担当者が明かす、漫画『ぴよちゃん』ヒットの理由 王道4コマは新聞の「窮屈さ」が生んだ?
心温まる内容がSNSで広がり単行本が緊急重版「肩の力を抜いて読んでもらえる作品に」
素直で元気、でも少しうっかりしているぴよちゃんは、両親と中学2年の兄、猫の又吉(またきち)と暮らす小学3年生。又吉はぴよちゃんが生まれたころから仲良しの相棒で、人間の言葉もわかる(ただしぴよちゃんには猫語は通じない)。このぴよちゃんと又吉のコンビを中心に、祖父母を含めた家族や、個性的な同級生たち、ご近所さんなど、さまざまな登場人物や登場猫らとともに、あたたかく楽しい毎日が続いていく。
実はこの作品、マンガを活用した広告やビジネスコミック制作を軸に事業を展開するトレンド・プロが、制作進行とプロデュースを手がけている。出版編集部部長である川崎隆昭氏に成立の経緯などを聞いた。
「きっかけは新聞三社連合(編注:北海道新聞、中日新聞・東京新聞、西日本新聞で構成)さんからの依頼です。その事務局は、新聞連載の小説や4コマを手配して全国の新聞に配信しています。2016年に、次の作品を準備しようとしていた三社連合さんから声がかかって、一緒に考えることになりました。
新聞社がいわばクライアント、発注者ということになります。お題というほど具体的ではないのですが、一服の清涼剤、ほっとする存在として4コマを置きたいという目的はありました。社会面という、深刻なニュースが載ることも多い面ですので、老若男女、家族が楽しく、肩の力を抜いて読める作品で、ほっこりしてもらう。そういうリクエストです」
広告を漫画で的確に表現するビジネスを展開する同社にとって、著者は過去に仕事上のつながりがあり、伝説的育児コミック『ママはぽよぽよザウルスがお好き』などメジャー作品を第一線で多数手がけ続ける信頼感もあった。
「青沼先生ご自身が、新聞4コマが大好きという方。函館生まれで、当時の北海道新聞で、『ほのぼの君』(編注:佃公彦・著。『ちびっこ紳士』というタイトルだった時期もある)が大好きで、もちろん『サザエさん』も読み込んでいて、新聞の4コマ漫画への思い入れも強かったそうです。どこか懐かしい、昭和時代の漫画の良心的な部分を伝承していきたい、あの流れを次代に伝えたいという願いもあるのだと思います。だからこそ、舞台は現代でも、誰もが安心して読める精神性があり、それが読者の方々にも伝わっているのかもしれませんね」