大英帝国の遺産
「アルヴィス4.3リッター バンデンプラ ツアラー」は絵に描いたようなクラシックカーだが、実は2020年現在でも1937年式として新車注文が可能な英国車だ。そのカラクリを解き明かすとともに、戦前のスーパーカーの走りを味わってみた。
再び動きはじめたアルヴィスの歴史
英国の名車であるアルヴィスが復活した。アルヴィスの名を知る人は、間違いなく筋金入りのエンスージアストだろう。そして、日本では、アルヴィスの実車を見たことがあるという人も、数少ないはずである。日本におけるアルヴィスはそれくらい希少な存在だ。
自動車メーカーとしてのアルヴィスは1920年に創業した。初期にはイギリス初のFF車でレースで活躍して、1930年代になると高性能エンジンを搭載した高速ツアラーとして名をはせた。つまり戦前は世界的にも、もっとも進歩的なスーパーカーメーカーだった。
第2次大戦後もアルヴィスは乗用車事業を継続したが、1965年に当時のローバーと合併。そのローバーが1967年にレイランドグループに吸収されると、アルヴィスの乗用車生産は即座に打ち切られて、もともと手がけていた軍用車両事業に専念することとなった。こうして幕を閉じることになったアルヴィス乗用車の、1920年から1967年までの総生産台数は2.1万台強(うち戦後生産分は7000台以下)だったという。
1981年にレイランドが国有化されると、アルヴィス部門はユナイテッドサイエンティフィック公開有限会社に売却される。その後は買収や再編が繰り返されて、現在は英国の国防・情報・航空宇宙を手がける総合企業、BAEシステムズの一部となっている。
いっぽう、旧アルヴィス乗用車の設計図や顧客データ、補修部品などを受け継いだのはレッドトライアングル社だった。同社は世に出回っているアルヴィスのための部品供給やサービス事業を手がけてきた。そんな会社が現在まできちんと生き残っているのは、さすが自動車文化が根づいた英国というほかない。
そんなレッドトライアングル社が、いつしか使われなくなっていたアルヴィスの商標を譲り受けることに成功したのが2009年。乗用車ブランドとしてのアルヴィスの歴史は、そこからまた動きはじめた。...