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【TALK-R 第10回】バンダイナムコアーツの代表2人が語るアニメの未来

 バンダイビジュアルとランティスが合併し、4月1日よりバンダイナムコアーツとして新たなスタートを切った。それぞれブランド名は残しつつ、映像・音楽分野での強みを活かしながら、より深く・濃く両者のシナジーを生み出していく。さっそく新会社のキーマン2人に今後の展望や、2人が見据えるアニメの未来を聞いた。

互いの思い込みを見直して、フラットに関係性を再構築

  • バンダイナムコアーツ 代表取締役社長 川城和実氏

    バンダイナムコアーツ 代表取締役社長 川城和実氏

――川城さんはバンダイビジュアル、井上さんはランティスという別組織の社長をずっと務めておられたわけで、一緒に仕事をするケースも多かったこととは思いますが、それぞれ専門領域は異なります。まず統合についての狙いを教えてください。
川城 もともと06年にランティスとバンダイビジュアルに資本関係が生まれて、それから12年が経ちます。さまざまな作品やイベントなどでずっと協力しながらやってきましたので、ひとつの組織になることは、ある種の既定路線という意識もあった。いずれどこかのタイミングで、という思いですね。今回はグループの新しい中期計画のスタートと、それに伴う組織再編というきっかけがあり、それも大きな理由のひとつ。グループ内の事業会社の集合体は、それまで3つのSBU(戦略ビジネスネスユニット)としていましたが、それが5つのユニット体制となり、そのひとつが「映像音楽プロデュースユニット」。映像・音楽コンテンツやパッケージソフト、ライブイベントの企画・開発・販売までを担いますが、このユニットの中核となる組織として、バンダイナムコアーツが生まれたということです。ただ、こうした再編の以前から、すでに基本的にはひとつのグループという感覚で動いていました。
井上 そう、今までもかなり一体化はしていたと思います。社員旅行などにも一緒に行っていましたし(笑)。そういう意味では、音楽・ライブエンターテインメントと映像がさらなる一体化をするための新会社ともいえます。ランティスというのは、業界でも珍しいアニメの音楽関連の制作に特化した会社で、グループ内はもちろん、外部のパートナーさんとも自由に連携しながら事業を展開できていました。そうしたフットワークの良さを活かし、既存の「Lantis」「Kiramune」「GloryHeaven」という3レーベルはそのまま残しつつ、映像制作チームとはさらに密なコミュニケーションをとりながら、新たなチャレンジをしていくことになると思います。
川城 もちろん、会社が違えば歴史も文化も仕事の考え方もそれなりに違う。ランティスは自由な組織というイメージが強いですが、これはバンダイビジュアルには欠けていた柔軟性でもあります。どんな組織でもそうですが、だんだん会社らしくガバナンスされてくると、ある種のヒエラルキーのなかで仕事を進めることに慣れてしまう。合理的で有効性もあるのですが、たとえば新しい企画を考えようといった場合には、ある種の形式主義は明らかな障害にもなり得ます。とはいえ、すべての場面で自由さばかりが尊重されるような事態も避けなければいけない。要は、相互に良いところを補完しあうこと。ランティスのレーベルだけでなく、「EMOTION」「BANDAI VISUAL」というバンダイビジュアルのレーベルも含め、それぞれ独自のカラーをきちっと担保していけるルールや仕組みを改めて設計していくことが急務だと感じています。2つの社名はなくなっても、レーベル名、ブランド名は継続しますので。
井上 バンダイビジュアルとは、ランティス設立当時から一緒の作品に関わっていましたが、自由に質の高い映像を作りながらブランド力もあり、優れたプロデューサーたちも大勢いて、ある種の憧れの存在でもありました。これまでの音楽面でのプロデュースだけを任せてもらっていた状態から、より一歩踏み込んだ意見交換などを通して、映像と音楽の垣根を越えた良いコラボを実現したい。そのためにも、たがいの思い込みを一度すべて見直して、フラットに関係性を再構築していく作業も必要だと思います。その上で、音楽を重視したアニメや映像、ゲームなどの開発にもっと深く関わり、追求していきたいですね。

社名に恥じないクオリティを目指して取り組む

  • バンダイナムコアーツ 代表取締役副社長 井上俊次氏

    バンダイナムコアーツ 代表取締役副社長 井上俊次氏

――2008年頃から、ランティスさんは海外でのアニソン関連イベントやライブも積極的に行ってきました。周年イベントとして日本だけでなく海外でも知られる「ランティス祭り」は、20周年となる2019年にも開催予定に変わりはないのでしょうか。
井上 開催場所の選定を含め、まさに準備中です。『Anisong World Matsuri』の開催に向けてソニー・ミュージックエンタテインメントさん、アミューズさんといった外部のパートナーさんたちとも、話し合いを進めています。アミューズランティス・ヨーロッパで社の展開なども変わらず。社名はなくなっても、「ランティス」というブランドといいますか、スピリッツ自体は継続しています。今後も、グループ会社であるとかないとか、そうした垣根を越え、良い音楽、良いコンテンツを生むためのコラボ展開については、他社さんの作品でもどんどんやっていく。これまで通り、オープンに対応していきます。
川城 結局、良いものを作るのが第一のプライオリティという意識は共有できています。だからこそ、あえて新社名が「アーツ」なんですよ。ちょっと気取ってるんじゃないか、とも思われそうですが、自負でもあり、社名に恥じないクオリティを目指して取り組むということでもある。どうも、我々のグループに関しては、商売上手なんでしょ、というパブリックイメージがあって(苦笑)。社内でもそれに引っぱられて、数字を作るためには、という発想がどこかにあったりもする。でも、数字は結果でしかなくて、まず良いものを作る、そこから数字がついてくる、という原点をこの機会に改めて確認したいとも思っています。外部とのコラボから得られる豊かな知見も、本当に重要です。

将来的には「IP創出・育成」が軸になることは間違いない

――音楽業界全体の傾向も同じく、アニメ関連でもやはり、映像・音楽のパッケージ売上と、ライブや配信、グッズ、ライセンスなどの売上バランスが変化しています。今後のアニメ業界をどうご覧になっていますか。
川城 パッケージソフト市場は年々縮小傾向にありますが、アニメ業界に限らず、お客様のコンテンツの楽しみ方、遊び方が大きく変わってきているだけだと考えています。たとえば、ひとつの作品に対しても、パッケージを購入し手元に置きたいのか、配信で視聴したいのか、関連グッズが欲しいのか、ライブやイベントに行きたいのか、コミュニケーションツールとして楽しんでいるのか。作品ごとにもそのバランスは変わってきますし、昔ながらの方程式やビジネスモデルのような正解が存在しない状況となっている。たしかに混沌としていますが、これまで以上に楽しみ方の幅が広がっていることで、新しいお客様の流入などもあり、市場全体は拡大しています。では、楽しみ方が多様化する中でお客様をどう満足させるのか、どういうタイミングでどういうビジネスを展開するのが最適なのか、その見極めがますます大事になっていると感じます。そういう意味で、パッケージビジネスはまったくダメになっていくという観測は誤りで、全方位の展開のなかで戦術のひとつとして、効果的なツールになっていくはずだと考えています。
井上 そのコンテンツ形式に価値を感じる方は、応援するための表現手法として、パッケージを購入してくれているんだな、というのは実感します。だからこそ、イニシャル枚数がどれだけ制限されても、CDなどの物理メディアには一定の意味と効果がある。ライト層に関しては、実は海外市場においても課題のひとつと考えています。たとえば、あるアニメなりゲームなりが中国や韓国で新規展開しようとする際に、主題歌などを現地の言葉で改めて歌って収録すれば、あえて日本語で楽しみたいというごく一部のコアファンはともかく、一般のライト層により強くアピールできる。聴けばストレートにちゃんと伝わるわけですから。ミュージシャンが後日、現地に行く場合などにもそのバージョンは圧倒的に喜んでもらえるでしょうし、そういう意味での努力も、今後もっともっと重要になってくると考えています。海外のファンにしっかり届くような音楽やライブ制作、映像づくりのために、カラオケだけ渡して歌は現地でお願いします、といった方式ではない、きちんと日本側もクオリティをコントロールできるローカライズは大事になってきますよね。
川城 将来的には「IP創出・育成」が軸になることは間違いない。そのためには、ブランド価値を保つための品質の管理と同時に、IPを生むアーティスト、クリエイターをどう育てるか、そうした人材開発も大きなテーマになってくると思います。それは同時に、理屈やセオリーが通じず、不確定性がとても高い領域でもありますが、そのリスクはバンダイナムコアーツとしてきちんと背負っていかなければならないと考えています。短期的な状況の変化に一喜一憂することなく、中長期的な視点で高いクオリティのIP、コンテンツを持続的に生み出すことができる環境をどうやって構築していけるか。IPを基軸にビジネスを展開するグループの最前線を担う組織のひとつとして、今後、重視していきたいと思います。

提供元: コンフィデンス

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