「バルス!」――ご存知、ジブリ映画の名作『天空の城ラピュタ』でクライマックスに主人公たちが叫ぶこの呪文。日本ではテレビ放送中にタイミングを合わせてツイッターで同時につぶやく「バルス現象」がいまや定着しつつある。テレビを見て視聴者が同時につぶやくというこの行動に、2011年放送の際はTwitter社のエンジニアから「サイバー攻撃が起こったのでは?」と騒ぎが起こったという。「日本ならでは」というこの現象について、同社の広報部・齊藤香氏、そして日本テレビ編成局編成部・谷生俊治プロデューサーに詳しく話を聞いた。
■2011年に世界新記録を叩き出した「バルス!」
「バルス現象」がツイッターで大きく盛り上がり始めたのは11年12月の日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』での放送時。この時、1秒間に世界中でツイートが発生した数TPS(tweets per second)が2万5088という世界新記録を更新。日本からの投稿が圧倒的に多かったことから、「バルス」に起因していることは明らかだったそう。それまでの、例えば11年3月の東日本大地震では5530ツイート、11年7月のなでしこJAPAN優勝では7916ツイート、11年8月の米・歌手ビヨンセ妊娠では8868ツイートと比べても桁違いの数字を残した。
一部では「『バルス現象』にそなえてツイッターがサーバーを強化している?」という説もささやかれているが、齊藤氏は「『バルス』のために強化しているわけではないですが(笑)。11年の段階で桁が一つあがったことでニューイヤーの対策もしっかりしようと、12年にサーバーを入れ替えるタイミングだったので、同じような波が来ても落ちないようにしなければ、という話はありました」と対策のひとつのきっかけになったという。
ではこの現象はなぜ、ここまで広がりをみせたのか。齊藤氏は日本では11年の東日本大震災以降にツイッターを開始した人が増えたことを挙げる。「そこでユーザーの母数が変わったのではないかと思います。『2ちゃんねる』さんでのイベントがツイッター上でも行われた09年の放送でも『バルス!』は行われていたようですが、当時の利用者数はあまり多くなくマスになってきたのがこの年からなのではないでしょうか」。
■“日本人ならでは”の「バルス現象」 「よろしくお願いしまぁぁぁす」も1位に
「他のつぶやきで言えば、日本人だけ1月1日0時ジャストに『あけましておめでとう』と言いたがる。その瞬間を共有したいという国民性もあるのかもしれないです。他国でもテレビを見ながらつぶやくという文化はなくはありません。ですが、チャンネル数が多かったり、国内に時差があったり、日本のようにみんなが地上波を見ている国はあまりありません」。また、日本では一人が一日でツイートする数が多いことや若年層の利用者も多いことなどの条件がそろっている。ちなみに15年でいえば同枠で放送された『サマーウォーズ』の名せりふ「よろしくお願いしまぁぁぁす」もその年のTPS1位を叩き出した。
その後の放送では、13年の放送時にTPS14万3199ツイートにまで拡大。この時、11年の世界新記録を再び「バルス」が塗り替えた。そこで日本テレビ側では16年に『バルス時刻予想』やデジタル放送の画面が崩壊するなど積極的なデジタル企画を用意。しかし、これには一部のユーザーから批判が起こった(※1)。
齊藤氏は「2016年の場合は新しく参加した方々は盛り上がっていましたが、2ちゃんねる世代からは企業や公式が入ると、これまでやってきたのと違うものになってしまうという声もあり、その温度感が難しい」と指摘する。
■ツイッター×テレビの今後 『金ロー』P「一緒に盛り上がることを提供していく」
齊藤氏は「日本の方は他の国の方よりツイッターを楽しく使われていることが多いのですが、『バルス』は典型的な例」とする「バルス現象」だが、このブームは、あくまで視聴者側から自然発生的にはじまったからこそ、ここまで盛り上がったのではないか。これにどこまで公式が乗っかっていくのか、それにはツイッター側も日本テレビ側も毎度悩んでいるという。しかし、今後はネット、なかでもリアルタイム視聴と結びつきの強いツイッターを活用しての企画はますます必須になってくるだろう。
谷生プロデューサーは「前回はジブリさんのご了承もいただき、そういうご批判があることは承知の上で、リアルタイムで楽しんでいただくプラスアルファとして実行しました。結果、ご批判をいただきましたが、好評な意見も多くいただけました。少なくとも、13年を超える規模で広げることができたとポジティブに捉えています。しかし我々も毎回違うデジタル展開をしようということで今回は別の企画を用意しています」と説明する。きょう29日に放送される『天空の城ラピュタ』(後9:00)では前週の『崖の上のポニョ』では100万回以上の参加があった新企画『みんなで選ぶ!好きなシーンランキング』(※2)を実施する。
デジタル企画については毎回、試行錯誤を重ねているそうで「常にツイッターさんのことは意識しています。リアルタイム視聴が今のテレビ業界でひとつの指標となる中でプラスアルファをつけないと映画放送は終わってしまう。リアルタイムに一番なじみがあるのはやはりツイッター」と重要視。「DVD、BD持っているという方がいらっしゃる中でそれでも何度も放送されている映画を観てくださるのは、やっぱりみんなで盛り上がりたい、『バルス!』ってその瞬間に言いたいわけですから、リアルタイムで観ていただく楽しさの創出になっている。それを続ければ金曜ロードショーは続けていけるのでは」と力を込める。
実際に、『金曜ロードSHOW!』は毎度ツイッターのトレンドにも上がってくるそうで、各局がゴールデン・プライム帯の映画枠から撤退するなかで唯一残った同番組について「時代に即したゴールデン・プライム帯での映画編成を考えた時、デジタルとの連携はひとつの回答ではあると思っています」と、谷生プロデューサー。「こちらが仕掛けるのではなく、みんなで一緒に盛り上がることを提供していくスタンスでやっていきたいですね」。
※1 この放送ではツイッター側がTPSを非公表にしているものの、NTTデータによる1分間につぶやかれた「バルス」は34万5397ツイートだが、秒間でいえば約5万5000ツイートと11年より多いが、13年を下回る結果となっている。
※2 放送に合わせて表示されるシーンガイドを観ながら好きなシーンを特設サイトの『大好きボタン』(またはデータ放送で決定ボタン)で投票すると、その結果がランキング式で表示される。
■2011年に世界新記録を叩き出した「バルス!」
「バルス現象」がツイッターで大きく盛り上がり始めたのは11年12月の日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』での放送時。この時、1秒間に世界中でツイートが発生した数TPS(tweets per second)が2万5088という世界新記録を更新。日本からの投稿が圧倒的に多かったことから、「バルス」に起因していることは明らかだったそう。それまでの、例えば11年3月の東日本大地震では5530ツイート、11年7月のなでしこJAPAN優勝では7916ツイート、11年8月の米・歌手ビヨンセ妊娠では8868ツイートと比べても桁違いの数字を残した。
一部では「『バルス現象』にそなえてツイッターがサーバーを強化している?」という説もささやかれているが、齊藤氏は「『バルス』のために強化しているわけではないですが(笑)。11年の段階で桁が一つあがったことでニューイヤーの対策もしっかりしようと、12年にサーバーを入れ替えるタイミングだったので、同じような波が来ても落ちないようにしなければ、という話はありました」と対策のひとつのきっかけになったという。
ではこの現象はなぜ、ここまで広がりをみせたのか。齊藤氏は日本では11年の東日本大震災以降にツイッターを開始した人が増えたことを挙げる。「そこでユーザーの母数が変わったのではないかと思います。『2ちゃんねる』さんでのイベントがツイッター上でも行われた09年の放送でも『バルス!』は行われていたようですが、当時の利用者数はあまり多くなくマスになってきたのがこの年からなのではないでしょうか」。
■“日本人ならでは”の「バルス現象」 「よろしくお願いしまぁぁぁす」も1位に
「他のつぶやきで言えば、日本人だけ1月1日0時ジャストに『あけましておめでとう』と言いたがる。その瞬間を共有したいという国民性もあるのかもしれないです。他国でもテレビを見ながらつぶやくという文化はなくはありません。ですが、チャンネル数が多かったり、国内に時差があったり、日本のようにみんなが地上波を見ている国はあまりありません」。また、日本では一人が一日でツイートする数が多いことや若年層の利用者も多いことなどの条件がそろっている。ちなみに15年でいえば同枠で放送された『サマーウォーズ』の名せりふ「よろしくお願いしまぁぁぁす」もその年のTPS1位を叩き出した。
その後の放送では、13年の放送時にTPS14万3199ツイートにまで拡大。この時、11年の世界新記録を再び「バルス」が塗り替えた。そこで日本テレビ側では16年に『バルス時刻予想』やデジタル放送の画面が崩壊するなど積極的なデジタル企画を用意。しかし、これには一部のユーザーから批判が起こった(※1)。
齊藤氏は「2016年の場合は新しく参加した方々は盛り上がっていましたが、2ちゃんねる世代からは企業や公式が入ると、これまでやってきたのと違うものになってしまうという声もあり、その温度感が難しい」と指摘する。
■ツイッター×テレビの今後 『金ロー』P「一緒に盛り上がることを提供していく」
齊藤氏は「日本の方は他の国の方よりツイッターを楽しく使われていることが多いのですが、『バルス』は典型的な例」とする「バルス現象」だが、このブームは、あくまで視聴者側から自然発生的にはじまったからこそ、ここまで盛り上がったのではないか。これにどこまで公式が乗っかっていくのか、それにはツイッター側も日本テレビ側も毎度悩んでいるという。しかし、今後はネット、なかでもリアルタイム視聴と結びつきの強いツイッターを活用しての企画はますます必須になってくるだろう。
谷生プロデューサーは「前回はジブリさんのご了承もいただき、そういうご批判があることは承知の上で、リアルタイムで楽しんでいただくプラスアルファとして実行しました。結果、ご批判をいただきましたが、好評な意見も多くいただけました。少なくとも、13年を超える規模で広げることができたとポジティブに捉えています。しかし我々も毎回違うデジタル展開をしようということで今回は別の企画を用意しています」と説明する。きょう29日に放送される『天空の城ラピュタ』(後9:00)では前週の『崖の上のポニョ』では100万回以上の参加があった新企画『みんなで選ぶ!好きなシーンランキング』(※2)を実施する。
デジタル企画については毎回、試行錯誤を重ねているそうで「常にツイッターさんのことは意識しています。リアルタイム視聴が今のテレビ業界でひとつの指標となる中でプラスアルファをつけないと映画放送は終わってしまう。リアルタイムに一番なじみがあるのはやはりツイッター」と重要視。「DVD、BD持っているという方がいらっしゃる中でそれでも何度も放送されている映画を観てくださるのは、やっぱりみんなで盛り上がりたい、『バルス!』ってその瞬間に言いたいわけですから、リアルタイムで観ていただく楽しさの創出になっている。それを続ければ金曜ロードショーは続けていけるのでは」と力を込める。
実際に、『金曜ロードSHOW!』は毎度ツイッターのトレンドにも上がってくるそうで、各局がゴールデン・プライム帯の映画枠から撤退するなかで唯一残った同番組について「時代に即したゴールデン・プライム帯での映画編成を考えた時、デジタルとの連携はひとつの回答ではあると思っています」と、谷生プロデューサー。「こちらが仕掛けるのではなく、みんなで一緒に盛り上がることを提供していくスタンスでやっていきたいですね」。
※1 この放送ではツイッター側がTPSを非公表にしているものの、NTTデータによる1分間につぶやかれた「バルス」は34万5397ツイートだが、秒間でいえば約5万5000ツイートと11年より多いが、13年を下回る結果となっている。
※2 放送に合わせて表示されるシーンガイドを観ながら好きなシーンを特設サイトの『大好きボタン』(またはデータ放送で決定ボタン)で投票すると、その結果がランキング式で表示される。
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2017/09/29