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13年ぶり月9主演の上野樹里、「誰かがいるからできる」結婚がもたらした演技のリアリティ

上野樹里

 20歳で『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)で主演した上野樹里が、13年ぶりに月9ドラマに帰ってくる。“のだめ”のイメージは強く、エキセントリックに見られることもあった彼女も、いまや33歳。昨年、2年半ぶりの連ドラとなった『グッド・ドクター』(同系)では、深みも人間味もある女医を演じて見せた。2016年にはロックバンド・TRICERATOPSの和田唱と結婚するなど、プライベートも大きく変化。「天才」と言われてきた上野にとって、演じることの意識を変えた転機とは?

「現代社会に貢献できる役を」、東日本大震災で感じたジレンマ

上野樹里

 上野樹里が主演する月9ドラマ『監察医 朝顔』(7月8日スタート/フジテレビ)は、法医学者の万木朝顔(上野)と刑事の父・平(時任三郎)という異色の父娘を描くヒューマンドラマ。朝顔は解剖で、平は捜査で謎を解き明かし、遺体から見つけ出された“生きた証”で残された人の心を救うハートフルな作品だ。

――今作が初の月9単独主演になりますが、いかがでしょうか。

上野樹里 初めての主演ドラマが、玉木宏さんとダブル主演した月9の『のだめカンタービレ』(2006年)でした。そんな特別な思い入れのある枠に、また出演することができてとてもうれしいです。

――朝顔は、東日本大震災で母が行方不明になり、遺体すら見つけられなかったことで法医学に打ち込むことになります。上野さんも先日取材で、「現代社会に貢献できる役を演じたい」といった発言をされていましたが、そんなふうに観る人のことを考えて演じるようになったのは、いつ頃からでしょうか?

上野樹里 NHK大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』(2011年)に出演していた時に、東日本大震災が起きました。物資が不足して、生きていくことすら大変な状態の方がたくさんいらっしゃる中、ドラマを撮り続けていくのは精神的にもつらいものもありました。私にも何かできることはないかと思っていたときに、NHKさんがチャリティーイベントに協賛して下さり、全国のホールでドラマの話をしながら募金活動をさせていただくことができました。そのときに、「ドラマをがんばることも大切。前へ進める人は前へ進まなきゃいけないんだ、それも大事なことなんだ」と思った記憶があります。

――昨年のドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)でも、絶対的に人数が少なく過酷な状況にある小児外科医を演じていました。

上野樹里 小児外科医が少ないために、ケガや病気のお子さんがなかなか病院に受け入れてもらえず、搬送が遅れたり、命を救えないこともあります。ドラマで描くことで、そんな厳しい環境をたくさんの方に知ってもらえて、小児外科医を目指す方が増えたり、環境を改めて見直すきっかけになればうれしいと思ったんです。社会に貢献できる役があればまた演じたい、そのときも考えました。

上野樹里 監察医朝顔

――そして、今回は法医学者の役です。

上野樹里 遺体は嘘をつけません。誰かの死には、誰かが絶対に向き合っている。そして、死因を究明するだけではなく、亡くなった方の心の声にも耳を傾ける仕事だということを知りました。例えば、遺体の解剖によってその人がどのように殺害されたのかだけでなく、なぜ殺されたのかまで考える。そこで亡くなった方の生きていたドラマが見えてくる。法医学者を演じることで、生きる大切さ、生かされていることの喜びも伝えられたらいいなと思っています。

――演じる上で何か気を遣っている点はありますか?

上野樹里 研究室などで、仲間たちと人間らしい普段の会話のやり取りも大切に演じることです。仕事の上でもそれぞれの日常感が描かれなければ、(死という非日常が)理解しづらいこともあんじゃないかと。

結婚して生活力がアップ、「自分のためにはできないけど、誰かがいるからできることがある」

上野樹里

――そんな上野さんも、女優デビューから約17年。30代となり、芝居への向き合い方や考え方に変化は出てきていますか?

上野樹里 20代の頃は演じることが本当に楽しくて、夢中で役に向き合っていたように思います。のだめのようなユニークな役もやらせていただき、キャラクターを作る楽しさもありましたね。今回演じる朝顔は、それらよりは日常的で一般的な人物。私自身、結婚してプラベートでの生活力が上がったので、こういうヒューマンドラマで演じる際に、にじみ出るリアリティや味わいが増していればいいなと思います。

――例えば?

上野樹里 一人暮らしをしていた時に感じたんですけど、一人だとあまりご飯って作らないんですよ。でも結婚をして夫がいる今、誰かのために料理をするとなると、いくら疲れていても、それが苦痛というよりも気分転換になるんです。自分のためにはできないけど、誰かがいるからできることがある。一人で仕事をしていた独身時代の自分とは違って、家に帰って夫に仕事の話を聞いてもらってホッとしたり。朝顔の場合はその相手がお父さんなんですが、そういったシーンのひとつひとつで、死とは対極にある「生」というテーマもしっかり伝えたいです。

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