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お金、ブランド、ステイタス…欲望の9割は“他人の模倣” 本当の自分の欲望どう見つける?

「イーロン・マスもスティーブ・ジョブズも『欲望の模倣』理論に沿って動いている」

  • 早川書房刊

    早川書房刊

 本書の編集担当者である山本純也さんは、「イーロン・マスクやピーター・ティール、スティーブ・ジョブズなど、今をときめく実業家たちが『模倣の欲望』理論とどう向き合っていたのかが見えたのが興味深かった」と話す。

――『欲望の見つけ方』について、X(旧Twitter)で投稿している方がたくさんいます。そうした反響についてはどう感じていますか?

山本本のテーマの1つである「人は皆、誰かの欲望を模倣する」というメッセージを読者の方々がそれぞれの文脈でコメントされていて、このメッセージの持つ説得力の高さや汎用性の高さを実感しました。

 たとえば、「ビジネスでこう活きる」「投資でもこの模倣理論が当てはまる」「マーケティングでも活用できる」といった形でSNSで発信している人も多く見られました。SNSは欲望の震源地で、人のアテンションを引くものが生まれる場であるので、そのことに触れた俯瞰的なコメントもあり、「なるほど。こう読んでくださったか」と唸った次第です。

――本書を編集する中で、印象的だった点や気づきがあった点を教えてください。

山本本の中には、イーロン・マスクやピーター・ティール、スティーブ・ジョブズなど、今をときめく実業家たちが実例として出てきます。そういった人たちが、「模倣の欲望」理論とどう向き合っていたかについて著者なりの観点で書かれています。

 電子決済サービス企業「PayPal」の創業者であり、起業家のピーター・ティールはこの理論を受け止めて自分のビジネスを展開させていたり、イーロン・マスクは模倣に対してちょっと超越的な感じであったりなど、今活躍している人たちの行動は「模倣の欲望」理論に沿って動いていると著者は説いています。その観点は、とても興味深いなと感じますね。

――今世間を騒がせている事象で、「薄い願望」と考えられるのはどんなものでしょうか?

山本電車の中吊り広告でも、「AGAの治療をしたほうがいい」とか「英会話を習ったほうがいい」とか、いろいろと煽られて飛びついてしまいたくなるようなものが溢れていると感じます。SNSでもインフルエンサーがすぐに買える形でさまざまな物を紹介していますし、「薄い欲望」は本当に巷の至るとこにあると実感しますね。

――だからこそ、自分の欲望について深く考えることが大事ですよね。

山本なかなか答えが出ない問題に対して、すぐに答えを出そうとせずに一度立ち止まって考えるというような概念を「ネガティブ・ケイパビリティ」というのですが、去年あたりから、その言葉をよく耳にするようになりました。今はすべての状況がとにかく早くて、SNSでバズったもの、メディアで話題となったものを、「買う」よりも「買わされる」ような時代なので、立ち止まって内省する方向に向かうことが生きる上で必要だと感じます。

――これからは一度立ち止まってみるような流れがくるのかも?

山本そうだと思います。やっぱりじっくりと時間をかけたときに見えてくるものはあります。去年流行った『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)という新書の中にも、映画をうまく見るのに必要なのは総合的な力、スペシャリストよりもジェネラリストだと書いてありました。つまり、倍速で何作も見るのではなく、1つの作品に対してじっくりと細部のディテールまで着目したり、その作品に関連する本を読んだりすることで映画を見る目が養われる。そういった能力は速さやタイパなどでは培われないので、時間をかけて物事に向き合い、自分の考えを深めることは大事になってくると思います。

――「薄い欲望」が多くを占める中、「濃い欲望」が見つけにくくなっていくと懸念しますが、その点についてはどう感じますか?

山本でも、絶対にあるはずなんです。子供の頃、学校の休み時間にドッヂボールをする人もいれば、おままごとをする人もいて、消費社会に入る前は興味や関心の向き方が違ったように、自分固有の興味や関心があるはず。そこを追求すれば自分にとって楽しいことができるだろうし、幸せなことが見えてくる気がします。

――本書を通して読者に伝えたいことを教えてください。

山本チャップリンの有名な言葉で、「Life is desire, not meaning.(人生は願望だ。意味じゃない)」というものがあります。確かに、自分がこうしたいと思ったことからすべては始まると思います。だから、「自分独自の欲望に向き合って、自分なりの幸せを実現してほしい」というのが著者のメッセージなのだと私は思います。

『欲望の見つけ方〜お金・恋愛・キャリア』(早川書房)

 ルーク・バージス(著)、川添節子(訳)
自分が欲しいものは自分が一番よく知っていると考えているのは単なる思い込み?
私たちは知らず知らずのうちに誰かの欲望を模倣しているとしたら?
不要な競争を避けて、人生の局面で「最も大事なこと」に気づく方法を伝授する一冊。

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