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ムロツヨシ×佐藤二朗×福田雄一監督:おじさんたちが全力でもがく姿が可笑しい『新解釈・幕末伝』
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ムロツヨシ、福田雄一監督、佐藤二朗=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
「コメディタッチじゃなく、“コメディ”がやりたい」
「“ちょっとご飯を食べながら話があります”って言われて、いつものジンギスカン屋に行ったんです。そしたら、“雄一さん、僕で一本撮ってください”って言われたんですよ」(福田)
そこでムロが放った言葉が、福田監督の胸に強く響いた。
「最近、“コメディタッチでやりましょう”と言われることが多いけど、そうじゃない。コメディタッチじゃなくて、“コメディ”をやりたい。本気でコメディをやるなら、雄一さんしかいないと思いました」(ムロ)
その熱量に打たれた福田監督は答えた。
「じゃあ、一本やろう。ただ、ムロくんだけじゃダメだなって思いました(笑)」
「やるなら、絶対に佐藤二朗さんと一緒に」
「“やるなら絶対、佐藤二朗さんと一緒に先頭に立つべきだ”と、おっしゃったんですよね。それで、僕から二朗さんをご飯に誘って。僕のSNSにその時の投稿もあります」
佐藤への直談判。実は、プライベートで頻繁に会う間柄ではないという2人。突然届いたムロからの連絡に、佐藤は驚きつつもうれしかったという。
「急に連絡が来て、珍しいなって。ムロくんとは、たまに飲むことはあるけど、数年に1回か2回、あるかないか。正直うれしかったですね。で、話を聞いて、“じゃあやろう”って」
こうして3人が揃った。
ムロツヨシ、福田雄一監督、佐藤二朗=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
「おっさん二人が主演の原作が、どこにもない」
「正直、おっさん二人が主演の原作ってなかなか無いんですよ。漫画原作を探すのも意味がない気がして。そこで思い出したのが『新解釈・三國志』でした」
完全オリジナルで手がけた『新解釈・三國志』(2020年)は、公開まで不安で仕方がなかったという福田。しかし、その時に松橋真三プロデューサーから言われた言葉が転機となる。
「松橋さんが『監督、これは原作ものですよ』って言ってくれたんです。『三國志』って、全世界の人が知っている原作じゃないですかって。歴史という原作があるって、これほど強いことはないな、と」
そこで浮かび上がったのが“幕末”だった。
「幕末ものって、日本中の人が知っている“超強力な原作”を背負えるジャンルじゃないですか。さらに思い出したのが、ムロくんが『muro式』という舞台でやっていた“薩長同盟”。ムロツヨシを一番面白く見せられるのは、坂本龍馬だと思ったんです」
この提案に対し、ムロは一度立ち止まった。
「『muro式』でやっていたのはもう10年以上前。今やって通用するのか、正直に聞きました。でも、やるならやろう、と覚悟しました」
ムロツヨシ=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
「条件は、“福田のオリジナル”であること」
「W主演でやるなら、“福田監督のオリジナルでやりたい”と。何なら条件みたいな感じで(笑)。幕末というとんでもない強力な“歴史”という原作の後ろ盾はあったとしても、“オリジナルでやりたい”という思いがあったんです」と佐藤は語る。
ムロも大きくうなずき、「そこは、二人で決めてました。“そこは絶対に譲らない”って」。
こうして、“幕末×福田雄一オリジナル喜劇”という前代未聞の企画が正式に始動した。
映画『 新解釈・幕末伝 』(公開中)(C)2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会
「今回は“いつもの佐藤二朗”を封印しようと思った」
「今回の作品は、幕末という熱い時代を舞台に、豪華な俳優たちが“良い意味で本気でふざけにいく”作品。ただ、僕の役に関しては、いつもの“福田作品の佐藤二朗”は封印したほうがいいんじゃないか、と直感的に思ったんです。むしろ、ほかの選択肢が浮かばなかった。“それしかない”と思ったんです」
この決意は、長文メールとなって福田のもとに届いた。
「何度もスクロールしないと読み切れないくらい、長い“決意表明”のメールでした。その中に、“ムロがどれだけ笑いを仕掛けてきても、僕は絶対に乗りません”と書いてあって。“そう来るのか”と思いましたね」
佐藤は語る。
「福田が描いた坂本龍馬と西郷隆盛の関係って、どれだけ龍馬がふざけても西郷は“乗らない”構造になっていると思ったんです。だから徹底的に“笑わない側”に立とうと」
ムロも、その決意に強い衝撃を受けたという。
「撮影現場にこれまで見てきた“佐藤二朗のカード”を一切持たずに現れたんですよ。何もしない、というより、“ドシッと構えた西郷どん”がそこにいた。“カードを持たない戦い方”があるんだって思いました」
佐藤二朗=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
30分続く“薩長同盟”――CGも仕掛けもない、役者3人だけの真剣勝負
「編集しながら、“役者の力って本当にすごいな”と久しぶりに思いました」と福田は振り返る。
佐藤とムロも、このシーンについては特別な記憶があるという。
「実は、あの薩長同盟の場面が、一番ムロと芝居の話をしました。“さっきの方が面白かったよね”とか、本番の合間にずっと話してた。ムロがとにかくアホみたいに面白くならないと、俺と(山田)孝之の立場がない(笑)。だから、結構しっかり話し合いました」(佐藤)
ムロも続ける。
「物語を動かす役割がほぼ全部僕にあるので、一つ間違えると福田さんの“ルール”が壊れちゃう。だから、あそこは極端に神経を使いました」
映画『 新解釈・幕末伝 』(公開中)(C)2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会