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『エイジハラスメント』脚本家・内館牧子氏「連続ドラマは難しい」

 今月9日にスタートしたテレビ朝日系ドラマ『エイジハラスメント』(毎週木曜 後9:00)。日本企業にはびこる「年齢差別=エイジハラスメント」をテーマに、女優の武井咲演じる主人公の新人OL・吉井英美里が、さまざまなハラスメントと陰湿ないじめに敢然と立ち向かう姿を描く。初回のネット上の反響としては、「ひとごととは思えなかった」という人、「現実には有り得ない」という人、賛否両論あり、好きと嫌いが極端に分かれる傾向がみられた。原作・脚本を手がけている内館牧子氏に連続ドラマ作りの難しさ、『エイジハラスメント』の今後について聞いた。

テレビ朝日系木曜ドラマ『エイジハラスメント』原作・脚本を手がける内館牧子氏 (C)ORICON NewS inc.

テレビ朝日系木曜ドラマ『エイジハラスメント』原作・脚本を手がける内館牧子氏 (C)ORICON NewS inc.

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――原作『エイジハラスメント』(幻冬舎)は、日本の企業にはびこる嫉妬と焦りにまみれた年齢差別の現状を、30代女性のもがき苦しむ姿を通して描いた作品でした。今回、新人OLを主人公に据えたのは、どういった理由があるのですか?

内館:原作を書いたのは2008年ですから、それから7年経って、世の中も変わりましたよね。女性の活用は日本社会の関心ごととなり、実際、さまざまな職場で女性がスキルや実力を発揮して活躍しています。結婚して子どもを産んでも、仕事を続けられるように会社や社会がバックアップしようという気運も高まっています。

 その一方で、働く女性の半数以上が非正規雇用といった現実や、旧態依然とした考え方も根強くある。何より、女性だけでなく男性も“平等に”エイジハラスメントを受ける時代になりました。今回、主演が武井咲さんということで、若ければ若いなりのハラスメントも受けるという視点から入り、旧体質の象徴としてOL用の制服着用が義務付けられた総務部を舞台に、あらゆるハラスメントを浮き彫りにしていこうと思っています。

――初回に、居酒屋で男性社員が集まって飲みながら「今は何でもかんでもハラスメントなんだよ」と愚痴るシーンがありましたが…。

内館:そう! 何でもかんでも「ハラスメント」と言い過ぎじゃないかと思うあたりも書いています。「息苦しい世の中で、男は何をしゃべればいいんだ」という愚痴に、「天気の話」「無口でいること」ってね。

――内館さんも脚本家になる前は会社勤めをされていましたが…。

内館:22歳で入社した会社では35歳で辞めるまでの13年半、ずっと総務でした。後から入社した男性社員にどんどん抜かれていく理不尽な経験も実際にしています。「もっと仕事をさせてください、もっとできます」と上の人に訴えたことも何度もあったし、第1話で主人公が「そんなに大事な仕事なら、課長やってください」と啖呵(たんか)を切ったシーンがありましたが、実際に私が言ったことでもあります(笑)。数年前の社員旅行の写真を見て、「○○ちゃん、若かったね、この頃は」と平気で言われていた時代の人間からすると、ハラスメントによって図太く鍛えられた気がしますね。

――主人公が「五寸釘ぶち込むぞ」とひとりごとを言いながら我慢を重ね、結局、怒りを爆発させて啖呵を切るというパターン。新人OLが上司に向かって啖呵を切るなんて有り得ないという批判もあり、現実の世界で言えないからこそスカッとしたという意見もあり、ハラスメントやいじめの描き方一つをとっても好き嫌いが分かれるドラマになりそうですね。

内館:テレビドラマはその時代をどう切り取るかという点が重要であり、難しいところ。あまり先を行きすぎても、遅すぎても受け入れてもらえない。脚本家になりたての頃は(脚本家デビューは1987年)、半歩先を狙えと教わったけれど、これだけ視聴者を取り巻く環境が多様化した時代にどこに軸足を置いたらいいのかさえはかりかねる。絶対にこれは行ける!と思ったものが、“行けていない”時もあります。本当に難しい。

――『エイジハラスメント』の今後は?

内館:このドラマは「ハラスメントに負けないで強く生きなさい」というエールでは決してありません。それではハラスメントを是認していることになってしまうから。ハラスメントそのものはいけないこと。自分が知らず知らずのうちにハラスメントをしていないか、どうしたらハラスメントのないよりよい職場環境を作れるか、現実にハラスメントを受けて悩んでいる人は、自分の人生をどうしたいのか、考えるきっかけになればと思います。

■16日放送の第2話は――

 前回のラストで、怒りに任せて浅野次長(吹越満)や高山部長(竹中直人)を名指しで非難してしまった主人公・吉井英美里(武井)は、その勢いのまま課長の大沢百合子(稲森いずみ)に退職を願い出る。百合子は、英美里に早退を指示。英美里は帰宅後すぐに退職届を書きはじめるが…。

 百合子は、英美里の退職を認めず、騒ぎを起こした罰として、総務部が忙殺される社内イベント『社員家族夏祭り』の運営に加わるよう言いつける。イベントの準備はすでに大半が整っており、騒動を起こした英美里が加わることに女子社員たちの反応は冷ややか。だが、英美里は新しいアイデアを次々に提案する。余計な仕事が増えると嫌がる女子社員がいる一方、英美里の言うことなら聞いてやろうと鼻の下を伸ばす男性社員もいて、リアクションはさまざまだったが、結局、英美里のアイデアはすべて受け入れられ、夏祭りがいよいよスタートする。

■内館牧子
 秋田市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、一般企業での13年半のOL生活を経て1988年に脚本家デビュー。代表作は『ひらり』『毛利元就』(NHK)、『想い出にかわるまで』『週末婚』『年下男』(TBS)、『都合のいい女』(フジテレビ)など。2000年から10年まで女性として初の横綱審議委員会のメンバーを務める。

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  • テレビ朝日系木曜ドラマ『エイジハラスメント』原作・脚本を手がける内館牧子氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 第2話より。主人公の吉井英美里(武井咲)にやさしく声をかける保科昌彦(小泉孝太郎)と、その様子を横目で見る総務課長の大沢百合子(稲森いずみ)。保科と大沢は不倫関係にあって…(C)テレビ朝日

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