世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。世界史を背骨に日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した『哲学と宗教全史』が「ビジネス書大賞2020」特別賞(ビジネス教養部門)を受賞。宮部みゆき氏が「本書を読まなくても単位を落とすことはありませんが、よりよく生きるために必要な大切なものを落とす可能性はあります」と評する本書を抜粋しながら、哲学と宗教のツボについて語ってもらおう。
20世紀の哲学者代表を5人に絞ってみた
20世紀の哲学の世界では、これは私見ですが、カントやヘーゲルのような大山塊(さんかい)は築かれませんでした。
哲学や宗教にとっては、20世紀は分断の時代であって統合の時代ではなかったように思われます。
2度にわたる世界大戦が起こった20世紀。
ヨーロッパの退潮と東西の冷戦、そして社会主義体制が崩壊して終わった世紀です。
自然科学が非常に進んで、いろいろなことが解明された時代でもあると思います。
なにしろ、宇宙を構成する要素(物質、ダークマター、ダークエネルギー)とその割合まで解明されているのですから。
20世紀の哲学者は小粒になったという意見もあります。
それは科学の発達によって世界から未知の部分が消滅して、奇想天外なことを考える余地がなくなったからでもあります。
ここでは、20世紀の思想界を、
◎1.フェルディナン・ド・ソシュール(1857-1913)
◎2.エトムント・フッサール(1859-1938)
◎3.ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889-1951)
◎4.ジャン=ポール・サルトル(1905-1980)
◎5.クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)
以上5人の哲学者で代表させたいと思います。
「なんと乱暴な」と思われることは百も承知ですが、20世紀の哲学の世界を語るには、5人か30人ぐらいかという選択肢しかないと僕は考えていますので、前者を選んだというわけです。
ちなみに30人のケースでは、おそらく次表(下)のような哲学者がこの5人に加わるものと考えています。
次回以降、ソシュールについてお話ししましょう。
(本原稿は、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)