• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • グルメ
  • 『ビッグカツ』40年変わらず“30円”、物価高騰・駄菓子不況続くも人気不変の理由とは
(更新: ORICON NEWS

『ビッグカツ』40年変わらず“30円”、物価高騰・駄菓子不況続くも人気不変の理由とは

 広島の駄菓子メーカー・すぐるが製造する『ビッグカツ』。1978年の発売当初は全然売れなかったというが、現在では全国区で定番商品となり、駄菓子店の閉店が相次ぐ近年も安定した売上を維持している。奇しくもSDGsの観点から注目されている“代替肉”の超先駆けとも言える同商品は、昨今の物価高騰の煽りを受けながらも、当初から価格は30円のまま。その背景には、創業時から変わらない子ども達への想いが隠されていた。

原材料は魚肉、ピンチが生んだ看板商品だった 創業者自ら全国行脚で大ヒットに

 広島県呉市の駄菓子メーカー・すぐるは、1973年にスグル食品として創業。もともとイカを甘く味付けした『甘のしいか』やイカを揚げた『いか天』を製造していたが、現在の看板商品『ビッグカツ』は、ピンチが生んだ大ヒットだった。
「創業当初、貿易の自由化によりイカ原料の入手が困難となり、製造できるものが無くなったことがありました。同時期に、とある企業が『プッチン』と呼ばれるイカの代替品を開発しました。『プッチン』とは、スケトウダラをメインにした魚肉のすり身をシート状に成型したもので、これを細切りにカットしてさきいかの代替品として販売を開始。これに目をつけた創業者が、『プッチン』を使って『甘のしいか』や『いか天』を再現、今弊社の主力商品である『いかサーティ』や『いか味天』になりました」(スグル食品3代目・大塩和孝さん/以下同)
 子どもたちがお腹いっぱいになるような商品を作りたいという発想から、「天ぷらができるならカツもできるのではないか?」と考え、トンカツに似た商品『おやつ串カツ』を開発。子どもでも買える価格で提供しようと、駄菓子店や酒販店向けに、40本入りのポットで1本10円で販売するスタイルと、量り売りスタイルで販売していた。

 しかし高度経済成長期に入ると、コンビニや大手スーパーマーケットのような全国規模の大型チェーンが拡大。レジに対応する必要が出てきたため、大型化し、個包装に切り替えた『ビッグカツ』が誕生した。しかし、発売当初は全く売れなかったという。

「これまでなかった商品でしたので、弊社の営業部も上手く販売できず、『売り方がわからない』という意見が多かったと聞いています。ただ、子どもも買える価格で製造するために『これくらい売らなければならない』という制約があったため、最終的には発案者である創業者が自ら全国売り歩いて成立させたようです」

親世代から始まった『ビッグカツ』ブーム、原価高騰でも“30円”をキープする理由

 なんと創業者自ら全国を行脚した結果、家族で楽しまれる大ヒット商品となった。

「発売当初、子ども向けに販売した『ビッグカツ(串カツ)』でしたが、予想に反して、大人がおつまみとして酒販店で購入し始めました。お父さんが自宅で食べているのを見て、子どもたちが分けてもらう。食べてみると、美味しい。しかも駄菓子屋さんでも売っていて、自分でも買える値段だった。というヒットの源流だったと考えています」
 実際にTwitterを使った「ビッグカツを初めて食べた時」のアンケートでも、「自ら購入した」という方は少なく、「親、友達が食べていたのを分けてもらった」が圧倒的に多かった。昨今ではSDGsの観点から“代替肉”が注目されているが、『ビッグカツ』は、一周回ってその先駆け的存在ともいえるだろう。

「できるだけお肉に近づけられるように、『プッチン』の配合に苦労しました。発売当初から、原材料のマイナーなチェンジは度々行っています。品質向上のために、抗酸化作用を持つイカを配合していましたが、実験の結果、『有無であまり違いが無い』という衝撃の事実が判明し今は使用していません」

 昨今の物価高騰により、油や小麦粉の値上がりは同社にとって非常に厳しい打撃となっているが、1980年に個包装の発売以来、値段は変わらず“30円”をキープしている。その背景には、やはり当初の“子どもたちがお腹いっぱいになるような商品を作りたい”、“子どもでも買える価格で提供したい”という創業者の強い願いが受け継がれている。

10年間売上変わらない秘訣は「駄菓子×SNS」訴求 誕生から45年、最大の危機は“今”

 その甲斐あってか、目まぐるしく世間の嗜好やトレンドが変化し、駄菓子店の閉店も相次ぐ中、『ビッグカツ』の売上はここ10年ほど安定を見せている。年間売上数は約1000万袋、累計売上数は約5億袋に及ぶ。その秘訣は、時代に合わせた消費者との関係構築だという。

「懐かしさ、家族で楽しむ、遊び心を切り口としてどう関わっていくかを考えています。5年前にSNSを始め、お客様と直接コミュニケーションを取るようにしました。3年前にVRを始め、より親しみを感じていただけるようなコミュニケーションも取れるようにしました。これらの関わりを通じて、今の子どもたちにも食べていただけたらと思います」

 Twitter「ビッグカツとイカ姿フライのすぐる【公式】」(@SUGURU_BIGKATSU)アカウントのフォロワーは8.2万、昨年には「#いいにくいことをいう日」というハッシュタグとともに「非常に言いにくいのですが、、中身は魚です(汗)」とつぶやくと、5万いいねを超える反響があった。

 「衝撃」「知りたくなかった」「それでも美味しいから好き」などのコメントが寄せられたが、さらに『ビッグカツ』に関する豆知識を聞いてみると、「少し温めて食べていただくと食感が柔らかくなり、風味も増します。ちなみに、ビッグカツシリーズに使用するソースは全て、職人の手作りです」とのこと。

 誕生から45年目を迎える『ビッグカツ』だが、一番の危機はまさに今だという。

「ここまで主原料価格が急激、かつ長期的に全て上昇する局面はありませんでした。商品構成やオペレーションの見直しなどを通じて乗り越えていけたらと思います。近未来に向けた、さらなる“代替肉”としての可能性も模索しつつ、これからも長くお楽しみいただける商品にしていきたいです」

あなたにおすすめの記事

 を検索