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ORICON NEWS
5年で100店舗、急成長の「BAKE」がコロナ禍で売上9割減…『チーズタルト』ヒットの“真逆”戦略で生き残り
定番スイーツの「完全後発」でなぜ売れた? “何の店か分からない”デザインで差別化
「創業当初は、多種多様と謳いながら似通った商品が市場に多い中、徹底的に1プロダクトにこだわる戦略でした。自分たちが商品に懸けている思いやストーリーをしっかりお客様に伝えることで、ブランドが立っていくと考えたからです」(BAKE INC.代表取締役社長CEO・山田純平氏、以下同)
立役者となったのは、黄色いパッケージが印象的なチーズタルトだ。定番スイーツであり、既に多くの「チーズタルト」が市場に出回っていた中、年間3500万個を売り上げる大ヒットを呼んだ理由は何だったのだろうか。
「おいしい物を作れる力、内製化されたクリエイティブ力、そしてデザインを含めたストーリーに仕上げていくブランディング力。一つ一つの要素を真似することはできるかもしれませんが、3つの要素を掛け算するのはなかなか難しいのではないかと思います」(山田氏)
クリエイティブな力で興味を引き、近づいてくると漂う焼きたてのいい香り。北海道の自社工場で作られたこだわりの味が合わさったことが、ヒットの要因ではないかと山田氏は分析する。
ターゲット層は、東京駅にいるスーツを着たサラリーマン。ファンシーなパッケージのスイーツ土産が並ぶ中、同商品のそぎ落とされたシンプルなデザインはスーツ姿にも馴染み、気兼ねなく買える手土産として幅広い層に受け入れられた。贈答用、自分へのご褒美用の両方にリーチし、フォーマルとカジュアルの両シーンにマッチしたことが飛躍につながった。
初のEC基軸ブランドは“没入”をテーマに売上想定の倍、ヒットの鍵は「ストーリー」
「EC上で、店舗ビジネスに変わる体験価値を感じていただけるように、365日、どこからでもアクセスできる架空のパティスリーを設定しました。3Dグラスをかけて乗るアトラクションのような没入体験“イマーシブ”をキーワードに作り上げたブランドです」
缶を開けると3層・4段になっているクッキーには「開けてビックリした」との反響が多く、想定の2倍の売上げになっているそうだ。1回食べて終わりという人も多い中、リピート率が高いのも特徴で、今後の動きが注目される。
それまでの「勝ち筋」を捨てることはリスクを伴うが、コロナ禍をきっかけに違った方向へ舵を切れたのは、もう一段上にいくための良い機会だったと山田氏は振り返る。一つの勝ち筋にすがることなく、常に時代に合わせて新たな“おいしいストーリー”を生み出してきたことこそが、BAKE INC.が生き残り続ける最大の勝ち筋なのかもしれない――。
架空のパティスリー「しろいし洋菓子店」(外部サイト)