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DLE、アニメ界でクリエイターとユーザーの新たな関係を築くブロックチェーン活用

DLE資料より

DLE資料より

 エンタテインメントシーンにおける活用が注目を集めているブロックチェーン。『秘密結社 鷹の爪』などのIPを持つDLEの子会社DLEキャピタルは、クリエイターとファンを直でつなぐ、アニメの分散型エコシステムの開発に乗り出した。そこで描かれる日本アニメの未来を探る。

アニメアートの取引をブロックチェーンで管理

 DLEは自社IPに加え『文春くん』など他社IPの共同開発も手がけつつ、東京ガールズコレクションやamadanaといった強力なブランドやコンテンツ群を傘下に、迅速かつ経済合理性の高い海外展開も積極的に行っている企業だ。同社の取締役CFOであり、DLEキャピタル代表の川島崇氏に、ブロックチェーン技術を活用した新たなビジネスモデルを開発中のシンガポールのBlockPunk Pte.(ブロックパンク)との提携の狙いや、事業化のロードマップを聞いた。

「ブロックパンクが作ろうとしているのは、クリエイターとファンをブロックチェーン上のスマートコントラクトで直接つなげる仕組みです。まず、運営するプラットフォーム・Crypto Anime上で有名なアニメ監督や漫画家が作成したオリジナルのデジタルアート(Crypto art)をユーザーに販売していきます。この作品の取引記録が、公開された情報としてブロックチェーン上に随時更新されていく。そこには著作権管理や所有権の移転といった情報も含まれます。最初に売買が成立した時点だけでなく、買った人が別の誰かに所有権を売却していく際にも、設定された一定の割合がクリエイターおよび権利者にそのつど支払われていきます。プラットフォーマーが中央集権的でそれらの取引を管理するのではなく、分散されたシステムで自律的に取引が行われていくことになります」

 さらに、時価で作品が再販され続けるような流動性を確保するための仕組みも検討中。今年9月頃には、著名クリエイターの手がける作品をある程度の数まで品揃えできるよう準備が進んでいるという。

「過去に日本のNetflixでコンテンツディレクターを務めていた人物がブロックパンクのCEOですが、彼は英国人。技術面では優秀なCTOが支えていますが彼はインド出身。実は肝心なコンテンツ供給源となるはずの日本のアニメ界、映像業界との、特に立ち上げ期の密なコミュニケーションが課題の1つでした。そこで、私たちが資本・業務の両面でサポートすることで、うまく橋渡しができればと考えたわけです。まずはいわゆる1枚絵のアート作品を販売していきながら、とくに人気の高いキャラクターや作品については、独自の仮想通貨を新規発行するなどして出資を迅速かつオープンに募り、オリジナルのアニメシリーズ化や長編映画化をしていきたい。そうやって完成した長編作品などのストリーミング配信にもブロックチェーンを使い、クリエイターだけでなく出資者たちも永続的に報酬を得られるような仕組みを想定しています。ブロックチェーンの分散型エコシステムによる新しい成功報酬の仕組みができれば、数少ない大規模配信プラットフォームに依存しない選択肢の1つになると考えています」

世界の日本アニメファンの熱量の高さを提示できる

 2018年内には、こうしたエコシステムを構築するための原資となる独自トークンの発行による資金調達を予定しているとのこと。昨今では、仮想通貨やICOの乱発に対する逆風も一部ではあるが、その影響はないのだろうか。

「基本的に、ブロックパンクはグローバル市場を見据えて起業されていますし、日本のアニメやコミックのファンは、国内にだけいるのではありません。ICOに至るまでには、ある程度のサービス稼働実績も可視化できると思いますので、正直さほどの影響はないと見ています。むしろ、日本のクリエイターや作品を愛する人たちがつながるコミュニティの熱量の高さを改めて世界に提示できることを期待しています。ブロックパンクのエコシステムを整備することで、日本流のアニメ領域だけでなく、近い将来にはより多様なエンタメ系コンテンツにアクセスできるようにしていきたい。ブロックチェーン技術は、改ざんや違法コピーに対する大きなブレイクスルーでもあります。我々のエコシステムのなかで音楽作品が重要な領域を占めていく可能性も大いにあると考えています」

「事実上、改ざんがほぼ不可能」であることが最大の特徴であるブロックチェーンを活用した、新たなビジネスの萌芽が生まれつつある。引き続き注目したい。
(文:及川望)

提供元: コンフィデンス

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