ファン心をくすぐるコラボG-SHOCK カギは売上より“輪”
コラボモデルは販売本数増ではなく”輪”を広げるため
上間氏一番最初のコラボは、『ブラックフライ』。当時かなり尖っていたサングラスのブランドとのモデルですね。これが好評で以降、G-SHOCKとの親和性の高い4つのカルチャー『スポーツ』『ファッション』『アート』『ミュージック』を主軸に、新しいファンを開拓し、コンタクトポイントを増やすために、各ジャンルでコラボモデルを出していきました。G-SHOCKを広めていくために、時計というジャンルだけにとどまっていては、いろいろなファンに届かないと考えたんですね。
これらのコラボが、それぞれのカルチャーでブームの火つけ役となり、90年代中盤からのG-SHOCKブームにつながっていく。
上間氏UNITED ARROWSさんやStussyさんとのコラボは非常に反響がありました。コラボモデルは、販売本数を稼ぐためではなく、その輪を広げるため。そういう意味で各ジャンルの“本物の人”、今でいうインフルエンサー的な人に刺さってくれたのが大きかった。その影響で、それまであまり接点のなかった人たちにもG-SHOCKを認知してもらえました。以降もさまざまな方々といろんな形でコラボしていますが、こちらから一方的にお願いするのではなく、CASIOやG-SHOCKを好きでいてくれる人たちと、アイデアを出し合い、楽しみながら行っています。
Gorillazの『コラボか死か』という活動コンセプト
さらに、9月にはイギリスのバーチャルバンド・Gorillazとのコラボモデルを発表。このモデルは、彼らの活動コンセプトとG-SHOCKのブランドポリシーが共鳴し、誕生したものだ。
出口氏Gorillazが、G-SHOCKの『新しいことにどんどん挑戦していこう』というブランドポリシーに近い思想を持っていること。さらに彼らの曲のなかに『CASIO CASIO…』と私どもの社名を連呼する曲があることなどがあり、社内のUKチームから提案がありました。『コラボか死か』というコンセプトを持って活動していることも大きいですね。
自分たちだけで完結せずに、さまざまなミュージシャンとコラボし新たな音楽を生み出すことで、自らの音楽性をも高めてきたGorillaz。『コラボか死か』という言葉にはそんな思いが込められているのだろう。
上間氏G-SHOCKとしても、今までのコラボはリアルな人ばかりだったという部分もあって、バーチャルバンドと組むという新しい挑戦であること。ネットを含めたオンライン系のビジネスの活性化に結び付くこと。さらに、若い層からお年を召した方まで幅広い層の方に愛されているバンドであること。それらが、G-SHOCKとしても欧州の若年層へのアプローチも考えていたところと合致したので、話が進みました。
輪を広げるだけでなく技術革新の場にも
出口氏G-SHOCKのバックライトはもともと1色なんです。それをGorillazの世界観を表現するということで、初めて水色とピンクの2色で展開しています。このようにコラボ先からいただいた意見や新しいアイデアを、我々が時計という小さい世界でどう具現化するのか。それによって新しい技術が開発できたり、今ある技術を発展させることができたりしています。パッと見、基本となるデザインは変わっていないのですが、テクノロジーやソフト面が進化していく、というのもコラボの利点かもしれません。
まだコラボのない領域 演歌界とのコラボも検討!?
上間氏G-SHOCKが発売されて35年を過ぎました。今、世界100ヶ国で1億本売られているわけですが、35年で1億本しかとも言える。まだまだ世界中で知らない方もいるし、使っていない方も大勢いる。そういう意味で、常にファンを作っていくということが一番重要なのは変わりません。コラボモデルはその輪を広げる1つのツール。これからもいろいろとやっていきたいと思います。
35年間で、さまざまなジャンルとコラボしてきたわけだが、新たな領域はまだあるのだろうか?
上間氏ミュージシャンやスポーツ選手のモデルは作ってますが、記憶している限りは、俳優さんとコラボモデルを作ったことはないですね。なのでこの記事がきっかけで、一緒に作ることになったら、第1号ということになります(笑)。あとは、ミュージックジャンルでも、演歌の世界にはまだ我々も足を踏み入れたことがないんです。新しい挑戦という意味でも、『日本の演歌・歌謡シーンで長く活躍してきたタフさ』みたいな共通項で、レジェンドの方と…なんていうのも面白いかもしれません(笑)。おかげさまでこういうお話をいただくケースも増えてきたので、全部は受けられていないのですが、お互いにメリットがあれば、可能性はありますね。