業界初“没入感”を追求するIMLの360度VRデモ映像
3D映像と立体音響の融合で唯一無二の“没入感”を実現
ヘッドマウントディスプレーHTC VIVEとヘッドホンを装着する、5分程度のデモ映像では、鹿のキャラクターが周囲360度を歩くCG映像、すみだ水族館を映した実写にCGを加えた映像など、5分の間にそれぞれ2Dと3Dの映像、音響を交互に映し出し、その違いを体感できるようになっている。このデモ映像は、360度の立体空間で、音響も立体的に広がるのが特徴。歩いている鹿のキャラクターの方を見れば、その方向から足音が聞こえるが、視線をほかに外すと、視界の外の鹿がいる方向から歩いてる音が聞こえてくる。視覚と聴覚からまさにその場にいるかのような没入感に浸れる映像になっている。
「アンビソニックの技術は70年代に考案されたものですが、いまのVR映像を映したときの音を追いかける技術としてアンビソニック音響に着目しました」(IML・由良俊樹氏)
2Dと3Dの映像、音響を比較できるデモ映像が完成
「カメラセンサーとマイクがそれぞれ8方向に8つ付いているので、それをレンダリングして、音もアンビソニックフォーマットで取り出せるので使用しています。360度の3D映像を撮影するとともに、相乗効果となる、顔を向けた先の音を追いかけられる立体的な音響を作ることができます」(村越宏之氏)
「コンテンツ東京2017」では、このデモ映像以外にも、すみだ水族館、首都高速、青山の桜並木、六本木のミッドタウン、渋谷の夜景など、東京都内各所の映像を集めたコンテンツ『東京VR』も用意。まるでその場にいるような最新VR体験を、来場者に広く提供する。これまでにもゲームで立体音響を活用したCG映像はあったが、実写としては今回のコンテンツが初のものになるという。
「われわれの技術は言葉で説明してもなかなか理解してもらうことが難しい。まずはVRを体験していただきたいです。同じ映像と音響での2D、3D映像の比較は、それがどういう技術でどういう体験を提供できるのかを理解していただけると思います。そのうえで、さまざまな業種の方々とわれわれがどのようなことを一緒にできるのか、ご提案させていただけたらと考えています」(加藤欧一郎氏)
音響面の再生環境がこれからの追求すべきポイント
「ネットワーク環境を整備することが前提になりますが、たとえばライブのステージに360度カメラとマイクを設置して配信すれば、家庭にいながら、ドラムやギター、パーカッションなど自分の好きなバンドメンバーのプレイを間近で観て聴くことができます。そこではそれぞれの楽器の音の指向性も活かされます。オーディエンス側から歓声があがったら、そちら側に振り返れば、盛り上がっているオーディエンスの映像も観ることもできます。マルチアングルDVDの進化形ですね。スポーツで使用しても迫力が違ってくると思います」(村越氏)
これまで長きにわたって映像分野において数々の技術開発をリードしてきたIMAGICA。このIMLの本格始動は、次世代の映像表現のさらなる進化を期待させる。
「日々の技術進化をうまく取り込んで、ハイエンド映像を作っていかないといけない。音響面でいうと、まだまだ音の再生環境が整っていないですし、没入感についてもさらに追求するべきポイントがたくさんあります」(石井亜土氏)
IMLでは、これまでにも企業のPR映像や新作ゲームのプロモーションなどを手がけたほか、映像配信プラットフォームやVRコンテンツ制作などで成果をあげてきている。今後のIMLのVRコンテンツの動向に注目していきたい。
(文:壬生智裕)
(コンフィデンス6/26号掲載)