、さらに月9も“敵視”。一時期黄金時代を築き、ブランドが強くなりすぎたことから“豊かな時代”の象徴があり、今は豊かさが実感出来ない時代からこそ、その“バブル感”が“敵視”されているのかもしれない」とも。そんな中で、それぞれ「視聴率だけを見て作り手が守りに入るのは勿体無い」(田幸)、「若手をしっかりと育ててドラマに一番アツい想いを持っているのはフジ」(吉田)、「現状に負けず、『海月姫』のようなドラマを作り続けて欲しい」(木村)と“ドラマのフジテレビ”復権への期待感はあるようだ。

 作風や数字に縛られがちな“月9”。「すごく大きなメスになりますけど、小手先ではなく、構造的なところから変えてもらいたい」(吉田氏)と、識者たちは口々に“月9”を取り巻く状況に変化を願った。奇しくも4月の改編で「変わる、フジ 変える、テレビ」というキャッチコピーを発表したばかり。“月9”がその“呪い”から解き放たれる日は来るのか? 次回作には人気脚本家・古沢良太が手掛ける『コンフィデンスマンJP』が控える。『海月姫』にはぜひ有終の美を飾ってもらい、“呪い”を打ち砕く第一歩となってほしい。

(文/衣輪晋一)



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