4月クールは5作が該当、連続ドラマ「ダブル主演」増加の背景
直近3年の「ダブル主演」ドラマを振り返ると、各クールだいたい2〜3作前後で推移。該当作の放送が一切ないクールもあり、見比べると今期いかにその数が多いかがわかるだろう。また、これまでは深夜帯の作品にダブル主演作が散見されていたが、今期はゴールデン・プライム帯の作品にも多く見られている点が特徴だ。
直近3年の「ダブル主演」ドラマの推移
「かつては、20代前半の俳優が主演を務める作品が最も多かったのですが、近年は『大事な時期に、低視聴率俳優のイメージをつけたくない』と映画を優先させるケースが増えています。これは30代の俳優も同様で、放送枠や作品を比較検討しながら出演作を選ぶ俳優が増え、リスクを分散できるダブル主演のほうがオファーを受けやすくなっています」(木村氏)
このことは、過去の『コンフィデンス』誌のインタビューで、鈴木おさむ氏が語った「どんなに頑張って良い芝居をしても正当な評価をしてもらえず、実態のないような視聴率で叩かれたりしますからね。スマホを開けば、それがネットニュースにもバンバン出て……。相当なメンタルじゃなければやっていられないですよね。いろんな意味で、視聴率とは別の新たな指標は必要だと思いますよ」(鈴木氏/『コンフィデンス』18年6/18号より)という言葉からも窺い知ることができる。また、昨年の話題作『アンナチュラル』や現在放送中の『わたし、定時で帰ります。』(ともにTBS系)のプロデュースを手掛ける気鋭の女性プロデューサー・新井順子氏も、昨年4/30号の同誌インタビューで、現在テレビドラマで主演を張ることがどれだけ勇気のいることか持論を展開していた。
時代と共にテレビ視聴のスタイルは目まぐるしく変化。最近は、タイムシフト視聴率や総合視聴率、動画配信サービスでの再生回数など、時代に合わせて“新たな指標”も定着しつつあるが、未だにリアルタイム視聴を重要視する流れは強い。ネットニュースでは、世帯視聴率が取れないことをフックにした“下げ記事”なども目立つ。こういった弊害が少なからずクリエイティブに影響している可能性はありそうだ。
少々ネガティブな背景がある一方、もちろんポジティブな要素もある。
「中条あやみさん、水川あさみさんが主演する今期の『白衣の戦士!』(日本テレビ系)のように、若手俳優が経験豊富な俳優と組むことで、若手の成長を促すことができます。深夜帯に限っては、ダブル主演、トリプル主演などで積極的に若手俳優を抜てきすることもできます。ダブルといえど、主演俳優の経験は大きく、自信の芽生えや課題の発見につながります」(木村氏)
近年は、吉田鋼太郎、遠藤憲一、松重豊、ムロツヨシ、佐藤二朗、田中圭など、遅咲きでブレイクする俳優も目立っているが、そういった実力派のキャリアアップにもつながっているのではないだろうか。
また、作品の内容や質の向上に一役買っている部分もあるのではないかと木村氏は語る。
「テレビ局によって制作スタンスに大きな違いが見られ、局ごとに(ドラマの特徴が)かなり鮮明になってきました。現在の視聴者嗜好に合わせるために、1話完結型のドラマが大半を占めるなか、ダブル主演にすることで、展開にバリエーションが生まれます。昨年7月期の山田孝之さん、菅田将暉さん主演の『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)や、今期放送中の西島秀俊さん、内野聖陽さん主演の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のように、ダブル主演の作品は、2人のキャラクターを対比させやすく、視聴者にアピールしやすいというメリットもあります」(木村氏)
もちろん、ダブル主演作が毎クール乱発するのでは良くない。数が増えすぎることで視聴者に飽きられてしまう、たとえば高倉健のような“スター級の俳優”が育たないといった弊害も考えられるからだ。ここ最近、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、放送中の『きのう何食べた?』など、巷で話題のヒット作が生まれ、ドラマ界は通年的に賑わいを見せるようになった。ダブル主演などの手法をうまく取り入れながら、シーンの熱がさらに高まっていくことに期待したい。