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チャド・マレーン、ウーマン村本の風刺漫才に感じた可能性「もっと遊びができる」

 「茂木健一郎さんが『日本のお笑いはオワコンだ』と言った時、本当に『何を言うてんねやろう?』って思いました。僕は日本のお笑いはオワコンじゃないし、最も海外でウケるジャンルだと思っています。その魅力に気付いてほしいなっていう、ハッピーな気持ちでこの本を書きました」。1998年にNSC(吉本総合芸能学院)大阪校21期生として入学して以降、オーストラリア人の漫才師・チャド・マレーンは日本の笑いにどっぷり浸かりながら、その魅力を字幕・翻訳などを通して海外へも発信してきた。そんな、濃密な体験をまとめた新書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を出版したチャドに、日本の笑いの特徴を聞いた。

ウーマン村本の風刺漫才への期待を語ったチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.

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■風刺ネタは海外では“あるある” 日本の笑いの“多様性”感じる出来事とは?

 茂木氏が日本の笑いを「オワコン」認定した理由のひとつに、風刺ネタがほぼ存在していないことがあったが、これに対するチャドの答えは痛烈だ。「風刺ネタを面白い人がセンス良くイジれば絶対面白くなりますけど、それを日本のテレビであまりやらないのは、第一にお客さんが求めていないからじゃないかなと思う。アメリカは政治・宗教・人種差別・下ネタの4つが、日本で言うところの“あるあるネタ”です。この4大テーマを避けてお笑いを作ろうとすると、どうやって笑いを取るんだっていうくらい。茂木さんが『モンティ・パイソンは風刺ネタをやっている』ということを取り上げていましたが、それ以外のネタもやっています。むしろ彼らは、風刺ネタじゃないことをやったのが斬新だったから、人気になった。だから、茂木さんはピンポイントで真逆のことを言っているなと思いました」。

 同書の中で日本のお笑いが非常に多様で、成熟していると指摘するチャドだが、そのことを端的に表す事例をふたつ挙げる。ひとつ目は、Amazonプライムビデオで配信されているダウンタウン松本人志が主宰する“密室笑わせ合いサバイバル”『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』シリーズだ。「これぞ日本の芸人の本気ですよ。ただ、出演者がプロばかりなので、やりとりが高度過ぎて、理解できないという人もいるかもしれません。例えて言うなら、物理学者同士による物理の話を、端から見てキョトンとするのと同じような感覚。でも、これだけ緊張感のある張り詰めたお笑いは、海外では見たことがない。こんな芸人たちを育んだ日本のお笑い文化は、本当にスゴいと思います」。

 ふたつ目は、独特な世界観ながらもテレビでも人気を博している、お笑いコンビ・野性爆弾くっきーの活躍だ。「僕がNSCを出てから、初めて出させてもらっていた劇場が『baseよしもと』だったんですが、そこにFUJIWARAさん、ケンドーコバヤシさん、野性爆弾さん、次長課長さん、笑い飯さんとかがいらっしゃった。それが99年のことです。それぞれ売れるのに年月がかかりましたが、その頃から皆さんずっと面白かった。僕は自分にはない発想を持っている人に惹かれるのですが、その一番がくっきーさんでした。今、その人がやっとこうして認知されるようになったということは、それだけ日本のお笑いへの理解も進化している証拠だと思う。くっきーさん自身は、基本的にやること変わっていませんから(笑)。海外で、ああいう笑いは絶対に見られないです」。

■ウーマン村本の風刺漫才「立派だと思う」 日本の笑いの世界制覇を阻む“言葉の壁”

 昨年の12月17日に放送されたフジテレビ系『THE MANZAI 2017』で、ウーマンラッシュアワーが披露した、原発から沖縄の基地問題まで際どい時事問題を織り込んだ風刺ネタも、政治的な漫才として大きな話題になった。このネタを基準に日本と海外の笑いを比較する意見が多く見られたが、チャドは「立派だと思うけど、ちょっと気になったのは、中川パラダイスの個性が死んでいること。村本(大輔)くんも変やけど、パラダイスも変な奴やで(笑)。あの2人の変なところがいい具合に出たら、もっとオモロイ漫才になると思いますよ」と分析する。

 続けて、村本の芸人としての問題提起を評価しながら、今後の期待を込めた。「村本くんは村本くんなりに、一生懸命あの大義を持って、こういうことを取り上げてマスメディアでやらないといけないというミッションを持っているから、ちょっと遊び心が減ってしまったんじゃないかなと感じました。村本くんならもっと遊びができるんじゃないかな。ああいうネタをこれから10年やっていくのであれば、もっと面白くなると思います。意外とすぐ飽きたりして(笑)」。さらに、海外の事情についてもこう付け加えた。

 「それこそ、海外は社会風刺ネタの本場です。今まで、いろんな人が政治ネタ・社会風刺をいっぱいやってきているので、自分ならではの切り込み方を考えないといけない。社会風刺ネタに関して言うと、海外の方がバラエティーに富んでいますね」

 最後に、あえて「日本のお笑い界の伸びしろ」を聞いてみた。「日本のお笑いが世界制覇できないのは、言葉ができないのがネックですね。ほんまに、そこだけだと思います。僕は海外向けに字幕をつけたりすることがありますが、字幕だと伝えられる量が限られてしまう。それによって面白みが半減してしまうし、そもそも英語を話す人たちは字幕のついたものをあんまり見ないっていう難点があるので『皆さん、英語頑張りましょう』って言うしかないです(笑)。それか次の世代にお願いするしかない。本当は日本の芸人は、海外で通用するポテンシャルが絶対あるけど、いかんせん言葉の壁があるので、そこが歯がゆいところではあります」。

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  • ウーマン村本の風刺漫才への期待を語ったチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.
  • 新書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を出版したチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.
  • 新書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を出版したチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.
  • 新書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を出版したチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.

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