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半崎美子、ショッピングモールで歌い続ける理由

約17年間に及ぶ個人での活動を経て、今年4月に1stミニアルバム『うた弁』でメジャーデビューを果たしたシンガー・ソングライター半崎美子。NHKみんなのうたでオンエアされた「お弁当ばこのうた〜あなたへのお手紙〜」を含むミニアルバムはロングセールスを続け、11回のTOP100入り、6回のTOP50入りを記録(9/4付現在)。そして、9月6日には、1曲目に収録されていた「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」が全国からの大きな反響を受け、リカットシングルとしてリリースされた。ライブ活動のみで全国にファンを増やし続け、“ショッピングモールの女王”と称されてきた彼女は、さまざまなメディアで取り上げられるようになった現状をどう捉えているのか。知名度が上がってもなお、ショッピングモールでのライブを続ける理由も聞いた。

17年の活動支えたのは“出会い”、辞めたいと思ったことなかった

――メジャーデビュー作となった1stミニアルバム『うた弁』がロングヒットしています
半崎美子 発売から数ヶ月経っても愛されているという現象に、単純に驚きと喜びがありますね。ラジオやテレビの露出がこれだけ数字にダイレクトに反映するんだということに対して驚きましたし、改めて自分の歌を求めてくれる人たちがこんなにたくさん眠っていたんだというか、まだ自分が出会っていなかった方々と出会えた喜びみたいなのが大きかったです。
  • 17年4月5日発売のメジャーデビューミニアルバム『うた弁』

    17年4月5日発売のメジャーデビューミニアルバム『うた弁』

――半崎さん自身はこの現象をどう捉えてますか? 長いスパンで愛される作品になった理由はどこにあると考えてます?
半崎 ショッピングモールでサイン会をやっていると、普段まったくCDを買ったことがないとか、60年生きていて初めてCDを買いましたっていう方がすごく多いんですよね。だからどちらかというと、普段からよくCDを買っている音楽好きじゃない層の方たちにも届いていたことによって広がりが出たんじゃないかな?という風に思います。ライブに行く習慣がない方が、たまたまショッピングモールで出会ってくださったり、テレビやラジオがきっかけで知ってくださった方たちが、私の歌に込めた想いや意思、生き方に共鳴してくれたのかなって。

――曲や歌詞、声はもちろんのこと、人としての半崎さんに惹かれている人が多いんですよね。心の深い部分でわかりあえる人に出会えたっていう喜びがあるのかもしれません。
半崎 ライブの後のサイン会でのお話も、楽しくおしゃべりする会話というよりも、心と心でやり取りをする対話のような感じがあって。「出会ってくれてありがとう」とか「歌い続けてくれてありがとう」っていう言葉もたくさんいただくんですね。たぶん、いま私が「まだ出会ってない方たちと出会えた」とか「眠っていた方たちと会えた」って感じているのと同じように、私の歌に出会ってくれた方も、自分自身の中に眠っていた“初めての感情”が呼び覚まされたように感じていて、「歌にこんなに力をもらえるとは思わなかった」とか「生きる力をもらいました」って言ってくれる。お互いに初めての出会いみたいな形で、すごく結びつきが強い感がしていますね。

――その出会いの場となっているのがショッピングモールなんですね。
半崎 そうですね。ライブ会場やフェスのように非日常の空間で楽しむ場も好きなんですけど、ショッピングモールは本当に日常の空間で、音楽を聴きに来る場所ではないんですよね。すごく雑多で下手すると歌声も流れてしまうような場所なんですけど、そこで私は17年間、どうやったら歌を届けられるかっていうのをずっと考えてやってきていて。人が行き交う中でも、たった1人に対して届けられる瞬間というのがあるんですね。そこで出会ってくれるのは、自分自身がいま問題を抱えていたり、大切な方を亡くされたばかりだったり、病気に苦しんでいたり、いろんな方がいらっしゃって。それこそ、たまたま買い物に来て、一見、家族で楽しそうに買い物しているように見えるんだけど、本当にいろんなものを抱えて生きていて、そういうことをサイン会で私に吐露してくれるんです。それは歌が呼び起こしてくれた溢れる感情の1つで。歌によって、初めて出会った私に打ち明けてくれるっていうことの音楽の力のすごさと、私自身もそれを受け止めて、自然と自分の中に沈殿していったものが歌になって、その歌がまた次の出会いを呼んでくれる。だからいまは、自分の気持ちを歌っていますというよりも、誰かの気持ちを自分のフィルターを通して曲にしていくっていう形(曲作り)が多くなりましたね。
――17年間というのは決して短い年数ではないと思うんですが、どうして続けてこられたと思いますか?
半崎 私自身は下積みっていう感覚がなかったことが幸せだなって思いますし、すごく楽しんでやっていたんですよね。そもそも例えば、メジャーと契約することが目的ではなかったですし、そのための手段として歌ってきたわけでもなくて。だからこの17年間は、自分にとってはすごく大変だったとか、苦労をしたっていう感じではないんですね。もちろん、大変だったことはいっぱいあったし、傷ついたことや、気持ちを踏みにじられるようなこともたくさんあったんですけど、そういった出来事が取るに足らないことだと思えるくらい、もっと素晴らしい出会いをたくさんしているし、歌い続けてきて良かったなって思える瞬間を何度も味わってる。音楽を通して素晴らしい出会いをしたっていうことが、17年間続けてこられた理由だと思います。辞めたいと思ったこともまったくなかったです。

――では、半崎さんが歌う目的、モチベーションとなっているものはなんでしょうか?
半崎 もともと歌い始めた時は、こういう気持ちを歌いたいとかはまったくなくて。ただ、歌が好きで、ステージに立って歌うことへの憧れだけで上京して。歌い続けていくうちに、やっぱり人との出会いに自分がすごく大きく影響を受けたし、自分自身の生き方や心持ちにすごく作用していて。世の中にいるたくさんの人たちと出会える数はわずかだと思うんですけど、その中で接点を持ってくれた人たちの人生の背景を知ったり、その方の生き方に多少でも触れる機会をもらって。そうやって、人の人生に触れれば触れるほど、自分自身の心も深くなっていたというか。自分自身が歌を歌って発信して、それを受け取ってくれる人たちがいて、私も皆さんから受け取るものがあってっていう。その交流に音楽の力だけじゃない、人としての“魂の交流”のようなものを感じて。歌っていく理由がどんどん変化している感じがしますね。

――いまはコミュニケーションの手段の1つ?
半崎 それが大きいですね。あとは、歌を通しているだけで……例えば、歌だけがあっても、別になんでもなくて。その人に聴いてもらって生きてくるんですよね。私も、自分の歌で泣いてくれたり、「苦悩から解放された」とか、「明日へ向かう勇気をもらった」って言ってくださることで救われたり、自分自身を肯定できたりもする。世の中に無傷の人はいないので、みんながみんなそれぞれの哀しみを背負っていて。そういう中で、誰かの悲しみは、誰かの悲しみを治癒する力を持っているんだなってすごく感じて。それが自分の歌を通して――例えば、「明日へ向かう人」は、ある家族に対して作ったとてもパーソナルな曲だったのですが、いろんな方から「この歌に励まされました」って言っていただきました。そういう出来事は音楽ならではだなというか、歌の力を感じましたね。

桜と根と種、3つが結晶みたいになった1stシングル

――ミニアルバムからのリカットシングル「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」もそうですよね。まったく同じ経験をしていないとしても、失ってしまった人に思いを馳せる契機になります。
半崎 そうですね。『うた弁』の発売後、いろんなところで歌ってきましたが、驚くくらい同じような経験をされていたり、同じような気持ちを抱いている方にお会いしました。「亡くなったわが子が忘れられていくことがすごく怖い。だけど、この曲で思い出させてくれる」っていうお手紙を手渡ししてくださった方もいて。どれくらいかはわからないですけど、大切な人がこの歌の中で生き続けられるというか。あの桜を見たらいつでもその人を思い出すのか、この歌を聴いたら思い出すのか。そういう風に亡くなった人って目には見えないけれど、心の中やその人が大切にしていた何かに存在していて。至るところにその人の存在があって、それを感じられる瞬間がある。私の歌が大切な人を想うきっかけになったりするのはすごく嬉しいし、ありがたいですよね。
  • 17年9月6日発売の1stシングル「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」(通常盤)

    17年9月6日発売の1stシングル「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」(通常盤)

  • 17年9月6日発売の1stシングル「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」(特別盤)

    17年9月6日発売の1stシングル「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」(特別盤)

――もともとはどんな思いから生まれた曲だったですか?
半崎 ある高校で、私の友人の同級生が卒業前に亡くなってしまって。その方を思って書いたんですけど、春だけに特化している歌ではなくて、広い意味で鎮魂の歌であって。桜自体は春に注目されがちですけど、花をつけた時だけじゃなくて1年中息づいていて。たぶん心の中に生き続けている人って、年中息づいていて、いつでも思い出すような存在じゃないですか。そういう意味でも、この曲は季節を問わず歌い続けたいという気持ちがあったので、今回リカットさせていただきました。

――さらにカップリングには、「感謝の根」と「種」が収録されています。
半崎 「種」はインディーズ時代に宮城・石巻に行った時に作った曲で、「感謝の根」はその4年後、今年の3月11日にまた同じ場所を訪れた時に感じた思いを書いた新曲なんです。「種」から4年後に石巻に行った時、すごく感謝が溢れていたんですよ。それで、「あ、最後に残るのは感謝なんだな」という思いが強くなって。いろんな困難に直面したりする時こそ、根を張る時季で。私自身、17年間活動して来た中で、草の根的な活動をしていて。種をまいて、根を張っていた時期がすごく長くて。ある意味、陽の当たらない場所で活動していたかもしれないんですけど、土の中でも光を感じられる瞬間があって、そんな時こそ、希望の歌が生まれたんですよね。だから、「感謝の根」は自分にも重なる部分があって。お客さんとの出会いや、いろんなもらった言葉を栄養にして、根から吸い上げて、何度でも花を咲かせられるなって思ったんですね。それは良いことだけじゃなく、いろんな失敗も全部ちゃんと肥やしになって、栄養になっている。だから、桜と根と種は3つが結晶みたいになっていて。シングルなんですけど、1つの作品というイメージですね。

――リリース後にはまた、ショッピングモールでの発売記念ミニライブ&サイン会が予定されています。この活動はしばらく続けていきますか?
半崎 スタイルとしては特殊かもしれないんですけど、これをなくしては私の活動、私の歌、私の生き方は成り立たないので、これからもやれる範囲で続けていこうと思っています。もしかしたら今後、あまりにも人が集まりすぎて無理ですってモール側から言われることがあるかもしれないけど、私はできる限り続けていきたいっていう思いがあります。ただ、どのような形になっても、自分の作る曲や活動においての信念はまったく変わらないので、どうなっていくのかは自分でも期待というか、気になるところではありますね。

――では、最後にその揺るがない信念を聞かせてください。
半崎 最終的には自分の曲が、自分より長生きするのが自分の目標というか望みですね。自分がこの世からいなくなっても作品の中で生き続けられるような曲、長く歌い継がれていく曲をこれからも書いていきたいです。そのためには、たくさん曲を生んでいかなければいけない。あとは、自分自身がライブで生きているので、日本中を回って歌を届ける。そして、お客さんから感情を受信するのが私の一番の原動力なので、繰り返しにはなりますけど、できる限り細かく、ライブは続けていきたいですね。
(取材・文/永堀アツオ)

提供元: コンフィデンス

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