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再現度高い『トットてれび』 “昭和史”としての価値の高さも

 女優・満島ひかりが主演を務める土曜ドラマ『トットてれび』(NHK総合)が初回放送から視聴率10%を超え、第2回も数字を伸ばすなど、同ドラマ枠としては異例の高視聴率を記録している。タイトルからもわかるように、「トットちゃん」=黒柳徹子のエッセーを原作とした自伝的ドラマで、「NHKが本気を出して60年前のテレビを作ってみた!」(番組HPより)というだけあり、テレビ時代黎明期のドキュメンタリー、記録映像的な側面も感じられる。当時の風俗や人物像への再現性に対するこだわり、そしてそれを支える超豪華な出演者陣による演技のぶつかり合いも話題になっている。

黒柳徹子(右)とNHKのドラマ『トットてれび』で黒柳徹子を演じる満島ひかり(左)

黒柳徹子(右)とNHKのドラマ『トットてれび』で黒柳徹子を演じる満島ひかり(左)

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■昭和を代表する著名人が“憑依”したかのような“キャスティングの妙”

 『トットてれび』は黒柳徹子の自伝エッセイ『トットひとり』『トットチャンネル』を原作としたドラマで、TVドラマ『Woman』(日本テレビ系)や映画『愛のむきだし』などで演技が高い評価を受けている満島ひかりが黒柳を演じるとあって、どんな“トットちゃん”になるのか、放送前から注目を集めていた。いざ放送が始まると、黒柳を徹底的に研究したのか、満島の話し方や仕草は、トットちゃんが憑依したとしか思えないほど“そのもの”。多くの人は黒柳と言えば、『ザ・ベストテン』(TBS系)や『徹子の部屋』(テレビ朝日系)などの“玉ねぎ頭のおばさん”姿しか知らないはずだが、「若いころの黒柳さんもきっとこういう、ちょっとすっ頓狂でよく喋る人だったんだろうなあ」と思わず納得してしまうような、まったく違和感のない素晴らしい演技をしている。満島の演技力の真骨頂でもあろう。

 そして脇を固める豪華な共演者たち。初回は、黒柳がNHKの専属俳優採用試験に合格し、人形劇の声優役を得るまでの物語だが、面接官のプロデューサー役に武田鉄矢、ディレクター役には濱田岳が登場し、ナレーターのパンダ役は小泉今日子、そのほか向田邦子ミムラ渥美清中村獅童永六輔新井浩文、劇作家役の大森南朋など、出演者陣は贅沢のひと言。21日の放送では、小学生時代の満島とともにダンスボーカルユニット・Folderとして活動していた三浦大知がチャーリー・チャップリン役として出演することも話題となっている。

「この豪華なメンツというか、“適材適所の配役”が、まずはポイントのひとつでもあるでしょう。“ちょっとエッチなオジサン”の森繁(久彌)さんは、イメージそのままの吉田鋼太郎さんが演じ、『ねぇ、一回どう?』なんて下ネタを黒柳さんにぶちかまします。関ジャニ∞錦戸亮さんが坂本九さんを演じていたり、EGO-WRAPPIN’のボーカル・中納良恵さんが笠置シズ子さんとしてその圧倒的な歌声を余すことなく披露しています。これらの絶妙な配役から、スタッフの本気度が伝わってきますね」(ドラマ制作会社スタッフ)

■スタジオの雰囲気から小物まで徹底的に再現 NHKだからこそ可能な拘り

 さらに制作スタッフの本気度・こだわりをうかがわせるのが、撮影用の小道具。当時は、ドラマ、ニュース、バラエティ番組は全部生放送。その緊迫したドタバタの撮影現場が舞台なのだが、テレビカメラはNHK放送博物館にある当時のものを参考にして、忠実に再現したレプリカを3台作ったという。60年前の機材も60年前は新しかったわけだが、新品でもヘンだし、ボロボロでもおかしい…というところまでこだわって再現。また、マイクなどは一部、当時の“本物”を使用しているという。

「番組を収録しているスタジオでのドタバタ、リアルタイムでそれを観ている視聴者の戸惑いなども再現することで、テレビ黎明期の撮影のドキュメンタリー映像を観ているかのような気持ちになりますよね。そして演出がいい意味で、これまでの“NHKっぽさ”がないんです。番組冒頭で“100歳になった黒柳徹子”という設定の、特殊メイクを施したような強烈な印象の黒柳さんが登場するし、バラエティ番組ノリのテロップも出す。黒柳さんの妄想シーンでは、CGっぽい映像も出てくる。放送時間は28分と中途半端かつ短いのですが、CMもないですし、濃密な“引き込まれ感”がありますね。また、これだけ美術にお金をかけられるのはNHKだからこそ。他局のドラマではそうはいきませんから」(前出・スタッフ)

 『トットてれび』の放送は全7回放送。これからも昭和のテレビ史において重要な役割を担ってきた様々な大物俳優やタレント、有名テレビ業界人が数多く登場してくるだろう。そうした人物を限りなく本人を再現して演じる役者陣や、史実に忠実に基づいたエピソードや演出にこだわるスタッフたち…。そうした役者やスタッフたちが追及する高い“再現性”は、このドラマをテレビが「テレヴィジョン」と呼ばれていた時代の良質な“ドキュメンタリー”たらしめるだろう。そして何よりもドラマ自体の圧倒的な“面白さ”において、『トットてれび』は今期No.1のドラマになる可能性を十二分に秘めているのではないだろうか。

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