「後継者がいないから」「経営が苦しいから」「将来性がないから」と、
会社をたたむしかないと思っている経営者は少なくありません。
しかし、赤字であっても、売上がほとんどなくても、
買い手が見つかることは多々あります。それも高い価格で。
従業員の雇用の確保など、好条件で。
自分たちが弱点だと思っていることも、買い手にとってさほど重要ではないのです。
こうした事情や弱点を上回る「強み」があれば、必ず買い手が現れます。
特に経営者やM&Aの「売り手側」が心配するのは、
「社長の人脈だけでやってきた会社」のケース。
「こんな会社、はたして売れるのだろう」か、と。
こういう会社でも、実は社長が会社を手放した後も
事業を伸ばしていくことは可能だったりします。
『あなたの会社は高く売れます』の著者が、
意外な買い手が現れた成功事例を紹介します。
(編集/和田史子)
オーナーの人脈と手腕に依存していた
名門ゴルフ場へのツアー企画会社
「こんな会社、売れるわけないですよね」
会社をたたむしかないと思っている経営者が抱きがちな12の誤解(第9回連載参照)について、今回は
3.商売がニッチ過ぎて「広がりがない」
事例をご紹介します。
セント・アンドリュース、ペブルビーチ。
全英オープンや全米オープンなど、海外ゴルフツアーに興味のある方にはお馴染みの名門ゴルフ場です。
今回紹介するのは、著名な大会が開催されるゴルフ場を押さえ、そこでプレーするツアーを企画・運営する会社のケースです。
売上は6億円、営業利益は1000万円、従業員は5人ほど。規模が小さいうえに、オーナーが常連客に「次は、どこに行きたいですか」と尋ね、常連客が「今度はマダガスカルに行きたい」と回答すると、マダガスカルのツアーを組んで募集をかけるといった、趣味と実益を兼ねたような「アットホーム」な会社です。
規模は小さいとはいえ、海外でのゴルフツアーを企画する会社では、ここが日本でもトップクラスです。誠実なオーナーが長年にわたって構築した人脈で、ゴルフ場をはじめ近隣のホテルをハイシーズンでも低価格で押さえられるため、常連客がなかなか離れていかないからです。
ただ、ニッチ分野のトップ企業とはいえ、事業構造がオーナーの信用と手腕に依存しすぎている感は否めません。
そのため「広がりがない」と判断されてしまいます。
弁護士がたった1人しか在籍していない弁護士事務所では、その弁護士がいなくなれば会社の価値がゼロになってしまうように、この会社もオーナーがいなくなれば顧客も離れていく可能性が高いからです。
しかも、この事業は他の事業や商品に転用できるようなものではありません。この会社を買い取ったからといって、いきなり「世界の釣りツアー」を催行しようとしても、人脈もルートもないために容易には実現できません。オーナーは63歳、後継者はいませんでした。ツアー中は顧客と一緒にプレーすることを求められるため、体力的にも70歳まで続けられないと考えていました。
会社の仕組み上、突然会社を売却して「はい、さよなら」というわけにはいかないという自覚もありました。顧客の引き継ぎ、ゴルフ場やホテルの引き継ぎには1年から2年ぐらいかかる。しかも、その間も自分が同行しないとスムーズな承継はできない。
オーナーは、覚悟を持って第三者に売却することを決意します。...