あなたは「自由」という言葉をどのような意味で使っているだろうか? 「自由」という言葉を辞書で引くと「他からの強制・拘束・支配などを受けないで、自らの意志や本性に従っていること」とある。そこから派生して、自分勝手に振る舞うこと、そうすることができる権利のことを「自由」だと考えている人も少なくないだろう。しかし、このような感覚でいると、海外、特にオランダに行ったときに面食らうことになる。オランダ人が考える自由は、私たち日本人のそれとは意味合いがかなり異なるからだ。では、オランダ人にとっての自由とはどのようなものなのか? それを知ることで、彼の国がなぜ売春や安楽死に対して寛容な立場をとっているのかが見えてくる。
日本に根づいていない「自己決定権」
オランダ人の言う「自由」とは?
武田隆(以下、武田) 先生は、「パートタイム労働が当たり前になると、もっと人間は自由になる」とおっしゃいました(第2回を参照)。この「自由」というのが大事なキーワードですよね。
“Liberty”に対する「自由」という訳語が広まったのは、福沢諭吉の『西洋事情』によるものという説が有力ですが、「自分に由る」という訳はすばらしい翻訳だと思います。
オランダの干拓地エリアに住む方々とお話しした時、実に穏やかなトーンで「私たちは自由を愛する人なのかもしれません」とおっしゃっていたのが印象的でした。彼らの言う「自由」というのは、どういうものなのでしょうか。
長坂寿久(以下、長坂) 先に、私たち日本人が教えられてこなかった概念として“Public”、つまり「公共」があるという話をしました(第1回を参照)。日本人の間ですっぽりと抜け落ちてしまった概念が、実はもう1つあるんです。それが「自己決定権」です。
自己決定権、英語で言う“Right of self-determination”という言葉は、国連憲章の第1条第2項に出てきます。第1条の第1項は国家間の平和について目指すべきことが書かれている。そして第2項は、その国家間の平和を実現するために、人々の状況がどうあるべきかということが書いてある。その中に“the principle of equal rights and self-determination of peoples”と2点指摘しています。
武田 人々の平等と自己決定の権利、でしょうか。...