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三谷幸喜『12月のWOWOWは『三谷幸喜★祭』を開催☆新作ドラマから過去作まで目白押し!』
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『大空港2013』は、前作『short cut』を超えるスケールアップしたものになった
三谷確かにヒッチコックの映画『ロープ』が有名ですが……僕の出発点はそこではなくて。僕はもともと演劇出身で、舞台はノンストップで物語が展開するわけで、映画の観点で見るとそれは究極の“長回し”になるんです。そうした舞台と映画のいいところを融合しようと思ったのが最初です。僕の初監督映画『ラヂオの時間』のファーストカットで、その手始めとして5分間の長回しをやって、そのとき自分なりにすごく手応えを感じていたんです。それで、その究極形として全編長回しというものをやってみたくて、昨年制作したのが前作『short cut』でした。今回は、登場人物の数、舞台の広さ、共にスケールアップしたものになりました。
――しかし役者さんは、途中でセリフを間違えると頭から撮り直しになるというプレッシャーがすごかったでしょうね。
三谷でも、NGは一度もなかったです。みなさんプロなので、多少のミスがあってもそれをフォローしていける技術を持っています。基本的にはそれができる舞台経験者をキャスティングしていて、香川照之さん、生瀬勝久さん、神野三鈴さんがいればどうにかしてくれるだろうと(笑)。でも、香川さんが言っていたのですが、カメラがいない間もずっと芝居を続けて待っていなくてはならないので、その緊張感がとんでもなかったそうです。
――カメラがいない間の役者さんの芝居も、脚本を書かれたのですか?
三谷はい。だからもう、書くのが大変でした(苦笑)。まず舞台となる空港の図面をいただいて、それを見ながら12人の登場人物が、カメラに映っているいないに関わらず、100分間どこで何をしているかを考えました。だから全員がリアルタイムで、どこかの場所で何かをやっているわけです。これは12人の俳優さんだけじゃなく、80人のサブキャストのみなさんもそうで。これは助監督におまかせしましたが、80人のサブキャスト全員に役名を与えて芝居をつけました。また、普通は省略される移動のシーンも、廊下を歩いて何秒、エレベーターで1階から2階に上がるのに何秒と、すべて計ってセリフを考えています。つまり、全部が計算のもとに配置されているんです。
――出演されている役者さんの度胸や大胆さと同時に、緻密な計算もあってこその作品。リハーサルも綿密にやったのでしょうね。
三谷現地でリハをやったのは3回、本番は5回です。何度もやると芝居が豊かになる良さもありますが、最初にあった緊張感は少しずつ薄れて面白くなくなってしまうんです。5回の本番の中でもそれは同じで。カンフル剤として、たとえば生瀬さんだけにこっそり耳打ちして、壁に貼ってあるポスターを勢いで破ってくれとか、石橋杏奈さんには急に彼氏のことを「ポチくん」と呼んでくれとか。そういう台本にはないアドリブ的なことを、現場で突然お願いすることもしばしばありました。
―― 一瞬たりとも気が抜けない現場ですね。
三谷それがすごく面白いんです!
WOWOWで放送の『三谷幸喜★祭』は、今の時点での僕の集大成
三谷僕もラインナップを見て、びっくりしました。僕は自分の作品を振り返ることをしないので、いい機会だし、きちんと見直そうと思いました。でも、僕が監督した映画をこうやって制作順に並べられてしまうのは、少し恥ずかしいところもありますね。昔のつたない感じが恥ずかしいのもありますが、それがちょっとずつ上手くなっていっているというのも妙に恥ずかしくて(笑)。まあそのぶん、徐々に映画らしくなっているなとは思いますけど。舞台に関しては、『ベッジ・パードン』と『ホロヴィッツとの対話』は、今のところDVD化されていなくて、ここでしか観られないのですごく貴重だと思います。
――オススメの作品はありますか?
三谷やはり『大空港』の撮影現場を俯瞰(ふかん)から捉えた、『ノンフィクションW 撮影監督・山本英夫〜三谷幸喜の夢を撮る〜』でしょう。現場でいちばん大変だったのが山本さんで、『大空港』の真の主役だと言えます。山本さんはセリフも段取りもすべて頭で覚え、誰よりも早く現地に行って何度もシミュレーションをして、カメラ自体20キロ以上あって体力的にもきつかったと思います。実際に1テイク目が終わってカットがかかった瞬間、山本さんは倒れ込んでしまって。体中から湯気を立てていて、それを見たとき少し申し訳ない気持ちにもなりました。でも、山本さんがいなければ実現できなかった作品です。この作品を観たときに感じる謎の緊張感、それはいったい何なのか?『ノンフィクションW』を観れば、その正体が分かるはずです。
――三谷さんご自身の作品でオススメは?
三谷僕の撮った映画は、恥ずかしいので……(笑)。でも『三谷幸喜のシネマセレクション』は、僕が影響を受けた映画作品を、バリエーションを考えてラインナップしているので、何となく僕のことが分かってもらえるんじゃないかと思います。なかでも『ジャッカルの日』は、改めて観ても本当に面白かった。こういう映画は僕には撮れないけど、撮ってみたいと憧れますね。フランスのシャルル・ド・ゴール大統領を暗殺しようとするお話ですが、この緊張感はなんだろう!?というものが、ド頭からラストまで続くんです。すごく勉強になりました。僕がこれまでどんなものを見て、どういう影響を受けて、どんなものを作って来たのか……。『三谷幸喜★祭』は、恥ずかしいですけど、今の時点での僕の集大成になっています。楽しんでもらえたらうれしいです。
(文:榑林史章)
『三谷幸喜★祭』はWOWOWで観よう!
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