ソン・ガンホ、韓国現代史最大の悲劇を描く作品に込めた想い
プレッシャーで一度は断った出演オファー
ソン・ガンホ光州民主化運動は韓国現代史の最大の悲劇。出演オファーをもらったときに、大きなプレッシャーを感じたことは事実です。“果たしてソン・ガンホという俳優が、このような歴史的事実を表現するに値するか?”“観客を失望させない良い作品を作れるか”という事がプレッシャーとなり、一度は断りました。悪い意味でのプレッシャーではなく、“建設的なプレッシャー”という表現がふさわしいと思います。
――それでも出演を決心した理由は?
ソン・ガンホ一度は断ったものの、その後、時間が経つにつれて映画のことが気にかかるようになったんです。この作品を世の中に出す意義と、そこにあるエネルギーが私の心を刺激していたと思います。この作品が持つ情熱を観客と共有したいという切実な想いが募っていきました。
歴史的な事件を目撃した1人としての視点で演じた
ソン・ガンホ光州事件を扱ったほかの映画との一番大きな違いは、基本的な人間の常識と道理における話を扱っている点だと思います。(演じた)マンソプは、11歳の娘を1人で育てるシングルファーザーで、古びたタクシーが全財産という平凡なタクシー運転手。外国人ジャーナリストを乗せて光州に行き、通行禁止になる前にソウルに戻ることができれば、滞納している家賃が払えるほどの報酬をもらえるという話を聞きつけ、言葉も満足に通じないドイツ人記者を乗せて光州へと向かう人物です。マンソプが光州に向かったのは、職業倫理の側面よりは人としての道理、つまりもっとも常識的な道理に従ったまでのことだと思います。歴史的な事件を目撃した大韓民国の国民の1人であるという視点を常に念頭に置きながら演じていました。
ソン・ガンホ過去の歴史を扱っているからと言って、特別な意識を持つ必要はないと考えています。確かに本作は近現代史において稀に見る悲劇を扱っていますが、悲劇的な側面を悲しみだけで表現したり、事実のみを描こうとしたりはしませんでした。そういうことよりも、キャスト、スタッフ全員がこの映画を通じて何を伝えたいかという部分について考え、希望の持てる前向きな映画を作ろうとしていました。撮影中は、犠牲になった方々の想いや、光州の状況を世界に知らせるために努力した方々の高貴な精神を作品に込めて、多くの人たちに伝えるための努力をしました。本作が温かい映画として、みなさんに記憶されるように願っています。