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ドラマ『dele』が切り拓いた新たなカタチ、出版不況のなか連ドラが小説家の新たな発表の場に

 アームチェア・ディテクティブならぬ車いすの司令塔と、過剰に人懐っこくフットワークの軽い現場担当がバディとなり、不都合な「デジタル遺品」にまつわるさまざまな混乱を回収する――。7月期に放送された金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)は、山田孝之と菅田将暉のW主演も話題となり、視聴者を対象に行ったドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」で全話平均87.6Pt(100Pt満点)を獲得するなど、高い満足度を得た。原案を手がけたのは作家・本多孝好氏だが、氏のドラマ脚本デビュー作ともなった本企画を実現させたのは、実は作家・金城一紀氏がKADOKAWAとともに展開する“作家と映像メディアをつなぐ”「PAGE-TURNER」というプロジェクトだった。

“物語のプロ=小説家”が映像先行でストーリーを構築

 金城一紀氏は『GO』(00年)で直木賞を受賞するなど、小説家として活躍する一方、V6・岡田准一主演の『SP 警視庁警備部警護課第四係』シリーズ(フジテレビ系/07年〜)、小栗旬主演の『BORDER』シリーズ(テレビ朝日系/14年〜)と『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(関西テレビ・フジテレビ系/17年)、綾瀬はるか主演の『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系/17年)と、コンスタントにテレビドラマの原案・脚本に携わってきた。「PAGE-TURNER」の立案者である金城氏と、同氏と共にプロジェクトを展開するKADOKAWA 執行役員の堀内大示氏、双方から本取り組みについて話を聞いた。

「『PAGE-TURNER』というプロジェクトがきちんと名前を冠したのは15年ですが、『BORDER』の頃からすでに原型は動き始めていました。小説を原作とする映像作品ではなく、最初から映像化を前提とする企画を小説家が本気で考えたらどうなるか、という発想です。作家というのは、世界観を構築し、キャラクターを造形し、物語を展開させることに関してはプロですから、これまでにない映像作品が生まれるのではないかと考えました。

 単純に、映像業界にはより豊かな選択肢を提示できるし、小説家にとってはそこでの経験が自身の小説にフィードバックもできます。しばらくは僕の企画ばかりでやってきましたが、今回の『dele』で、友人でもある小説家の本多孝好さんを巻き込むことができました。彼の原案を元に、彼自身や私も含む複数の脚本家が参加するドラマを世に送り出すことができたことで、いよいよ『PAGE-TURNER』が本格稼働しつつあるという状況です」(PAGE-TURNER/小説家・脚本家 金城一紀氏)

金曜ナイトドラマ『dele』のドラマ満足度推移

常に放映枠を抱える「連続ドラマ」が大きな出力先に

「PAGE-TURNER」は、LLP(有限責任事業組合)という形態のプロジェクト。皆がフラットな関係性で発言権を持ち、参加・離脱も簡単にできるという自由度の高さからの選択だという。KADOKAWAからは編集者2名、映像担当2名が参加している。堀内氏は映像の分野で同プロジェクトに携わる。
  • PAGE-TURNER/KADOKAWA 執行役員 堀内大示氏

    PAGE-TURNER/KADOKAWA 執行役員 堀内大示氏

「週1回ほどのペースで定例会を開き、プロジェクトの進行確認と新企画の磨き上げなどを行っています。金城さんとは、もともと作家と担当編集部としての関係性はあったのですが、映像方面にもどんどん広がっていく才能にどう寄り添っていけるかと考えていたところに声をかけていただいて。現状、金城さんのビジョンやアイデア、渾々と湧いてくる発想をどう具現化するかという面でサポートしています。まずは、映像企画としてよりパワフルで魅力的なものに練り上げるため、俳優さんも含めパッケージ提案できるようブラッシュアップすること。もちろん書籍化など多メディア展開の際にも、その方法論から共に考えていくことも重要な作業です」(PAGE-TURNER/KADOKAWA 執行役員 堀内大示氏)

 オリジナルの映画企画がなかなか通りにくい現在、常に放映枠を抱える「連ドラ企画」が大きな出力先となる。今も複数の企画が同時進行で検討されているとのこと。

「まだ金城さんの企画がほとんどなのですが、今後はほかの作家さんの企画も増えていくはずです。ほかの出版社が主戦場という作家さんでも、あるいはしばらく小説が書けずにいるといった方でも、もしも映像化を前提にした物語のアイデアが眠っているなら、ぜひ一度コンタクトしてみてほしい。優れた企画というのは、ほんの数十秒の簡単な説明を聞いただけでも、これは行けると直感的に判断できてしまうもの。そうした強靭でシンプルな企画は、テレビ局さんなど映像制作側も常に求めているものだと思います」(堀内氏)

そのまま海外でも通用するような、上質なドラマ作りに挑む

 本多氏に声をかけて最初に上がってきた『dele』のプロットも、そんな強さを備えたものだったという。とはいえ、“良い小説家=良い脚本家”とは必ずしもいえないのでは。
  • 18年5月25日に発売された、小説版『dele』(角川文庫)

    18年5月25日に発売された、小説版『dele』(角川文庫)

  • 18年6月15日に発売された、小説版『dele 2』(角川文庫)

    18年6月15日に発売された、小説版『dele 2』(角川文庫)

「当然、小説と脚本は構造も書き方もその性質はまったく異なります。個人的には、映像企画と小説作品は完全に分けて最初から考えますが、それが誰にでもできる簡単な作業ではないことも承知しています。『PAGE-TURNER』としては、作家側にも企画・原案のみ提供とか、小説は別の人に書いてもらうとか、多様な選択肢が用意できます。経験上かなり大変な作業ではありますが、脚本まで自分で書きたいという場合、そのチャレンジは誠意を持ってバックアップもする

 ですが、作家側のわがままを押し通すつもりはまったくない。万が一、ある小説家が何度直しても形にならない脚本しか書けない、といった場合、最終的に僕が全面的に書き直すくらいの覚悟はあります。幸い『dele』ではそんな事態にもならず、ドラマも高い評価がいただけて、仕上がりにも満足しています。でも、まだまだここから。リメイク権が売れて喜ぶのではなく、そのまま映像作品として世界の人がそのまま楽しめるような、普遍的な構造と魅力を持ったドラマが日本でも作れるはず。そのためにも、制作サイドには小説家の力をもっと有効活用してほしい。そのための結節点になれれば」(金城氏)

 出版物全体の売上が連続して縮小傾向を続ける状況のなか、作家という特殊な才能を持つ人的リソースの新たな出口戦略としても、「PAGE-TURNER」の試みは大きく注目される。今後のさらなるプロジェクトの広がりと成果に期待したい。

(『コンフィデンス』10/1号掲載)

文/及川望

提供元: コンフィデンス

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