月9『朝顔』P、震災を描く裏にあった覚悟 ホームドラマ要素の融合は「交流」が決め手に
現地での取材を経て、東日本大震災に向き合う使命感が芽生えた
「昨年の年末あたりから関連書を読んだり、法医学の先生方にお話を伺っているなかで恥ずかしながら初めて知ったのは、東日本大震災が発生した際、多くの先生方が身元確認のために東北に行っていらっしゃったということ。その話を受けて今年の2月、私とチーフ演出の平野(眞)、脚本家の根本(ノンジ)さんとで、毎年この時期に出向いていらっしゃる研究者の先生や法医の先生方と共に、東北に行かせていただきました。そこで、ご遺族の方々と交流をさせていただくなかで、皆さんが今もなお、哀しみや葛藤を抱えながら生活されていらっしゃるということを体感したんです。今もなお苦しまれている方をテーマにドラマを作ることが誰かを傷つけてしまうのではないか、正直不安でした。ですが、実際に被災地を訪れた時に感じた胸が締め付けられるような想いをなんとかドラマにしたい、この想いを伝えるべきではないか、と突き動かされるものがあったんです」(金城氏)
母を亡くした女性が、母になるということ
「東北で母と一緒に被災した朝顔が、再び東北に足を運べるようになるには8年という時間を要しました。その時間の経過を3ヶ月という放送期間の中で表現することは、非常に難しかったですが、同時にこだわった点でもあります。そこがしっかり描けていないと、今もずっと苦しんでいる方々に失礼だからです。6話から5年後の“未来”を描くことで、今悩んでいらっしゃる方々に対して『時間が経てば何かが変わるかもしれない』というメッセージを添えたいと思いました。そして母を亡くした朝顔が、母になる姿を描きたかったんです」(金城氏)
「撮影前の交流」が、ホームドラマの要素を盛り込むきっかけに
「配役に関しては、ご一緒したかった上野さんが決まってからは、上野さん(朝顔)の父親であってほしい人、旦那さんであってほしい人、上司であってほしい人という感覚で決定していきました。皆さん『基本のき』を大事にしてくださり、また『今』を全力で楽しんでいらっしゃる方々ばかりだったので、非常に良い空気感のなかで撮影していくことができました。また、今回はクランクインする前にしっかりとリハーサルを行ってから撮影することができたので、それも良かったです。私たちスタッフは現場で家族のシーンを見ながら、『(朝顔一家)が1時間すき焼きを食べているだけでも観ていられるね』なんていう会話も(笑)。時任さんは放送を観たご家族から、『普段のお父さんまんまじゃん』なんて言われたそうです(笑)。全体のバランス感については、撮影をしながらベストを探っていきました」(金城氏)
女性ならではの感覚を大切に、面白い作品を作っていきたい
「あまり男女の差を感じることはあまりありませんが、ドラマの視聴者は女性が圧倒的に多いですから、そう考えると女性が作るドラマが支持される面もあるかもしれませんね。女性はライフステージによって、男性以上にいろいろな変化がありますよね。キラキラしていた20代が終わってしまうとか、体力的な衰えとか。女性ならではの視点が、物語を面白くする要素になることもあるかもしれません。ですから、私も日々を大切に生活したいと思います。自分の感覚に素直になっていきながら、その時々で素敵なキャスト、スタッフと一緒に面白い作品を作っていきたいです」(金城氏)
今回、始めて連ドラの単独プロデュースを手がけ、「若手でもみなさんの力を借りればちゃんと放送できる」と金城氏。「大変ありがたいなと思いながらも、ものすごく負けず嫌いなので『最優秀作品賞』を狙いたかったなという気持ちも(笑)。今後も他局さんと切磋琢磨しながら、頑張っていきたい」という強気も見せる若き女性プロデューサーの活躍に今後も期待したい。