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キム・ギドク監督、映倫規制と年齢制限との戦い「監督の本質は…」

 前作『嘆きのピエタ』がヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した鬼才キム・ギドク監督。最新作『メビウス』では、母親に性器を切断された息子とその父親を主人公に、家族、欲望、性器をテーマにした壮絶な復讐と因果応報の果てが描かれる。

最新作『メビウス』では、母親に性器を切断された息子とその父親を主人公に家族と欲望を描くキム・ギドク監督

最新作『メビウス』では、母親に性器を切断された息子とその父親を主人公に家族と欲望を描くキム・ギドク監督

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 同作は、男と女の愛憎を、親子という絆を絡ませながら過激に生々しく描写。さらに息子役の俳優が撮影当時15歳であり、近親相姦とも捉えられる性的な表現も含まれることから、昨年の韓国公開時には大きな物議をかもし出した。そして、今回の日本公開に際しても、上映にこぎつけるまでには大変な紆余曲折があった。そんな状況に対してギドク監督は語る。

「韓国では必要以上にシリアスに見る人が多くて、自分の痛みや苦しみとして捉えられることが多かったんですね。韓国、ヨーロッパ、そして日本やアメリカでの反応を聞いて、この映画は国によって感じ方がまったく違うことがよくわかりました。とくに韓国での反応が一番深刻で、倫理的、道徳的な視点で捉える人が多かったんです」

「このモチーフを映画化しようと思ったのは、韓国社会が性的なことをシリアスに捉えすぎだと感じていたことからです。もっと突き抜けた、それを超えたものを、赤裸々に、率直に描いてみたいと思ったのがきっかけです。みなさんが囚われていることは、すべて観念でしかないんですよと伝えたくて作りました」

 そんな映画史上最も壮絶なヒューマンドラマといわれる同作は、韓国だけでなく日本でも映倫(映画倫理委員会)からの上映規制を受けてオリジナルから再編集をしている。こうした規制についても聞いた。

「年齢制限については、未成年が見ることで誤った判断が記憶に残ることがいけないという懸念があるからで、私もそこは仕方がないと思っています。それとは別のところで、映画の作り手側から考えると、伝えたい内容をありのままに伝えるという役割も重要です。これを表現すると規制を受けるかもしれない、ということは考えず、リアルに伝えたいものを作っていくのが監督の本質だと思います」

 女性が男性器を切り取るというと、日本では阿部定事件を思い起こす人も多いだろう。ギドク監督も、日本では実際にそういう事件があったこともやはり知っていた。

「話には聞いたことがありますし、大島渚監督の映画も見たことがあります。韓国ではそういう事件は聞いたことがないのですが、調べてみたら、世界中には性器切断の事件ってたくさんあるんですね。ほとんど嫉妬から起こることが多くて、男女が社会で生きるなかではそういうことが起こりうるんだなと感じました」

「でも、『メビウス』では、それらの事件とは違う意味があります。誰もがひとつの構造のなかに組み込まれている、そして自分が自分に嫉妬しているというメッセージも込めているんです。性器を巡る矛盾があり、そのなかで自分で自分を苦しめてしまうということは、男女が生きていくなかでは不可避なんだと思います」

「この映画を作るとき、私は『女性は家、男性は旅人』という位置づけにしました。そして、この映画をひと言で表現すると『男性器の旅』という言葉が浮かびました。ヨーロッパでは笑いながら見ていた人も多かったのですが、韓国では自身の性器が危ういと感じた人が多かったようですね。映画が終わって、股間を確認している方もいました(笑)」

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