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ムロツヨシ×佐藤二朗×福田雄一監督:おじさんたちが全力でもがく姿が可笑しい『新解釈・幕末伝』
「人を幸せにするのは、“笑い”しかない」
「僕の創作活動は、最初から最後までコメディだけです。それ以外の方法は正直わからない。でも“人は笑うことでしか幸せになれない”と、ずっと思ってやってきました」
いわゆる“考察系”作品が隆盛する昨今の流れにも触れながら、「正直、考察系はあまり得意じゃなくて」と笑うと、すかさずムロが「そういう感情は言わなくていいんですって」とツッコミを入れ、佐藤も「苦手なものをわざわざ言わなくていいんだよ」と場を和ませる。
そんな軽妙なやり取りの後、福田監督は原体験を語り始めた。
「僕は小学生の頃まで小児喘息がひどくて、発作が起きると“このまま死ぬんじゃないか”と思うくらい苦しかったんです」
その苦しい日々を支えてくれたのが、父親が見せ続けてくれた“笑い”だった。当時、発売されたばかりのビデオデッキを裏かぶりしていた『8時だョ!全員集合』と『オレたちひょうきん族』を両方見るために買ってくれたという。
「近所にレンタルビデオ店ができると、世代じゃないのにクレイジーキャッツの映画を、狂ったように見せられていました。“あれだけ喘息がひどくて、いつ死ぬかわからない状態だったけど、君はお父さんが与えてくれた‘笑い’に救われたんだよね”って言われて。たぶん、僕はずっとその記憶を引きずってきているんだと思います」
さらに福田監督は、『勇者ヨシヒコ』パート1の撮影が、東日本大震災(2011年3月11日)からわずか2ヶ月後に始まったことにも触れた。
「あんな状況の中で、こんな馬鹿馬鹿しいドラマをやっていていいのかと本気で悩みました。でも、“つらい思いをしている人が一人でも笑ってくれるなら、やった方がいい”と思って、踏み切ったんです。別に、笑いで誰かを救いたいなんて大それたことじゃない。でも、誰かがちょっと幸せになってくれたら、それで十分うれしい。その気持ちは、昔からずっと変わっていません」
この福田の言葉に、佐藤は「いい話あるじゃん。考察系のくだり、いらなかったじゃん」と笑い、ムロも「本当に、前フリにもなってなかったですね」と重ね、3人で大笑いした。
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福田雄一監督=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
「“飽き”の先にある笑いをつくり続けたい」
「“何かを見て笑う”という行為には、どうしても慣れが出てくる。使いたくない言葉ですけど、“飽き”もついてくるんです」
それでも、初めてコメディに触れる子ども、これまで笑いに触れてこなかった人が、初めて笑う瞬間は、必ずどこかで生まれていると信じているという。
「たとえ『勇者ヨシヒコ』からずっと観続けてくれた方が、一度“飽きたな”と感じたとしても、僕はその“飽きの向こう側”をどう作るかを、ずっと考えています。同じことをやっているように見えて、実は少しずつ変えている。3回目でまた笑えるかもしれないし、5回目で突然笑えるかもしれない」
そして今回の『新解釈・幕末伝』について、「いまこのタイミングでやる意義がある作品になっている」と、強調した。
映画『 新解釈・幕末伝 』(公開中)(C)2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会
佐藤二朗にとっての“笑い”とは?
「僕が福田と初めて会ったのは、ジョビジョバのマギーさんと福田がやっていた舞台『U-1グランプリ』でした。その稽古場で初めて会ったんです」
それまでも佐藤は、ドラマの中で“コメディリリーフ”的な役を数えきれないほど演じていた。
「だから正直、“コメディ芝居はちょっとできる方なんじゃないか”という自負もあった。でも、その舞台で福田やマギーの“笑いに対する熱量”を目の当たりにして、“全然次元が違う”と思ったんですよ」
いまも佐藤は、“笑い”に対して特別な理論を持っているわけではないという。
「笑いとシリアスって、そんなに区別していなくて、同じ地平にあるものだと思っています。笑っていたのに、いつの間にか泣いている――そんな感情の中に、人間のおかしみを感じる。だからコメディについて、講釈を垂れられるほどのものは、実はあまり持っていないんです」
映画『 新解釈・幕末伝 』(公開中)(C)2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会
「今回は“コメディ”ではなく、“喜劇”だ」
「僕はずっと、“コメディを作る人間は、コメディを語るべきじゃない”と思ってきました。笑いって、“笑えるか、笑えないか”だけなんです。“こういう意図があって”なんて言い訳は、意味がない」
そして、今回は「コメディ」という言葉を使わず、「喜劇」と呼びたいと福田は語る。
「はじまりはムロくんの“本気のコメディをやりたい”だったけれど、“コメディ”という言葉を正直、使いたくない。“喜劇”なんです」
福田監督が定義する“喜劇”とは何か。
「人が一生懸命、生きようとするがゆえについてしまう嘘とか、空回りとか、必死にあがく姿。その結果、滑稽に見えてしまう。それが“喜劇”だと思っています。今回は、その連続です」
さらに福田監督は、こう続けた。
「ちょっとした軽いギャグで笑わせるものじゃない。おじさんたちが、必死に、全力で生きようともがく。その姿自体が“可笑しい”。それが今回の喜劇です」
ムロツヨシ、福田雄一監督、佐藤二朗=映画『新解釈・幕末伝』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
映画『新解釈・幕末伝』
出演:
ムロツヨシ 佐藤二朗
広瀬アリス
岩田剛典 矢本悠馬 松山ケンイチ
染谷将太
勝地涼 倉悠貴 山下美月 賀来賢人
小手伸也
高橋克実/市村正親
渡部篤郎 山田孝之
(C)2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会