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『崖っぷちホテル!』“楽譜”の台本をどう自由に演奏するか

 三代目J Soul Brothersの岩田剛典が、あるホテルに超ラフで自由な謎の男として登場するところから始まる『崖っぷちホテル!』は、昨今では珍しい、舞台がホテルのみのワンシチュエーション・ドラマ。そこに込める想いと狙いをプロデューサーの福井雄太氏に聞いた。

クセになる感覚を描く土田英生氏の脚本

「自分がドラマを作っていておもしろいと思うのは、ライブ感のあるものなんです。台本があって、リハーサルをして本番が始まるという工程のなかで、想像を超えて、俳優たちの演技で物語のおもしろさがどんどん膨らんでいく。そういうお芝居の魅力の詰まった会話劇を作りたいと思って企画しました」

 脚本を担当したのは、『斉藤さん』シリーズを手がけ、また自身が代表を務める劇団MONOの活動も続けている土田英生氏だ。

「『斉藤さん2』で土田さんとご一緒して、その空間にいる人物の細かい人間臭さを表現できて、それでいて、その人間臭い人たちが王道の物語のなかで素直に動いていくものを作れる人だと感じていたので、またご一緒したいと思っていました。今回は、もっとクセになるような感覚を描いていて、これまでの作品とはまたひと味違うものになっています」

 そんな福井プロデューサーにとって、台本とは“楽譜”という。
「台本は素敵な楽譜でないといけないと思うんですけど、それをどう演奏するかは自由。演奏家である俳優たちが、“乗れる”楽譜であってほしいし、こんな音を出しましたっていう驚きがあるほうが観ている人たちも楽しめます。今回も撮影を始めてみて、「こんな音楽になったか!」と思う瞬間が毎日のようにあります。たとえば、ホテルの総支配人を演じる戸田恵梨香さんは、僕や土田さんが最初に考えている役の芯の部分は残したままで、「このセリフで笑うんだ!?」というお芝居をされることもありました。しかも後になって全体を見ると、「こういう理由だから笑っていたのか」という繋がりが理解できたりして、毎回、お芝居を現場で観るのが楽しみでもあります」

俳優それぞれが個人技を持ち寄ったチーム戦

 映画への出演など近年、演技活動に力を入れている岩田剛典のこれまでにない顔も引き出している。

「主人公の宇海直哉は、何を考えているのか読めない人。でも彼の言った通りに動くと、魔法がかかったように素敵なことが起こる不思議なキャラクターなんです。それって、岩田さんのイメージそのままだと思いました。いい意味で何を考えているのかわからなくて、でも岩田さんにあの笑顔を見せられると、誰でも、じゃあがんばるかって思える。それに、野性的という意味ではなく、自分の本能に忠実で、眠たいならその場で眠ってしまうような天才っぽいイメージもあって。そういう魔法使いのような役を岩田さんにやってもらいたかったんです」

 戸田や岩田の演じるキャラクターのほかにも、ひと筋縄ではいかないキャラクターが総出演の今作。ポスターでも、総勢12人のキャストがずらりと並ぶビジュアルは圧巻だ。

「最初から12人の登場人物全員を載せたいと思ってデザイナーに伝えたところ、『最後の晩餐』のようなアイデアを出してくれました。1人ひとりのポーズにもキャラクターが表れています。このドラマは、俳優それぞれが個人技を持ち寄ったチーム戦だと思うんです。それが集まって完成している作品。だから、このポスターからも、クセモノたちが集まっているイメージを伝えています」

 ここ最近の連続ドラマでは、すっかり少なくなっていたワンシチュエーションのコメディ作品。今の視聴者層にどう受け止められるのか、興味深いところでもある。

「最近の視聴者は、多メディア時代のたくさんの選択肢のなかで自分が何を観たいかをしっかり意識して選んでいるので、目が肥えている人が多い。王道のものを好きな人が実は大多数いる一方、そのなかに多種多様な嗜好もある時代。このドラマは、王道を観たい人も、クセのある俳優たちの演技を堪能したい人も楽しめる、角度のある作品に仕上がっています」
(文:西森路代)

『崖っぷちホテル!』

出演:岩田剛典、戸田恵梨香、浜辺美波、中村倫也ほか
日テレ系 毎週日曜 夜10時30分放送
【公式サイト】(外部サイト)
(C)日本テレビ

提供元: コンフィデンス

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