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美容整形の低年齢化、問われる美容医療の“質” 現役医師が抱く危機感「法整備が必要な局面に来ている」

 今も昔もコンプレックスを解消する手段として受容されてきた美容整形だが、市場の伸長を後押ししているとされるのが低年齢化だ。昨今はSNSを中心に整形がオープンに語られ、悩める若者を救済する手段として容認されるようになった。一方で心も体も成長段階にある若年層にとって、整形の一般化は自分自身の顔を否定し、ルッキズムを助長させる一因にも。クリニックに訪れるユーザーのマインド変化について、共立美容外科の医師・磯野智崇さんに見解を聞いた。

約10年前から中高生の二重整形が増加 50代以下の親は整形に寛容な風潮も

──かつては、コンプレックスを抱えていた思春期は我慢し、大人になってから美容整形に踏み切るケースが多かった印象にあります。しかし、近年は外見至上主義や整形のカジュアル化に伴い、施術を受ける年齢層にも変化があるように感じます。美容整形が低年齢化したのは、いつ頃からでしょうか?

磯野智崇さん 一気に増えたと実感があるのは、2010年以降ですね。十数年前は高校生でも珍しいくらいでしたが、今では中高生は当たり前。二重まぶたの整形を受ける小学校高学年も珍しくなく、低学年で来院する子どももいます。共立美容外科では、子どもでも安全に手術が行えるよう、手術の介助に入るスタッフの数を確保したり、痛みが和らぐよう事前に目元を冷やし、麻酔針を細くするなどできる限りの配慮をしています。ただ低年齢の場合は、自発的というより、親御さんに連れられて来院するケースがほとんどですね。

──親御さんを伴う来院は、どのような動機が多いのでしょうか?

磯野智崇さん 年齢によって様相が異なりますね。小学校高学年以上の場合は、お子さんがどうしても整形をしたくて、親御さんが渋々ついてくるという雰囲気があります。お子さんがアイプチをしないと外出もできないようになり、ついにはまぶたがかぶれてしまったのを見て、「そんなに悩んでいるのだったら…」と整形を容認することはよくあるようです。

──親世代はやはり多少なりとも整形に抵抗感があるのでしょうか?

磯野智崇さん ひと昔前のように「親からもらった体を整形するなんて言語道断!」という親御さんは、少数派になりました。おおむね50代以下の親御さんからは、あまり抵抗を感じません。やはり若い頃からSNSで整形事情に触れている方々が親世代になっているのでしょう。お母さんご自身が二重整形をされているケースも増えていますし、なかには「娘と一緒に私も」という方もいます。

低年齢の場合、大抵は自発的ではない「怖がる子どもの手術を推し進める親も多い」

──一方で低年齢の場合は、親御さんの意思で来院されるケースが多いのでしょうか?

磯野智崇さん 個人的にはほぼすべてがそうじゃないかという感覚があります。どうも今は“二重まぶた至上主義”に偏重しているようで、「将来、悩んだら可哀想」「可愛くないといじめられるんじゃないのか」「自分も若い頃に悩んだから」などと思い詰めているような親御さんも、しばしば見受けられます。

──親主導の色合いが強い場合、医師としてどのような判断を下すのがベストだとお考えですか?

磯野智崇さん いくら親御さんが希望しても、体はお子さんのもの。カウンセリングの段階で「この子は手術したいと思っていなさそうだ」と判断した場合には、親御さんに「今はまだ不要だと思いますよ」とお伝えしています。それでも「本人がやりたがっているんです」と粘る親御さんはとても多い。また親御さんに忖度してなのか、「やります」と健気に言うお子さんもいるんですよ。

──その場合はどうされますか?

磯野智崇さん 医療のガイドラインでは、まぶたの整形は7歳から可能となっています。ただ、いざ手術台に乗ると目をギュッとつぶってしまう子がほとんどです。なかには泣き出してしまう子もいますし、共立美容外科では安全に手術が行えないと判断した時点で手術はストップします。おそらく別のクリニックに行かれるんだろうなとは思いますが──。

──本人が怖がっている中、それでも施術を望む親御さんはいるのでしょうか?

磯野智崇さん 「日を改めてもう一度お願いできませんか?」と言うお母さんは多くいます。しかしその場合のほとんどが、2度目も手術に至りません。時代が変わっても子どもの心や体の成長度合いは変わりません。いくら整形の低年齢化という風潮はあっても、現実的に能否があります。

──整形を自己判断できる年齢は、おおむね何歳くらいが目安だとお考えですか?

磯野智崇さん 高校生ぐらいになると感覚や感性が大きく変わることがなくなると思います。百歩譲って中学生でしょうか。特に思春期は見た目のコンプレックスを募らせがちですよね。カウンセリングでも「きっとこの子は1日に何回も鏡を見ては悩んでいるんだろうな」と察することはあります。そこまで思い詰めているのであれば、二重手術をしたほうが、日々をポジティブに送れるのではないかと思います。手術が終わってうれしそうな顔を見ると、私たちもやりがいを感じますね。

レベルの低いクリニックの台頭で、“まとも”な美容医療を提供するクリニックが生き残れない

──整形手術にはダウンタイムが付き物です。冬休みなど長期の休みには、中高生の整形も増えそうでしょうか?

磯野智崇さん そうですね。ただSNSの影響でしょうか、最近は整形を隠す方もだいぶ減ったように感じます。なかには、友だちに「手術終わったよ」と報告している姿も見られます。

──整形は美を追求するための努力であり、コンプレックスを解消する手段でもある。そうしたポジティブな側面がクローズアップされる一方で、ルッキズムを助長するといった負の側面も語られます。先生はどう捉えていますか?

磯野智崇さん これはとても難しい問題で、美容医療業界がルッキズムを助長させているのか、ルッキズムが加速しているから美容医療市場が伸びているのか──。どちらが先なのかは私も測り兼ねるところです。ただ1つ、昔のほうが“まとも”だったと思えるのは医師の“質”です。ひと昔前は外科や皮膚科、麻酔科などで5年以上の経験を積んでから、美容外科に携わる医師がほとんどでした。ところが近年は、医大を卒業したばかりの医師を、膨大な年棒でかき集めているクリニックも増えています。

──美容整形ユーザーが増えるにつれ、医師の数も必要になっているということですか?

磯野智崇さん そうですね。ただ、そうしたクリニックほど集客に熱心です。強引な勧誘もそうですし、広告も低年齢化やルッキズムを煽っているところが見受けられるのが正直な実感です。レベルの低いクリニックが台頭すれば、“まとも”な美容医療を提供しているクリニックは生き残れません。法整備など何かしら歯止めが必要なのではないかという局面に来ているのではないかと感じています。

──現時点で“整形の低年齢化”について、留意しておくべきことはありますか?

磯野智崇さん まず大前提として、いくら整形が社会的に容認されたといっても、本人の意思でなければ手術するべきではありません。特に低年齢の子どもは、美意識も含めて大人の価値観に引きずられやすいものです。SNSの普及などの社会変化は止められませんが、親御さんはもちろん、クリニックも含めて、子どもへの影響を考えることはとても大切だと思います。

(文/児玉澄子)
共立美容外科 副総括院長・磯野智崇(いその ともたか)さん

プロフィール 共立美容外科 副総括院長・磯野智崇(いその ともたか)さん

1995年、聖マリアンナ医科大学を卒業。
1995年、聖マリアンナ医科大学形成外科に入局。
1999年、東大宮総合病院整形・形成外科に入職。
2002年、共立美容外科に入職。
2009年、共立美容外科浜松院院長に就任。
2020年、共立美容グループ総括副院長に就任。

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