視聴率は低くてもブレない 『あな番』Pが向き合うSNS時代の能動的な視聴スタイル
万人ウケする内容ではない、ブレずに突き進んできた
謎が謎を呼ぶ展開にハマる人が続出しており、ネットでは「#あなたの番です考察」でさまざまな推理が飛び交う現象が起きている。4月にスタートした第1章の前半こそ視聴率の苦戦も報じられていたが、第1話より毎話の放送後にはTwitterの日本トレンドの上位に登場しており、「深く刺さる」「語りたくなる」作品であることは当初から証明されていた。
とは言え、数字を背負うのもプロデューサーの宿命。ネットでの反響に興味を持った新たな視聴者を呼び込むための施策にも注力してきた。
「途中参入していただきやすいように、YouTubeなどで配信する5話分ごとのダイジェスト版の編集にはかなり力を入れています。ここまでの流れをわかりやすく説明するとともに、謎解きのおもしろさもしっかり残す。また『怖いドラマなんでしょ』と苦手意識を持っている方には、意外とくだらないことを全力でやっていることをお伝えできれば、というのもダイジェスト版の目的です」
盛り上がる“深読み”には台本を追記してフォローもする
「ネットの考察には、スタッフやキャストも『こんなにじっくり観ていただいているんだ』と励まされています。鋭い推理もけっこうありますね。なかには深読みしすぎな推理もありますが(苦笑)。ただ、モヤッとした読後感を残すのはミステリーではよくないことなので、盛り上がっている“深読み”については、台本を付け足すなどしてフォローするようにしています」
ミスリードや謎などの構成といった、もともとの物語のプロットは完成しており、視聴者の声やネットのリアクションによって変わることはないが、視聴者の誤解や誤認を生んでしまっているとわかった点などは、ストーリーを進行させる細かな要素や流れの一部として台本に落とし込まれ、物語の一部となることもあるようだ。それが物語をよりおもしろくし、視聴者を納得させてドラマに引き込んでいる一面もあるのだろう。
“2人のどちらか”が真犯人
「基本的には、地上波放送を観ていただければ、犯人がわかる構成になっています。ただ、よりヒントに近づきやすくなる要素もショートドラマには盛り込んでいます」
2期連続放送もさることながら、こだわリ抜いたダイジェスト版や配信ドラマなど、通常の連ドラ以上に制作者たちが汗をかいている本作。その成果は、能動的に推理に参加する視聴者を多く生み出すという形で現れている。そして、急展開の連続で視聴者をさらに引きつける第2章では、AIを研究する大学院生を演じる横浜流星がメインキャストの1人となることで、翔太(田中)の復讐劇にアクセントを加えている。
「もちろん7月期までの全20話ですべてを回収して、モヤモヤを残さない結末を迎えます。最終話の最後の最後まで真犯人が誰かを引っ張りたいのですが、“2人のどちらか”まではその前の放送で進むかもしれません。いかに視聴者を盛り上げて、おもしろく終わらせることができるかに奮闘しています」
真の黒幕の正体や目的が解明されるのはまだまだ先のこと。ネットの推理合戦もますます白熱していきそうだ。
(文/児玉澄子)